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福田村事件こそが実写版「デビルマン」だ!(ネタバレあり)

 先月くらい前のこと。マイナーな映画に詳しい職場の先輩から「『福田村事件』って知ってるか?面白いらしいぞ!」とオススメされた。半年くらい前には『茶飲友達』を勧めてもらったが、公開している劇場の都合で見に行けず…
 前回見れなかったことが、今回は丁度いい時間の映画館があったため、見に行った。タイトルにもある通り「これは漫画『デビルマン(作者 : 永井豪 1972~73年)』を実写映画したものだ!」と感じた。補足しておくと、伝説的クソ映画の実写版『デビルマン(2004年)』みたいに酷かったという訳ではない。むしろ今年公開の邦画ではトップに食い込むほどの作品だと感じた。

以下ネタバレありの感想になります。映画未見の人はお気を付けください。

 物語は主人公とその妻は千葉県にある『福田村』に帰郷して生活を始めるところから始まる。数日後に関東大震災が発生。町中が不安に駆られる中、「朝鮮人が井戸に毒を流した」、「〇〇の火事は朝鮮人のしわざだ」という噂が流れる。ちなみにこの情報が真実かどうかは不明なものの、デマらしい描写は多々あった。そんな中、国から(県からだったかもしれない)「朝鮮人から自衛するように」というお達しが出る。


福田村は現在の千葉県野田市にあるらしい


 時は同じくして香川県から10人ちょっとの行商人が薬を売るために、福田村を訪れていた。彼らは村人が聞きなれていない方言で話していた。それがきっかけとなり「こいつらは朝鮮人では?村を襲いに来たのでは?」と疑いをかけ始める。「お前らは朝鮮人か?」「違う、香川から来た」「言葉遣いが変だ」と言い争いに発展。朝鮮人に襲われるかもしれないと思った村民の一人が行商人のリーダーを殺害から始まり、数人殺害してしまう。途中で彼らは香川から来たことが判明するが、時はすでに遅かった…

 これはフィクションではなく、実際に起きた事件なのだ。現代では民族や国籍を理由に差別は決して許されたことではない。昔だから許されたのかもしれないが、これは間違ったことだと思う。しかも、勘違いで同じ日本人同士が殺しあうという悲劇だからやるせない。
 スクリーンでポップコーンを食べながら「こんな作品どっかで見たな…デビルマンだ!」と思った。

 漫画デビルマンの終盤は人と敵のデーモン(悪魔)の違いがわからなくなり、「お前は悪魔か?人か?」と人々が疑心暗鬼になる。主人公はデーモンの力がありつつも、人間の心を持った「デビルマン」なのだが、世間は知ったこっちゃない。デビルマンもデーモンもみんな「悪魔」としか捉えていない。
 主人公がデビルマンであると世間に知られるとそこから本当の地獄が始まる。ヒロインは主人公と共に生活をしていたことで「こいつは悪魔の手先だ」と疑いをかけられ、一般市民に殺されてしまうのだ。しかもこの子は悪魔でもなんでもない、ただの人なのに…最後は生首を晒されるシーンは有名で見たことがある人も多いかもしれない。人が人を信じられなくなったら、終わりなのだ。

悲惨な目にあうヒロインの美樹

 コロナウイルスが流行ったときも現実でおなじようなことが起きた。「お前マスクしていないな」「この前県外に外出してただろ」「ウイルスを持ち込みやがって」と感染した人を必要以上に叩く風潮があった。特に田舎に行くとこの傾向が強かったと思う。現代でも映画と同じようなことがまた繰り返されようとしていた。こんなときだからこそ、人と人が信じあうことの重要さを改めて教えてくれた作品なのではないか。

 日本人同士の過ちや、負の遺産について知りたい方はぜひご覧ください。作品としてのクオリティも高く、伏線回収も素晴らしいです。今年公開された邦画ではトップクラスの名作です。

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