思い出を結晶化していたのと同じことだ。 『琥珀の夏』辻村深月
皆さまこんにちは。
今回も大好きな辻村深月先生の作品を読了したので感想や考察など書いていきます。
またもや読みやすさ重視ではなく、つらつらと思ったことを書きしたためるスタイルとなりますm(__)m
あらすじはamazonから引用させていただきます。
ミライの学校という宗教的な組織に子供の頃からいるミカと、そこに夏合宿としてやってきたノリコの物語です。
印象に残った点
今回は印象に残った点について考えたことをまとめます。
ネタバレの要素も多少あるので、ご注意ください。
①幼少期の頃からカルト集団にいるミカの苦悩
カルト集団なのかは明白にはされていませんが、おそらくそういう立ち位置の「ミライの学校」。
物語上では、そこで販売された水に不純物が混ざっているのが問題になって、悪い団体だという印象が全国に広がりました。
大人になったノリコは、小学生の頃ににミライの学校に通っていたことを夫に話すと「聞いてないよ」と焦る描写がありました。
どうやら、その組織の信者なのかと勘違いをしたからでした。
ノリコと結婚した自分もその信者だと思われると困るから、そのような発言になったようです。
現実世界でも、宗教団体が事件を起こしたことは記憶に新しいです。
私にとってはそれが幼少期の出来事だったので、同じ世代の人は宗教は悪いものという印象がある人が多いような印象があります。
ノリコは実際に体験してみて子供心にはすごく良い環境だと思っていたのに、世間体的に誰にも言わないように勧められてしまいます。
反対意見を述べようとしても擁護していると捉えられてしまうため、上手く言えないもどかしさ。
私自身は宗教についてあまり詳しくない立場なのではあるのですが、そういった信じるものがあったほうがメンタル的に良いと何かの本で読みました。
日本だと割と無宗教が多いですが、外国だと結構信仰心が強いことも多く、悪い印象も少ないようです。
日本特有なのかもしれません。
少し話がずれてしまいましたが、ミカにとっては「ミライの学校」の中での生活が当たり前になっています。
まず「おかしい」と気付くのは困難であり、気づいたとしても外の生活には不安を覚えるでしょう。
なのでミカに対する感想は「かわいそう」でした。
しかし、幼少期のノリコも同じような感想を言って自分の物差しで測るなと言われていました。
宗教のことや、当たり前のことについて考えさせられる描写でした。
②みんなの人気者のユイちゃん、地味だけど気の合うアミちゃん
ノリコは、学校のクラスの人気者のユイちゃんに誘われて一緒にミライの学校の合宿に参加することになります。
クラスに馴染めていないノリコは、ドキドキしながらもユイちゃんとお話しするだけでも嬉しい気持ちになります。
ただ、話が合わないのではないかとヒヤヒヤとする場面もしばしば。
一方、合宿の班で仲良くなったアミちゃんは、苦手なアイドルの話をしなくて、まだ居心地よく感じていました。
ただ、「自分と仲良くしてくれるのはこういった地味な子なんだ」と落胆する場面がありました。
そこで私は小学生の頃の記憶が蘇りました。
私は人見知りではなく、お話しするのが好きなのでクラスに馴染めていないとは思ったことがありませんでした。
しかし、可愛らしい人気者ではありません。
どちらかというとお洒落ではない真面目な見た目だったと思います。
普段は仲良くしているのに、いつもスクールカーストの上位の女の子が近寄るとそっちの方に行ってしまう子がいました。
何故だろうとずっと疑問に思っていたのですが、この描写を読んで納得できました。
大人の世界でもそういったことがあるかもしれません。
差別のように感じるので、これからも私はしないように心がけようと思っています。
一緒にいて、心が苦しくなる相手ではない限り。苦しくなったら無理をしないで。
もっとたくさん書きたいところですが、本一冊ほどになってしまいそうなので、ここまでにしますm(__)m
余談にはなりますが、いつも辻村先生の作品を読むと、主人公に感情移入してしまいます。
境遇が似ているわけではないのに、なんとなく自分のことを書かれているような感覚に陥るのです。
他の作家さんの本のときにはあまり感じたことがないので、とても不思議です。
そういった経緯もあって、辻村先生の大ファンとなりました。
気になる方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか^^
私は今度、同じく辻村先生の『凍りのくじら』を読む予定です。
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