商品取引営業から学ぶアポ取りの極意
こんにちはMASKです
知らない個人に投資勧誘の電話をいきなりかけて、どのようにしてアポを取っていたのか僕が商品取引の営業をしていたときの経験を交えてお伝えしようと思う。
まず初回、1回目の電話ではアポ取得を目指すことは無い。初回の電話では何者かを伝える、相手に話しをさせる、距離を縮める、このあたりを意識し、せいぜい10分くらいの会話にまとめることがポイントだ。
会話の最後に
「いつでも儲かる訳でもないので、もし良いタイミングがあればお声がけしますね。」
といって電話を切る。
相手はおそらく投資の勧誘なのにやけにあっさりしているなという印象だったと思う。
では、次にいつ再度電話をかけるのか、気になるところだろう。
答えは
翌朝8時!。そう次の日の朝8時から鬼の電話の開始だ。
この翌朝の電話はアポ取りを目的とする押し込み型の電話だ。リーダーが朝礼の後に前日にメンバーが取得したA〜Dの予約表(会話のやりとりが記載された紙)を元に、メンバーになりすまし1件1件電話をしていく。
例えば僕の予約であればMASKの名前で前日電話しているので、リーダーは以下のようにコールする。
「昨日お電話しました○社のMASKです。朝からお電話差し上げて申し訳ございません」と伝える。ちなみに昨日と声が違うね、と言われることは100件中1件くらいしかない(爆
その後の展開はこうだ。
「実はですね、昨日お電話でお話した原油の価格が産出国である中東某国で大規模なストライキが発生し、原油の価格が大暴騰しておりまして、それをみて三井物産、住友商事といった大手商社が一斉に買い占めにかかってる状況なんです。○様も今この商社と同じ動きをすれば2週間、いや1週間でご資金が2倍、2倍(強調する)にはなります。」
ここまで相手に一言も話しをさせない、考えさせないくらいまくし立てるように早口で進めることが重要だ。さらに続けて
「その状況を見て私は朝から○大学(名簿次第)のご卒業生の方に一斉お電話さしあげているんですぅぅ(叫ぶようなトーン)。○様は昨日お電話で初めてお話ししただけだったので正直お話ししようか迷いはあったのですが、初めての方だからこそご資金を増やしていただきたと思っておりまして、失礼を承知ながら朝からお電話させていただきました。」
「昨日お伝えしたとおり、いつでも儲かる話しではありませんし、一刻を争う話しです。ちなみに○さんは今日のご予定はどのようになってますか」
ここまできて、ようやく相手が言葉を発する機会を与える。時間があるかどうかは相手次第だが、とにかく相手に考えさせない、誰かに相談させないが重要なのでなんとしても最短でアポを取りに行く。ちなみにアポが取れないとリーダーは副支店長や支店長に叱責を受けることになる。
相手の返答のパターンは基本的に決まっている。その返答パターンに応じて以下のように回答をしていく。
「今日は時間がない、用事がある」→お昼は食べますよね? お昼の10分で構いません。
「仕事だから」→場所を聞いて実は別のお客様と予定がありすぐ近くにいる。
こういう感じで会うというところまで無理やり持っていくのだが、ほとんどがそんな急に言われてもすぐに決められない、お金は無いと言ってくる。しかしそんな返答は想定どおりだ。
「もちろん、すぐに契約してくださいという話しではありません、まずはお話しだけでも聞いていただきたいのです。その上でご判断してもらって結構ですから」と少しの安心感を与える。
そうするとアポを嫌がっていた人が、会うだけですよ、とガードが下がるのだ。
ちなみに会って契約を取れないは許されない。何がなんでもその日中にハンコをつかせる。その日に会う見込み客のハンコは当然のことながら持参。オフィスにはありとあらゆる苗字のハンコがストックされているのだ。事務員に名字を伝えればすぐに手渡ししてくれる。
尚、実際に会ったときのよくある断り文句にはハンコが無いというセリフが多い
「今日はハンコ持ってないんだよね」
「あ、大丈夫です。ここにありますから」
といってその見込み客の名字が刻まれたハンコを差し出す。
そうなると今日ハンコを持っていないことが理由で契約できないというロジックが成立しなくなるので、ほとんどの場合が捺印してしまうのだ。
人間というのは自分が今言ったことを即座にやっぱり撤回、今のは無しとはいえない性質を持っている。その性質を徹底的に突くのが我々ソルジャーのテクニックなのである。
このようにして、今しかない、でもまだ信用できないと思うから話だけ聞いて欲しい、というトーンでアポイントを取り付けていく。
朝のプッシュコールでアポが取れないケース
