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書評◆「津波の霊たち」(リチャード・R・パリ―)
防波堤を超える津波の映像をはじめて見たとき、器から水がとめどなく溢れるようだと思った。けれども家々を破壊し車を押し流し、瓦礫とともに田畑の上を進んでいく津波の空撮映像を見たとき、これはもう水の塊というより、触れるものすべてをのみ込む黒い怪物だと感じた。あれから7年が経つけれど、Youtubeには今もたくさんの津波の動画が上がっている。時どき思い出したように、私はそれらの動画を見る。不謹慎と言われる
もっとみる雑感◆西部邁さんの死(その2)
西部さんの死を知ってから、遅ればせながら彼の近著を二冊ほど買って読んだ。といっても私の関心事が彼の死をめぐるあれやこれやだったので、時として難解かつ深遠に感じられる保守思想はとりあえず脇に置き(西部さんが語る凛然とした右翼思想には漠然と好意を抱いてはいるが)、おもに数年前に看取ったという彼の奥さんや北海道のご家族、彼の人生に少なからぬインパクトを与えた知人たちの死をめぐるエピソードをさがしてはペー
もっとみる雑感◆西部邁さんの死
先日、ここ何年も書くという習慣から離れていたのはさすがにまずいなと思い始め、とりあえず思いついたことを不定期に綴っていこうと思う。ほかに適当な場所もなく、しばらく放り出していたnoteがあったので、内容的にはお粗末きわまりなく、ただ羞恥心のみ晒す結果になるのは分かっているけれども、できるだけ衒いなく構えることなく綴っていけたらと思う。
先月だったか、西部邁さんが多摩川で自死を遂げたらしい。「朝生
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」Edge of Tomorrow(映画評)
弁は立つが腕は立たない一人の臆病な中年男が、放り込まれた戦場で過酷なプレイを繰り返しながら確実に経験値を上げていき、最終的には大ボスを倒して地球の危機を救う、というまるでRPGのような映画がこれ。舞台は近未来の地球。「ギタイ」と呼ばれる宇宙からの侵略者によって欧州は激戦の地となり、戦況はのっぴきならない段階を迎えている。広告業界出身の軍の報道官、ウィリアム・ケイジ(トム・クルーズ)は最前線でのレポ
もっとみる「闇のあとの光」Post Tenebras Lux(映画評)
解読することを拒む作品に出合ったとき、それについて語ることはとてもむずかしい。時間軸や因果律や印象深いキャラクターといった、ストーリーを読み解くための材料すら与えられず、まるで万華鏡を覗くように目の前に展開する映像をただただ体験させられる。座席に身をあずけ、視覚と聴覚をたよりに無力な観客としての自分を感じた115分間は、それでもなぜか心地よかった。
まずは、のっけから始まる映像が刺激的だ。山の麓
飼い猫が入院した。
心配のあまり空地へ行き、猫神様にお伺いを立てた。
「愛だ」と猫神様は仰った。
「愛が・・・足りないと?」
「いや、エサだ。もっとたくさんの・・・」
「エサは残すほど十分に」
「ではそれをここへ。回復するであろう」
「はぁ?」
持参して数日後、飼い猫は退院した。
「ノア 約束の舟」Noah(映画評)
旧約聖書の物語、「ノアの方舟」が、ラッセル・クロウ主演で映画化された。監督は「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー。アダムの子孫であり、神に従う正しき人であったノアは神の啓示を受けて、来るべき大洪水に備えて巨大な方舟の建造に取りかかる。荒れ地に突然現れた水脈は周囲に豊かな森を繁茂させ、しだいに地上の鳥や獣たちが引き寄せられるように集まってくる。ノアは醜い巨人の姿となった堕天使の力を借りて、
もっとみるあなたは だあれ?
ちゃんと 生きてる?
いきいき してる?
行き来してる?
息してる?
心は花に
言葉は川に
いのちは空に