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【詩】汚れたタオル

家族総出でバスに乗って、
家族総出で街に出る。
そういう家庭が多かったから、
休みの日もバスは多かった。
そういう家族が集まるから、
休みの日の街は賑わっていた。
ついでに家族総出で映画に行って。
ついでに家族総出でラーメンを食って。
だから映画館は潤っていた。
だからラーメン屋は味を鍛えた。
家族の和が景気に繋がり、
家族の和が経済を発展させた。

工場のにおいがしても文句は言わず、
石炭の煤が降ってきてもマスクなどせず、
汗にまみれた人たちに親しみを持ち、
汚れたタオルに生きる力を感じた。
すべてが繁栄の証だった。
すべてが夢への架け橋だった。
それを人々は理解していた。
そこには家族の教えがあった。

家族総出でバスに乗って、
家族総出で街に出る。
昭和の中頃、
日本人が夢を見ていた頃の話だ。

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