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文化生活一週間 -One Week-


フィクションを書けるってのは才能ですよ。


僕は無理。フィクション名人は、家に居ながらにして月の裏側でうさぎと餅をつく。僕は福岡市中央区から離れられない。身の回りで起きたことしか書けない。


これは仕事柄かもしれないなぁと理由付けをする。目で見て記録する仕事を20年以上やってると頭もその流れに特化していくのかもしれない。写真家でありながらエッセイも書ける人はたくさんいるが、小説が書ける写真家はそうそういない。


だから常日頃、巻き起これドラマチック、みなぎれイマジネーションと唱えてはいるのだが、そう都合よく劇的なことは起きない。


台風が通り過ぎた日から丸一週間、僕の人生には何も起きなかった。それはもう、ものの見事に。


起きないものは仕方が無い。仕方が無いので、何もないここ数日を書き出してみる。これは実験である。極私的な。




9/8(火)

日常が絵にならないなら写真を貼ればいいじゃない。



僕の中のアントワネットが気楽にうそぶくのだけれど、僕は写真を撮ることが仕事(日常)で、その仕事写真は往々にして表に出せない。今日の写真は限定的とは言え、表に出せる。これは助かる。



「なんですそれ?新品?」

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買ったばかりのスマホをいきなりヘアメイクチームに詰問される。女性は目ざとい。




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このチームと仕事すると大概遊んでる雰囲気になる。遊んでみえるのは、それだけ余裕があるということで、余裕があるのは即ち腕が良いからだ。腕に自信があるから、こんな可愛いサンダルで現場に来れる。すしざんまいのポーズも出来る。




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かと言って腕が良いことは特段自慢にはならない。仕事なんだから当たり前だ。おごらずコツコツ練習していかなければいけない。


とか言う、お約束の決まり文句を肝に命じておけば本当に腕が上がるから、僕らの業界は幸せだ。シンプル。




そんなシンプルな僕は、お客様から「鈴懸」の鈴乃〇餅を頂いた。

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鈴懸だ。福岡の人間ならかなりの確率でテンションが上がる和菓子の名店。そんな鈴懸の名物・鈴乃〇餅。「〇餅」と言うのは伏せ字では無い。「すずのえんもち」と読む。あらおしゃれ。



鈴懸だスズカケだと浮かれ気味に家路を急いでいたら、目の前歩いてた女子高生2人組が「ホント令和ロクなことが無いわっっ!」と大声で毒づいた。



その発言から察するに、どうやら彼女たちにはロクなことが無いらしい。大変だな。僕は家に帰って餅を食うよ。





9/9(水)
ドコモ口座、不正引き出しの件。


いくつかの金融機関に口座を持っている。その中の3つが「被害に遭う可能性があるリスト」に入っていた。ウチみたいなセレブになると、それぞれの口座に80億くらい入っているので窓口に出向いたわけです。


「あぁ、それでしたら大丈夫ですよ!うちは関係ありませんから」


窓口の人がやけに快活に断言するので素直に帰りかけたが、一応確認してみる。


でもこちら、リストに入ってるんですけどね、と。


「え?」


いや、え?って何よ。
面白いな。


窓口の人にスマホでYahoo!ニュースを見せる。窓口の人、神妙な顔でスマホに見入る。そしてそのまま奥に行く。窓口の人、別の人と話し込んでいる。別の人も神妙な顔になる。2人で3度程こちらを見る。仕方ないので僕も神妙な顔をする。窓口の人、奥に消える。


少し待たされる。


窓口の人とは別の人が来る。
「当行もリストに入っておりました」
だからそう言ったじゃん。


そういう情報って、すぐに全支店で共有されるものだと思っていたが、意外とゆるいもんなのかな。僕が窓口に行った時には、既にtwitterのトレンドに入るくらいには盛り上がってたのにね。


僕の通帳はその場で調べてくれた。疑わしい入出金記録は無かった。ちゃんと75円入ってる。



窓口の人は最後まで戻ってこなかった。消されたのだろうか。



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帰宅するとドアの前に爆発物みたいな小包。俺も消されるのか?




