はじめてのnote:敬愛するLou Reed
本日10月27日は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでの活躍などで知られるミュージシャン、ルー・リードの忌日です。初めてのnoteとして、大好きな彼のアルバムについて書いてみます。
”New York” / Lou Reed (1989)
概要
ルー・リードのアルバム「New York」は、1989年にリリースされました。本作は彼のキャリアにおける頂点の一つで、彼の社会的・政治的メッセージを強く反映した重要な作品です。80年代後半のニューヨークを鋭く描写しており、彼の文学的才能が最大限に発揮されています。本作のメッセージ性と音楽性は多くのリスナーに強烈な印象を与えました。そして、このアルバムで見せた社会的メッセージと音楽の融合は、後のミュージシャンたちに新たなインスピレーションを与えたと言われています。
サウンド
「New York」のサウンドはシンプルかつストレートなロックです。このアルバムでは、エレクトリックギター2本にドラムとベースという小編成バンドがソリッドに演奏しています。ルー・リード本人によるジャケ裏の文章によると、左側のギターが彼で、右側がマイク・ラスケ。ドラムは、本作をルーと共同プロデュースした、フレッド・マー。ベースはロブ・ワッサーマン。余計な装飾を排することで、メッセージ性が際立っています。そして、彼の低く独特な声と相まって、歌詞の鋭さが一層強調されています。
ジャケ裏の文章
"This album was recorded and mixed at Media Sound, Studio B, N.Y.C., in essentially the order you have here. It's meant to be listened to in one 58 minute (14 songs!) sitting as though it were a book or a movie."
「このアルバムは、ニューヨークのメディア・サウンド スタジオBで、基本的にここにある順番でレコーディング、ミックスされた。あたかも1冊の本や1本の映画のように、58分間(14曲!)を一つの物語として聴くことを意図している。」
魅力的な楽曲の数々
”Romeo Had Juliette”
アルバムの冒頭を飾るソリッドな1曲で、ニューヨークの街とその中で生きる若者たちの愛と葛藤を描いています。イントロのギターの響き、堪りません。
"Halloween Parade"
10月も後半になると聴きたくなる曲です。当時AIDSの感染者にゲイや麻薬の常習者が多く、その感染者に対するひどい社会的偏見を背景にしています。こうしたコミュニティに対する彼の共感と追悼が込められた楽曲で、切ないメロディと深い歌詞が印象的です。
"Dirty Blvd."
ニューヨークのホームレスと大富豪を対比的に描いた本アルバムを代表する1曲。シングルカットもされました。シンプルなサウンドとルーの囁くような唄声がよく調和しています。
"There Is No Time"
疾走感のあるテンションが上がる1曲。"This is no time for~"のフレーズを繰り返し、最後に"This is a time for action because the future's within reach."と煽る!そういえば、今日は総選挙の投票日。選挙へ行こう、行動の時だ。
"Sick of You"
架空のニュース報道を歌っている曲。当時の世界や米国の状況に詳しくないとわからない(笑えない?)歌詞ですが、あのトランプ氏の名も登場しています。35年後の大統領選に出てるとは、当時は想像すらできなかった。米国大統領選挙も間近。
ごく私的な思い出
このアルバムがリリースされたのは1989年。日本は平成が始まった年で、後世「バブル景気」と称される、活気ある社会でした。本作の歌詞の中にも「日本にエンパイアステートビルを売っぱらった」というのがあります。
しかし当時の私は、そんなイケイケの時代に乗れず、風呂なし下宿の1室で、食事代を削って購入した60-70年代ロックやR&Bの名盤に浸っていました。
そんな頃、本作のリリース情報を友人の友人から聞き(ネットなどない時代…)
「これはアナログレコードで買おう!」
ところが、この頃はCDの時代で、レコード国内盤発売は期待薄。
そして、寒い冬の日、ふらっと入った川縁の半地下にある輸入レコード店で発見。翌日分の食費で購入した帰り道、何度もジャケ見てワクワクしてた、あの気持ち 今も覚えています。ビニール外袋の青みがかった色味と、着ていたコートの感触も。
寒い部屋に帰り、インナースリーブの歌詞を見ながら、ターンテーブルに針を落とす。直後、響いてきたギターの音色…私が実社会に出る少し前のことでした。
敬愛するルー・リード
ルー・リードは、生きるのに倦み疲れていた私に、シニカルな視点を与えてくれました。彼の冷静な語り口と鋭い洞察は、人生の陰影や都市の孤独を描き出していて、私にとっては、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンらと並んで、畏怖と共に敬愛すべき特別な存在なのです。
さらに詳しく彼を知りたいならば「ルー・リード伝」を読みましょう。
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