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「男」の誕生を願うトルクメン人の名づけ・外国人としては複雑な気持ち

名前シリーズ第二弾。

日本でもこんな子になってほしい、あんな子になってほしいと願いを込めて名前を付けますよね。もちろんトルクメニスタンでも同じです。しかし、それだけではなく、驚くべきことにトルクメニスタンには次に男の子が生まれてほしいという意味で女の子にogul(オグル)「息子」という名前を付けるという習慣があるのです。まずはそのうちのいくつかをご紹介しましょう。

Ogulbagt(オグルバグト)
ogulは「息子」、bagtは「幸福」(ペルシャ語由来)です。
幸せな娘の後には息子が生まれますようにという願いが込められています。

Oguljahan(オグルジャハン)
ogulは「息子」、jahanは「世界」(ペルシャ語由来)です。
jahanは「広い世界でも楽に生きていけますように」という願いを娘に込めた名前です。それと同時に次は息子が生まれてきますようにという願いが込められてます。

Ogulbeg(オグルベグ)
次に生まれてくる子供がbeg「指導者、有力者」になりますようにという意味。生まれてきた子への願いもせめて入れてほしいですね。

Ogulgerek(オグルゲレッキ)
ogulは「息子」、gerekは「欲しい、必要だ」という意味です。「息子が欲しい」というストレートな名前ですが、年頃になると「男(恋人)が欲しい」という意味でからかわれたりして可哀そうでした。

Ogulgeldi(オグルゲルディ)
直訳は「息子が(生まれて)来た」です。こちらは「息子の代わりに生まれてきてくれた」という娘に対する喜びを表している名前らしいのですが、やはり息子が生まれてくることが基準となっている感は否めません。

Döndi(ドンディ)
直訳すると「回った」ですが、次は「男」に交替するようにという意味でつけられています。(同じ意味でDöndüというおばあさんにトルコでも会ったことがあります。)

(類似の名前はまだまだありますが、これくらいにしておきます。)

中国でも同じようなことがあるのか、弟が生まれるようにと名付けられた人が、改名したというネット記事もありました。

少し本筋とはズレますが、日本でも戦後の女性の名前に「トメ」(出産が止まるように)や「スエ」(末っ子になるように)等、もう子供が生まれないようにという願いを込めて名付けられたことがありました(これは自分たちでどうにかしろとも思いますが…)。少なくとも、次への願いを生まれた子の名前に付けるということは日本でもあったことです。

これらの背景にはやはり一族の繁栄への願い、後継ぎを残さなければならないという家庭の使命感や伝統があるのだと思いますので、生まれてくる子が可哀そうという単純な問題では片づけられないことでもあります。とはいえ、最近ではつけられた本人が嫌がるケースもあり、ogulの部分を隠したり、ニックネームを名乗るようなことがよく起こっています。最近は名前としては人気がなく、きっと今後は減っていくのでしょう。

最後になりますが、あくまでも、息子が生まれてほしいという願いが強いわけであって、娘に生まれてほしくないというネガティブな感情があるわけではないということは私からも付け加えておきます。