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2023年のChatGPT本100冊以上ある説

2023年に話題となったものと言えば、「ChatGPT」です。
IT業界のみならず、日経トレンディによるヒット商品番付の横綱となり、流行語大賞にもノミネートされました(大賞は野球好きおじさんが選ぶ「ARE」でしたが)。
これだけ人気があるChatGPTを不況にあえぐ出版社が見逃すわけもなく、2023年5月を皮切りに大量のChatGPT関連本が発売されました。
書店で専門コーナーが作られており、今年の出版社業界で中心となった存在と言えるでしょう。

ジュンク堂書店池袋本店にて筆者撮影

今年に入ってChatGPTに関する本は大量に発売されており、その数は多すぎるほどです。
あれだけ本屋に並んでいるのなら、全部で100冊は越えているでしょう。
そこで2023年に発売されたChatGPTの本が何冊あるのか調べてみました

・調査方法

発売済み及び発売予定の商業出版が登録されている版元ドットコムで調査します。
2023年12月18日時点で、2023年内に発売済み及び発売予定の本が対象です。
タイトルに「ChatGPT」が含まれる本を計算して、「生成AI」「大規模言語モデル」「OpenAI」「Azure OpenAI Service」など類似する本は除外しました。
なお、対象は出版社による本屋に並ぶ物理書籍のみとして、Amazonの電子書籍や同人誌などは対象外です。

では2023年において、ChatGPTの本を何冊発売されたのでしょうか?

・ChatGPT本の発売数

結果としては93冊でした
説における100冊には届かないものの、4月からの8ヶ月間を考慮すると、相当な数です。
月別の発売冊数のグラフになります。

秋から冬にかけて出版ペースは減速

なお、タイトルに「生成AI」を含む本が30冊だったので、「ChatGPTと生成AIの本」なら100冊を越えています(対して「大規模言語モデル」の本は3冊でした)。

今年話題になったキーワードや、出版数が多そうな本と比較してみます。

やっぱり「お金」は強かった

・なぜChatGPTの本が大量に出版されたのか?

ではなぜChatGPTの本が、100冊近くも発売されたのでしょうか。
最初のChatGPT本とされる「先読み!IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来」は、4月に発売されました。
ちょうどChatGPT本が世間一般でも話題になり始めた頃で、一番早く発売した本として、人気になりました。
既に8万部を販売しており、「1万部売れればヒット」とされるIT系の本としては驚異的な販売数です。
ここでChatGPT本が売れる事が証明されたので、他の出版社が続々と参入しました。

・どうやってChatGPT本を発売するか?

ChatGPTの本が売れると分かれば、早速執筆して販売します。
とはいえ出版社と編集者は、執筆者に依頼しなければいけません。
そもそも専門的な分野に詳しく、ちゃんとした文章がかける人材は限られています。
しかしChatGPTでは、その問題を簡単に解決できます。
なぜならChatGPTの本は簡単に執筆できるからです。

執筆者にChatGPTの専門知識は不要です。
プロンプトのコツやオススメを紹介する情報は、SNSやYouTubeにいくらでもあります。
それらを組み合わせれば、良い感じの文章になりますし、文章をChatGPTに書かせても良いでしょう。

そもそもChatGPTは人間の質問にAIが回答する仕組みなので、「どんな質問をするか」「どうやって質問するか」「どんな場面や目的で質問するか」を考えれば、後はChatGPTが良い感じに答えてくれます
このプロンプト(命令文)と回答のやり取りだけでページ数が稼げます
プロンプトと回答で2ページ使えば、目的や場面や職種などの状況で80パターンのやり取りを考えれば160ページが埋まります。
文字と余白を大きくすれば、もっと楽にページ数を稼げるでしょう。
このようなプロンプトの例文と実行結果の紹介を中心する本を「プロンプト紹介本」と本記事で呼称します。
そこにChatGPTの概要、OpenAI社の説明、他のAIツールやブラウザのプラグインなどを盛り込めば200ページ程度になるので、本として体裁がまとまります。
図やイラストを少なくすれば発売までの期間はより短くなり、ついでにデザイナーへの外注費も下がります。