朝8時からのプッシュのテレコールは前述したように前日のメンバーの予約表を用いるのだが、このA〜Dランクの中にはクソみたいなもの(可能性がゼロ)のものも含まれている。
可能性がゼロのところに電話すると
「しつこいんだよ、二度とかけるなと言っただろう」
このような反応が返ってくる。メンバーが追い詰められて昨日ガチャ切りされているにも関わらず、予約はD1件です、などと嘘の報告をしている場合がこのケースだ。
当然のことながらメンバーは朝のリーダーからのテレコールで昨日ガチャ切りされたときと同じか、それ以上の強いトーンで罵声が返ってくることがわかっているので何とか電話に出ないでくれとただただ祈るのみである。
しかし運悪く、電話が繋がってしまうケースも多く、リーダーは罵声を浴びると同時に受話器を机に叩きつけ、
「MASKテメーふざけんなよ、これで何で予約にあげてんだよ」
と叱責を受けるのだ。リーダーの機嫌が悪いと即座に今すぐテレコール開始しろと、他のメンバーがリーダーが前日の予約をテレコールしているのを聞いている中、一人名簿をみながらテレコールを開始するのだ。
尚、実際にちゃんとした予約、つまり昨日良い会話が出た相手でも翌朝になると態度を急変し断りを入れてくる客もいる。当然言い訳もするがそんなことは通用するはずもなく、叱責を受けることになる。
なかなかアポが取れない客
儲かる、今しかない、まず話しだけ、と言っても煮え切らない相手が多いのも事実だ。そういう相手に対しても何度も切り返しやプッシュを行う。多用されているトークをいくつか紹介すると
「A銀行からB銀行に預け先を1週間変えてもらうだけ、そう思ってください。それでご資金が2倍以上になります。(完全に違法w)」
お金がないという客にはプライドを付くトークでせめる。これは前日にヨイショした相手にのみ利用
「○様くらいのお方であれば100万や200万動かせない金額じゃないですよね?、私のお客様では身内からもお金を集めて一気にご資金を増やしてる方もたくさんいますよ。」
あの手この手のトークを繰り広げていく訳だが、基本的にアポイントが押し込める相手というのは傾向がある。
エリートは難易度が高い、情弱の弱者か、良い人を狙え
基本的に現在進行形で民間企業で働いているような人は顧客になりにくい。経済感覚もあれば情報も持っている。そんな甘い話にはそうそう乗ってこない。
では誰か狙い目か。それは自営業、先生、高齢者。これがトップ3だと思われる。この中で相手を断れないタイプと、何らかの劣等感を持っているタイプが特に顧客になりやすい。
特に相手を断れないタイプは、安心させ、逃げ場を用意してあげれば多くの場合が契約を取れる。
「こんな場面で断る人はいない、断るなんていうのは○さんだけですよ」
強い口調で上記のようにプレッシャーをかけてその次には
「大丈夫です、ご安心ください、銀行の預け先をほんの少しだけ変えてもらう感覚で良いですから」
と優しく伝える。概ねこんな感じでトークを行っていけば当日捺印まではもらえる。あとは地獄を見るだけだ。
例えるなら戦争が近いかもしれない
正直、本意ではないのに捺印までしてしまうところを見ると、痛まない心がない訳ではない。この人たちはお金が増える、苦しい生活辛くになる、そういうことを夢みて契約をするのだ。しかし実際は証拠金の追加をどんどん求められあげく、親戚にまで金を無心するようなところまで追い込まれていく。
投資は自己責任といいつつも、やってることは人を騙してることとしか言いようがない。こんな仕事をして一体何になるのだ?
しかし、これをやらなければ自分が徹底的に日々毎時間追い込まれ、罵声を浴び叱責を受け続けることになる。
つまり、やらなければ自分がやられるという感覚だ。良いことではないと思っていても、やらなければやられる。一部の狂った人間以外はみんなそう思ってやっていたと思う。
戦争だって最前線にいる兵士たちは大半は相手を殺したいとは思っていないはず。
同年代の中では高い給料をもらえていたのは事実だ。しかしその金は人を不幸にして得た金であるのは紛れもない事実だ。
上層部にしても養う家族がいたり、この仕事以上に稼げる仕事につける可能性はなかったりとそれぞれの事情がある。そうなったのは自己責任ということは簡単だ。
これはこういう仕事を存在させてしまった社会の問題だとも言える。少なくとも僕のいた会社は財務状況もよく、数字や事業内容だけを見れば真っ当な会社に見えてしまっていた。資本金だってうん十億で、上場までしていたのだ。
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