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鎌倉投信・江口さんとの対話から~KSAP Dialogue Night #2~

アクセスいただきありがとうございます!
NPO、VC、自分の合同会社の三足の草鞋で活動してる田中成幸(たなかまさゆき)です。

私は普段NPOのプロジェクトマネジメントや、ベンチャーやスタートアップの伴走支援や、政府や自治体の調査研究や実行支援、社会課題に取り組む個人コーチングなどの仕事をしています。

社会課題の解決に取り組む神奈川発の起業家育成プログラムKSAP

さて先日のことですが、社会課題に取り組む起業家を支援する神奈川県の事業「KSAP(神奈川スタートアップアクセラレーションプログラム)」のイベントに事務局として参加してきました。

KSAPでは、年間を通じて様々なプログラムやイベントを提供していますが、今日は、社会課題解決に携わる様々な起業家や支援者が語らうイベント「ダイアログナイト」の日。
全5回で今日は2回目。神奈川県内各所で開催していますが、今回は鎌倉のインキュベーション施設「HATSU鎌倉」での開催です。

ゲストは鎌倉投信で事業部長をつとめておられる江口耕三さん
鎌倉投信といえば、前職時代、NPOの方や地域活性化に取り組む起業家の方と一緒に「ソーシャルって何よ?」というテーマで勉強会を開催した際、立ち上げ間もない時期にも関わらず新井さんに来ていただいたことが思い出されます。

2012年の写真引っ張り出し。真ん中が鎌倉投信創業者の新井さん。
両脇にいるのは育て上げネットの井村さんと皇學館大学の千田さん。メンバー豪華すぎ

今晩のテーマは「社会課題解決型VCに聞く ソーシャルベンチャー起業家と投資家の挑戦」
事務局メンバーでありながら、一参加者としても大変興味のあるテーマ
これぞ役得♪

全5回の2回目なのです。3回目以降も参加可能ですb

ちなみに3回目はゼロボードの渡慶次さん、4回目はエールの櫻井さん、5回目はINQの若林さんで、普通にラインナップがヤバです。

ご興味ある方はこちらから是非ぜひどーぞ☟
https://peatix.com/group/7251697/events

鎌倉投信のユニークネス

さて、話を今回のイベントに戻して、鎌倉投信は2008年に設立された投資信託会社。
江口さんのお話の中で同社のことを「面白いなぁ!」と感じたところをいくつかご紹介していきたいと思います

利益をたくさん上げる会社ではなく”いい会社”に投資する会社であること

投資会社は投資家から預かったお金を運用して利益を上げるのが仕事ですから、利益が上がりやすく・利益が大きい案件に投資するのが基本スタンスになります。
が、鎌倉投信はここの基本スタンスから違っています。
江口さんの言葉を借りると、同社が重視しているのは「”いい会社”に投資すること」だそうです。

「いい会社」とはなんぞや?ということになりますが、もちろん概念説明もしてくれて、言い換えると

「これからの日本に本当に必要とされる会社」
「社員やその家族、取引先といったステークホルダーまで、その会社に関わる全ての人との「和」を大切にしている会社(に投資している)」

ということをお話されていました。
特に二つ目の全てのステークホルダーの和を重視するという視点は、鎌倉投信のウェブサイトにもほぼ同様の文言で掲載されており、同社の方針の徹底ぶりがうかがえます。
(ちなみに、後日同社のことをよく知る方とこの話になったのですが、江口さんのような経営層のみならず、同社で働く全ての人は経営方針について同じ話”しか”しないそうです。ミッション・ビジョンの浸透力の高さよ…)

投資対象領域についてはいくつかのフレームを提示してもらいましたが、その一つである「人・共生・匠」という観点が「いい会社」の良さの説明にもなっています。

鎌倉投信ウェブサイトより抜粋

つまり、鎌倉投信が考える会社の良さとは
✅優れた企業文化、人財の活用
✅循環型社会の創造に貢献
✅日本独自の高度な技術、感動的なサービス
といったところに源泉があるということですね。
そのどれもが企業やそのステークホルダーの中長期的な繁栄という部分に繋がっている視点になっているように思います。良い会社ほど長く続くということでもあるということですね。

ユニコーンを生み出す以外の関わり方

次に江口さんから紹介のあった、鎌倉投信の2号ファンド「創発の莟(つぼみ)」
こちらは1号ファンドと比べると、よりベンチャー/スタートアップへの出資に重きを置いたファンドのようです。

