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マスクトピア
2014年7月9日 23:56
心が壊れた夜には甘い砂糖菓子をたべて満ちてくる潮におぼれる飽和した呵責を中和するために街の背骨の上に赤い月が浮かんで海面を引っ張ると臓器の底の湿った井戸に昏い水が満ちる産道を通って脚のあいだに広がる海にいとけない言葉たちが放たれて波間にただよう無音のままで潮の濃度と釣り合うだけの甘さに浸って喉の奥へと叫びを押し戻すこの残酷な世界に留まり続けるために
2014年6月20日 22:29
(それは罰でしょうかそれともただの汚辱でしょうか・・・・・・)樹の幹につと掛けられた梯子に登ったのは愚かさでしょうかそれとも下卑た好奇心でしょうかいえいえそれはほかならぬあなた(でありわたし)です暗い森の樹々の梢に白く清らかな月が懸かり あなたの胸をきつく締めつけたけれども樹々は意地悪くも空を覆い隠してしまったのです白い光が欲しくてあなたはだから樹
2014年6月12日 21:01
反転された文字列から入口を探す隠された仮想領域のことばを狩りにほの白い闇に明滅する極小級数の記号はところどころ渦を巻いてわたしを惑わせる黒色星雲の配置にならい なぞるカーソルの上に立ち現れる闇変換されるものと されないものの間で蠢いている見えざる手の記憶投影された形をさぐる端末の上におぼろげに凝固していく死人の輪郭蒼白の顔面に針を突きたて開閉動作を不規則に繰り返しながら真
2014年5月8日 14:53
浅瀬に人影がうかんでいた ゆらゆらと動いているのは髪の毛ばかりで まだ生きていた父とふたり はるか野の際をいく船に手を振り 斜面の草をゆらす風に 白い花びらをちぎっては散らした 別れのはじまりはこんなにも唐突で わたしはふいに折り重なっていく予感に 編みあげた冠をかぶることも忘れて 鈍色の裂け目にのまれるように遠ざかる 父の
2014年5月17日 22:20
五月の青い闇のなか 私はかぼそい少年になり 夢の迷路へ踏み入った 白いうなじに風を受け はだしの足で土を蹴り 煙る街頭はすに見て ネオン流れる色街へ 着いた路地にはカツカツと 商売女の靴の音 闇に隠れて覗き見る 色めく世界の艶やかさ (おいでな坊や 姐さんの 胸の谷間でお
2014年5月27日 12:13
世界の片隅で生まれた風は 猫柳の枝を揺らし 水辺に群がる蝶の触手を掠め 乾いた轍の上を砂塵を巻き上げながら 叫びと響きを翼にのせて つむじとなって舞い上がる 鋭いまでの切っ先で遥かな高みに挑みかかり 打ち破れうなだれた幼い風は 地を慕うように吹き戻り、棕櫚の梢へ やがて閉ざされた窓へと―― 君には風が見えないか 生まれたばかりの清新の息吹を その頬に感じないか