9/10(木
)
小包の中身はプリンターのインクだったので、まだ生きてはいる。しかし昨日からずっと、銀行に暗殺される妄想が止まない。


鈴乃〇餅を食べる妻に質問する。


今、鈴乃〇餅を食べてんじゃん?食べてる最中に急にノドが焼けるように痛みだすんよ。ほんで呼吸困難に陥るわけよ。苦しげな君を、俺が無表情で見つめてるとするでしょ?そしたら君は思うのかな?『毒を盛られた!』って思うのかな?


「思わんやろうね。なに黙ってみとるん?!助けてよ!って思うやろうね」


ふむ。じゃあさ、俺がね、ノドをかきむしる君の姿を、無表情じゃなくて、ニヒルな笑みを浮かべて見てたら『毒をもられた!』って思うんかね?


「思わんやろうね。なに笑っとるん!?助けてよ!って思うやろうね。あと腹が立つやろうね」


ふうむ。


じゃあさ、俺がニヒルな笑みを浮かべた上で、君に「フフフ…ひっかかったな…」って言ったら、さすがに『毒をもられた!』って思うんかね?


「思わんやろうね。やけんホントもうホンットそういうのいいから助けてよって思うやろうね。あと腹が立つよね。ほんでバカやないん?って思うやろうね」


なるほどな。


毒殺だと最後まで俺の犯行だとバレないが、バカだと思われるらしい。生の情報だ。




9/11(金)

note や twitter で繋がっている麦谷さんが僕の投稿をシェアして褒めてくれた。ありがたいよね。


面白かったのは「距離感」への言及。これに関してはリアルな友人にもちょくちょく言われるんだ。とはいえ自分では、その正体が分からない。


先日、毒殺しそこなった妻にたずねてみる。妻は即答である。


「基本、他人に期待してないんよ。人に興味はあるけど期待してない。自分にしか期待してない。それが距離感に出るんよ。結局自分なんよ!」と笑顔で言う。


ん?


僕は他人に期待してるよ。しょっちゅう人のうわさ話に花も咲かせるし水もやる。他人からの評価にムキードンドンと地団太も踏んでいるよ。


「だからそれはその人を通して自分を見て、自分への期待値にムキードンドンしとるだけなんよ。結局自分なんよ!!私はそれでいいと思っとるよ!」と満面の笑顔で言われた。


それでいいらしい。誰にでもオススメできる生き方でも無い気はするが。



9/12(土)
仕事帰りに牛乳買って帰るよう頼まれたのだが、いつもの190円牛乳が売り切れだった。仕方ないので1本だけ残ってた阿蘇小国ジャージ―牛乳350円を買って帰ったら妻が変な声を出した。毒には耐性があるのに牛乳の値段には弱いようだ。人に期待しちゃあいかんよ。


牛乳を冷蔵庫に入れ、仕事部屋のドアを開けると次男がメシを食っていた。


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びっくりした。僕の作業場は出入り禁止なのに。




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じゃあ長男はと言うと、ベランダで食事中。空からサメが降ってきた時に備えてヘルメット着用。


相手が自分の思うように遊んでくれず、盛大な兄弟ゲンカをしたそうだ。


人に期待するからケンカになるのだ。僕みたいに他人様には期待せず生きていけば楽なのに。予想外に餅でも頂いたら、それだけで一日中幸せだぞ。


もちろん子供相手にそんなことは言わない。言っちゃいけない。


子供は世界中に期待しながらキラキラ生きるべきだ。




9/13(日)

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短髪メガネな僕の頭部は、サーモグラフィー越しに見るとスパイダーマンそっくりになるんだ。披露する場がほとんど無い密かな自慢。


以上。
日常なんてこんなもの。






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