おうちでレガシー開催レポート③ ~広がれおうちの輪~
自宅で遊べるリモート式のレガシーイベント「おうちでレガシー」。筆者がこのイベントを主催し始めて、今週で24回目の開催である。前回レポートしたときから比べ、さらに変化を見せてきているので、今回もどういう感じで運営されていったのか、そしてどのようなデッキがあったのか、少し紹介させていただこうと思う。
1.参加者の推移
第14回から第23回までの参加者数をまとめると以下のようになる。
開催時の人数にムラがあるものの、徐々に8人規模でもイベントが開催できるようになってきており、少しずつ盛況を見せつつある。というか紙レガシーという人が集まりにくいフォーマットにも関わらず、これだけの人が集まってくれるのは本当にありがたいことである。
ちなみに、以前第一回かなんかで「新規参加者が来てくれるとイベントの新陳代謝が活性化して助かる」ということをしゃべった記憶があるのだが、最近、参加者のしゅ~いえ氏が色んな所でこのイベントの宣伝をしてくれているらしく、イベントを運営しているDiscordに人がたくさん流入してくるようになった。第23回にそれが顕著に表れており、一気に新規参入者がドドッと流入してきたような気がする。
また、第14回から参加していただいているKiyoaggro氏のレガシー記事にも、このイベントのことが触れられていた。以下はその引用である。
つ、ついにおうちが人の記事で紹介された…ありがてえ…。
また、しゅ~いえ氏やKiyoaggro氏に限らず、多くの方々に様々な方法でこのイベントを拡散していただいている。この場を借りてお礼申し上げたい。このままどんどんおうちでレガシーの輪を広げていけられればと思う。
2.メタの変遷
次に、メタゲームの変遷だが、第14回から23回までざっと並べるとこのようになる(太字が3-0したデッキ)
相変わらずのアンフェア環境であると片づければ簡単なのだが、一応持ち込まれたデッキをよーく見てみると、フェアデッキもある程度参加しており、そこそこいい感じのメタゲームが形成されているのかもしれない。
ただ、3-0デッキを見ると、実に8割がアンフェアデッキである。これはこのイベントの規模が関係しており、実質総当たりに近い状態でやらされるため、相手の行動をさばくことに主眼を置くフェアデッキに関しては、いきなり想定外のデッキにしばかれる可能性が高く、相当不利な立ち回りを強いられてしまうためである。
一方アンフェアデッキはというと、一応相手の出方をうかがって行動プランは立てていくものの、基本的にはこちらのやりたい事を押し付けていくため、割かしこういう環境でも勝ち残ることができるのである。
こういう「草の根の大会と大型大会のメタが大きく違う」という話は、筆者もMTGをやっていて薄々気づいてはいたものの、こうやって実際に見てみると改めて実感するものだ。
ちなみに、第23回になってようやく、レガシーの雄であるURデルバーが3-0の栄光に輝いた。で、その4日後、中核を担っていた《敏捷なこそ泥、ラガバン》がレガシー禁止とのアナウンスが。全国のURデルバー使いにとっては痛手かもしれないが、正直《表現の反復》があればデッキとしては大きく弱体化はしないはずである。また新タイプのデルバーデッキをおうちに持ち込んでいただきたい。
また余談だが、第14回から定期配信企画として「おうち探検隊」というものがスタートしている。おうちでレガシーの3-0デッキやユニークなデッキをMOリーグで回すという企画である。筆者がレガシーはあまりうまくないというのもあり、珍プレーの連続ではあるのだが、興味があったら是非見ていただけられればと思う。毎週金曜日に放送中だ。
3.イベントで使用されたデッキ紹介
せっかくなので、ここではおうちでレガシーで使われたデッキの中でも「これは面白い!」と思われるデッキを紹介していこうと思う。
■アグロローム