こうして出版社が短期間で発売するため、「プロンプト紹介本」が大量に発売されました。
2023年に発売されたChatGPT本のうち、プロンプト紹介本は93冊中49冊となりました。
ChatGPT本のに対するプロンプト紹介本の割合は、52.8%を誇ります。

・「プロンプト紹介」以外のChatGPT本

ChatGPT本を分類すると、以下のようになります

・プロンプト紹介:前述のプロンプトと結果を解説する。
・仕事術:ChatGPTを用いた特定の職種や業務における活用法を紹介する(プロンプト紹介以外を一定以上含む)。
・社会評論:ChatGPTが社会に与える影響を考察する。
・技術書:ChatGPTに使われる大規模言語モデル(LLM)や、プログラミングなどについて技術的な解説をする。
・Excel(VBA):ChatGPTにExcelやマクロと組み合わせた解説をする。
・法律:ChatGPTに関連する法律や規制について紹介する。
・その他:上記に該当しないもの(副業案内や陰謀論など)。

技術書は執筆に時間がかかるので少ない

プロンプト紹介本が圧倒的に多いのはもちろんですが、技術書の割合が少ないです。
これは技術書を執筆できる人が限られる上に、執筆に時間がかかる点が要因です。
来年以降に、徐々に増えてくるでしょう。

・2024年に求められるChatGPT本

今年発売したChatGPTの本は、プロンプト紹介本が中心でした。
とはいえプロンプト紹介本を1人で何冊も買う需要はなく、来年に発売されるプロンプト紹介本の売れ行きは芳しくないでしょう。

一方で、ChatGPT Plus(有料版)で使えるCode Interpreter(Advanced data analysis)、Web検索との連携、プラグイン、GPTsなどの追加機能を詳細に解説した書籍はまだありません
しかしSNSやYouTubeでは、最新機能に関する解説が溢れています。
しかも動画で音声でわかりやすく解説するSNSやYouTubeに対して、本は文章と静止画なので表現力に劣るため、本を買うメリットを見出すのが難しいでしょう。
この「プロンプト紹介本」「SNS・YouTube」との差別化が、2024年のChatGPT本に求められます

2024年ではChatGPTの本格的な普及段階となります。
既に導入済みの企業は増えているものの、まだ一部です(日本マイクロソフトの発表では560社以上)。
導入済み企業でも一定の成果が出ており、これからChatGPTの導入が増えていく流れにおいて、プロンプト紹介本では企業における導入活用の支援には限界があります

実際に企業でChatGPTを導入するにはチームの立ち上げ、プロジェクトマネジメント、予算やスケジュールの調整、ガイドライン・ルールの制定といった課題が出てきます。

現時点でこのような企業の導入活用における書籍はまだ発売されていません。
しかし、ある本が予約受付開始となりました。

本のタイトルは「仕事で使えるChatGPT」です。

本書はChatGPTの基本とプロンプトの解説に加えて、2023年11月のアップデートにおけるGPTsまでの追加機能、企業での導入支援、業務での活用、利用ガイドラインの策定に至るまで幅広く網羅しています。
既存のプロンプト紹介本と比較しても一目瞭然です。

IT業界によくある自社商品をやたら有利にした比較表に見えますが、気のせいです。

著者はこれまで書籍の実績として「これからのデータサイエンスビジネス」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」「データ分析の大学」があるので、執筆における経験もあります。
さらにAI・データ分析系の研修や教材制作のノウハウも注ぎ込んで、他人に説明する能力が高いことで評価を得ています。

「会社で使えるChatGPT」は、2024年のChatGPT本としてふさわしい内容となっております。
発売日は1月26日で、Amazonで予約いただければ当日お届けします。
電子書籍版も同日発売なので、後日登録される予定です。
これからChatGPTを使いたい人はもちろん、経験者として仕事や会社での導入活用に進めたい方にも役立つでしょう。
もはやすべてのビジネスパーソンが必読の本と言っても、過言では無い気がします。

今年は本書を執筆に時間を割いたため、他の仕事をする余裕がありませんでした。
来年の税金を払うため、皆様からのご注文をお待ちしております

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