創発の莟についてお話されていた中で印象に残っているのは、江口さんが

「日本でユニコーンを生んでいこうという流れがあるけど、うめるはずがないですよ」

と喝破されていたところ。アメリカのように、世界中から人材やカネが集まる条件がいわゆるユニコーンの生育環境だけど、日本はそういう国ではない。だからこそ日本流のスタートアップとは何なのか、育成するエコシステムを考えていく必要がある、という考えは確かに、という感じですよね。

スタートアップやベンチャーを育成する「環境」というハナシをしたとき、環境には色濃く物理的な影響や土地に紐づいた歴史文化的な背景が含まれているものです。
その蓄積を抜きにして育成の話はできないし、かといってその蓄積をゼロから作っていくのも現実的ではないとすれば、日本というローカルな環境が実現し得るものはなんなのか、ということを考える必要があるわけですから。

ショットガン的に100個のベンチャーに投資してそのうち1社がIPOして元を取る狩猟的な投資ではなく、100社に投資してその100社が少しずつ着実に成長していくことで利益を上げていく農耕的な投資を鎌倉投信は目指している感じがします。

環境は選ぶより変える方がずっと難しい

共感されることを重視した透明度の高いコミュニケーション

短期的に大きな利益を目指さず、中長期の関わりの中で企業だけでなく関わる人が栄えるような会社に投資していく、という姿勢は、自分の財産を増やしたい、という考え方の投資家からすると第一印象、とっつきにくい。

だからこそ鎌倉投信のコミュニケーションはなるべくダイレクトに、透明性高いデザインにしているそうです。

事業モデルとしては、投資信託の販売会社を介さず、投資家と鎌倉投信が直接やり取りするという形をとっていること。

投資信託協会ウェブサイトより抜粋

上の図のオレンジ色の部分、「販売会社」が鎌倉投信のビジネスモデルにはないということです。
業務に特化しない分コストはかかりますが、自分たちのファンドの目指すところを自分たちの言葉で伝える方が重要だという判断でこのようなモデルを採用しているわけですね。

また、投資家とのダイレクトにコミュニケーションしていくうえで重視している事が透明性の高さだそうです。

凄いのは、鎌倉投信が前述のような投資方針のような抽象的なレベルに留まらず、個々の出資先についても投資理由を明示していることです。

ウェブサイトにアクセスすると、創発の莟ファンドの出資先とその理由が全て付記されています。ここまで開示してくれるファンドってあまりない(聞けば教えてくれることが多いですが)ですよね。

このような出資理由の明確化は、同様に社会課題に取り組んでいこうとするベンチャー・スタートアップにも参考になりますよね。起業家の育成をとても大事にされているということが伝わってきます。

このほか、出資している人と出会い、出資先の理解を高める機会としての受益者総会の取組なども透明性とオープンネス高く、出資者に思いを伝える場として重要な意味を持っているのだと思います。

気になる「創発の莟」出資先のソーシャルベンチャー

そんな鎌倉投信の創発の莟が出資しているベンチャーの顔触れは特徴的なものが多かったですし、NPO領域で若者支援に取り組む私が聴いたことがあり「おもしろいことやってんなー!」と思っていた企業もあって、ちょっと嬉しかったな。

例えば、障がい当事者の生み出すアート活動から社会・文化を創りだすヘラルボニーとか

「保育園留学」という親子ワーケーションの新しい可能性を模索中のキッチハイクとか

AIやIoTを活用して保育・育児関連の事業を展開しているUniFaとか

まー興味深い!ですし、これからの社会をつくっていくと期待膨らむ会社がラインナップされていて、他のファンドとの顔触れの違いが明らか&鮮やかです。

キッチハイクは結構前から知ってましたが、元々、食を地域外の人と結び付けるサービスが主軸だった印象があるのですが、現在主力事業となりつつあるワーケーション事業へのピボットにも鎌倉投信さん絡んでるんですかねえ。そのあたりの関わり方も気になるところです。

社会課題に取り組むプレイヤーの生態系

鎌倉投信は投資という資本主義的なシステムを採用しつつも、「資本主義で壊してきた社会環境を、資本主義で治していくことが必要」と仰っていて、それはとても良い考えだなと思いました。

システムとしての資本主義は確かに問題も孕んでいるかもしれないけど、成長を後押しする強力なエンジンの一つであることも確かです。
原子力エネルギーと鉄腕アトムのような創意工夫を金融システムの中で生み出していこうとしている鎌倉投信の姿勢は、そういう意味でとても日本的な取組だと感じました。

これを機に、鎌倉投信の投資家としていっちょがみしてみようかな。

江口さんとダイアログナイトに参加された起業家の方々とのQ&Aもすごくよかったのですが、このエントリーはこのくらいにして、次回のエントリーに回します。

今回もお読みいただきありがとうございました!

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