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ザクロ売りのおやじにサウナに誘われた話

私が20歳の時、トルコで遊学していた頃の話です。

日本でトルコ語の文法や購読ばかり学んでいた私は、トルコに行った当時はアウトプットに自信がありませんでした。そのため、せっかくトルコに来たのだからと積極的にトルコ語を使うべく、いろんな人と話をしていました。トルコ人の国民性もあり、その辺の知らない人と雑談することは特に違和感のないことでした。

ある日、寮からバス停の道すがら、ザクロを荷台いっぱいに積んだトラックが出現しました。きっとシーズンだったのでしょう。トルコに渡航して日の浅かった私はザクロがもの珍しく、目を惹かれていました。するとザクロ売りのおやじが声をかけてきました。詳しい会話は思い出せませんが、私が日本ではあまり食べたことがなかったとでも言ったのでしょう。ザクロを一つくれたのです。トルコ人にとって果物は大量買いするもの。眺めて買うかどうか悩んでいると「もってけ」と言ってくれることもありました。本当にトルコ人はいい人だなぁと思い、その後は毎回挨拶をする仲になっていました。

またある日、語学学校の帰りに呼び止められて、いくつかのザクロをもらいました。日本人が物珍しいのかなと気にも留めていませんでしたが、あまりに毎回無料で差し出してくれるので、なんだか相手に悪く感じるようになってしまい、受けとらなくなりました。

そしてまたしばらくして、今度はザクロではなく、ハマムに行かないかと誘われました。「20歳のピュアな私」はそれでも特に何も思わず、ただよく知らない人とサウナ行くのもなんか嫌だなぁと思い、断ったのでした。その話を友人にすると、「あいつは男が好きなんだ。危なかったな。」と言うのです。「20歳のピュアな私」(あえてもう一度言う)はショックを受けました。そういう世界を見たことがなかった私は、身の回りで起こることだと思いもしなかったのです。

さらにまた別の日、ザクロ屋のおやじに会うと、やはりしつこくサウナに誘ってきます。もちろんついて行っては危険だともうわかっていますので、断固拒否です。終いには、おやじはブチギレ、「あんなにザクロあげただろう」としつこく言い寄ってきます。その時は隣のオレンジ屋のおやじが助けてくれたので、事無きを得ましたが、それ以来ザクロ屋のおやじがいる道を通るのをやめました。

念のため断っておきますと、私自身LGBTといわれる人に特別ネガティブな感情はありません。特にトルコの時には友人にもいましたし、それで相手を軽蔑したりはしません。ただ、相手の了解を得ずに何かしようというのは相手が男であれ女であれ、問題だと思います。もしかしたら友達として風呂に誘ってくれただけかもしれませんって?その場合はザクロ屋のおじさん、ごめんなさい(でもブチギレてたからなぁ)。