レガシーの土地を使うデッキと聞いて、皆様は何を思い浮かべるだろうか?土地そのものに焦点を当てた「土地単」だろうか、それとも《暗黒の深部》をあの手この手で悪用する「デプス」と呼ばれるデッキ群だろうか。《雲上の座》を使って大量のマナを出す「12ポスト」と呼ばれるデッキも捨てがたい。
だが、土地を使ったアグロデッキとなるといきなり静まり返るだろう。なんせ上で挙げたデッキは中低速のランプやコントロールデッキであったり、コンボデッキであるためである。
土地を使い、かつクリーチャーでゴリゴリ攻めることができるデッキ、それがいわゆる「アグロローム」と呼ばれるデッキである。
「クリーチャーで殴る」「土地を活用する」これを両立させるクリーチャーがこの《聖遺の騎士》である。タップで森や平地を生贄に捧げることで、ライブラリーから任意の土地を引っ張ってくることができる。状況に応じて《ボジューカの沼》や《Glacial Chasm》を持ってきて対応してやりたい。
またこのクリーチャーだが、墓地に土地が貯まれば貯まるほどぐんぐんとデカくなっていく。相手に対処しきれないサイズまで巨大化させ、ちゃっちゃとぶん殴るのがこのデッキの勝ち筋の一つである。
捨てたり生贄に捧げた土地も再利用するのがアグロローム流。このデッキだと《ラムナプの採鉱者》が採用されており、墓地に落とした土地を再度場に出すことができる。《Glacial Chasm》なんかを再利用してやれば相手の攻撃をシャットアウトすることも可能だ。
面白いのが《大スライム、スローグルク》の採用。なるほど、土地が墓地に行くたびにどんどん大きくなるのはほぼ《聖遺の騎士》と一緒である。また、場を離れた際に墓地の土地カードを3枚手札に戻すことができるというのもポイントが高い。
…と説明はしたものの、このデッキ、あまりに特異な構築をしており、一口に勝ち筋を解説しようにもなかなか難しい。上記のようなクリーチャーで殴る以外にも《溶鉄の先鋒、ヴァラクート》と《イリーシア木立のドライアド》を組み合わせたコンボも搭載しており、多角的に相手のライフを削っていくことができる。デッキリストを眺めながら各々のカードの役割を考えてみるのも面白いだろう。
■食物連鎖
《食物連鎖》。場のクリーチャーを追放し、そのマナ総量+1のマナを生むエンチャントである。生んだマナはクリーチャーを唱えることにしか使えず、基本的には追放したクリーチャーより大きいサイズのクリーチャーを唱えるために使われる…という設計意図だったのだろう。本来は。
しかし、「アヴァシンの帰還」にて追放領域から唱えられる《霧虚ろのグリフィン》が出てきてから状況が一変。こいつを追放する→追放したこいつを《食物連鎖》のマナで唱えるというムーヴを繰り返すことで無限マナを生成。デカブツをたたきつけて勝つという動きが可能となった。これが「食物連鎖」、あるいは「フードチェイン」と呼ばれるデッキの誕生である。
あふれたマナの注ぎ方は時代によって変わるのだが、最近は《ハイドロイド混成体》に大量のマナを注ぎ込み大量ドローをし、《歩行バリスタ》を持ってくるのが主流である。
で、このデッキだが、《食物連鎖》を絡めたコンボを搭載してはいるものの、《運命の操作》などの余計なコンボパーツは極力採用せず、根っこはフェアデッキに寄せている構築がなされている。昔モダンに君臨していた《欠片の双子》系統のコンボデッキを想定してもらえればOKだ。
基本的には相手の行動をさばきながら、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》により生み出される圧倒的なアドバンテージ差で全てを黙らせるのがこのデッキの戦略であり、《食物連鎖》コンボはあくまで「オマケ」。狙えたらラッキー程度である。
こういう構築にしておくことで、サイドボードから《食物連鎖》パッケージをすべて取っ払い、対策をとってきた相手の虚を突くことができるのも面白い。事実、サイドボード後は《食物連鎖》を抜くことも多かったそうだ。
■バント石鍛冶
最後に紹介するのは古来よりレガシーに君臨する由緒正しいコントロールデッキである「石鍛冶」系のデッキである。任意の装備品を持ってこられ、かつ2マナでそれを手札から出せる《石鍛冶の神秘家》を軸に動く、中低速のコントロールデッキである。
この《石鍛冶の神秘家》で持ってくる装備品は様々な候補があるのだが、まず候補その1が元祖ぶっ壊れ装備品である《殴打頭蓋》。5マナで装備させると+4/+4修正と警戒絆魂をつけられるのだが、0/0の細菌トークンに装備させた状態で場に出てくるため、実質5マナ4/4警戒絆魂のクリーチャーである。で、《石鍛冶の神秘家》経由だとたったの2マナで場に出すことが可能である。
オマケに3マナ払うと手札に戻せるので、トークンが処理されたら手札に戻して再度《石鍛冶の神秘家》で出し直して…と繰り返し、相手に圧をかけていく。これが「石鍛冶」系のデッキの基本戦術だろう。
そして持ってくる候補その2が、新たに加わったぶっ壊れ装備品《カルドラの完成体》。0/0の細菌トークンが装備した状態で出てくるのは《殴打頭蓋》と同じなのだが、こいつは+5/+5の修正に加え、トランプル破壊不能速攻諸々がついてくる。ラーメン二郎か?
ライフレースに持ち込む必要がないコンボデッキなどでは《カルドラの完成体》を、クロックパーミッションやアグロなど、コチラのライフを気にする場合は《殴打頭蓋》を…と、装備品の使い分けも面白い。相手に応じて最適なものを用意する、というのが「石鍛冶」デッキの醍醐味である。
…と、ここまで書けば普通の「石鍛冶」デッキの説明なのだが、実はこのデッキ、とんでもない横綱技が仕込まれている。
それがこの、《一日のやり直し》である。能力は極めて単純。両者墓地と手札をライブラリーに突っ込んで、7枚引くというドロースペルである。これだけ聞くと古のパワー9である《Timetwister》なのだが、このスペルは「あなたのターンであるならターンを終了する」という文言が。つまり、手札をリフレッシュしたと思ったら、同じく手札がパンパンになった相手に好き放題されてしまうという危険性もはらんでいる呪文なのだ。
先にも述べたが、このデッキはコントロールデッキ。基本的にはこちらがカードを引くことはあれど、相手にカードを引かせるのは面白くもなんともない。なので、そもそもこの手のカードは使いづらいはずである。
それでもこの呪文が搭載されている理由。それこそが同じく採用されている《船殻破り》である。こいつがいる限り、対戦相手のドローステップ以外のドローはすべて無となり、代わりに自分の盤面にドロー枚数に応じた宝物トークンが出てくるようになる。
つまり、コイツがいる状態で《一日のやり直し》を撃つことで、自分は手札7枚。相手は手札0。そして自分の場には宝物トークンが7個というとんでもないアドバンテージ差を築き上げることができるのだ。これこそがコントロールデッキが目指す世界である。
無論、これに頼ることがなくても、上記の石鍛冶パッケージが極めて強力であり、これで相手を完封することも出来る。また、これ以外にも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》など、アドバンテージ差を広げるカードが搭載されており、プレイの選択肢は多岐にわたる。常に最前手を考え、勝利を手繰り寄せよう。
4.終わりに
というわけで、3ヶ月分のイベントの概要をまとめたが、いかがだっただろうか。
おうちでレガシーは毎週土曜日22時から定期的に開催している。つまり今日も開催予定である。コチラのMTG Meleeで参加受付をしているので、興味があれば参加して頂きたい。
また、当日の模様は筆者のTwitchでフィーチャーマッチの配信も行っている。コチラも見ていただけられれば幸いだ。
是非、レガシーを愛してやまない皆さまのご参加をお待ちしている。
この記事が参加している募集
よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。