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JUNK FILM by TOEIを楽しく観る方法vol:07 「大奥浮世風呂」

時代劇を観てると「ホントに昔の人はこんなに折り目正しかったのかよ?」という疑問が湧いてくることはないですか?戦国大名とかもいかにも厳めしい政治家ぶった感じではなく、実態はもっと下品にガツガツして・・・ん?下品にガツガツしてるといえば何といっても当時の東映の俳優達!

というわけで、そういう体質の東映が時代劇を撮ったら傑作が出来てしまった、というのが今回の「大奥浮世風呂」関本郁夫監督、1972年の作品です。

何といっても最初で最後の主演作?の志賀勝さんがイイ!勤労意欲のカケラもない「今日が良ければそれでイイ」を体現したかのような存在感。スキンヘッドが似合いすぎる汐路章さんの好色(男色)坊主から逃げ惑う風戸佑介さんをニヤニヤしながら眺める楽しそうな態度。演技なのか、演技でないのか、その二項対立が馬鹿らしくなってくる佇まいが素晴らしい。初の主演なのに気負いゼロ!風戸さんって「暴走パニック 大激突」の時も似たような感じで男に襲われそうになってた気が。ツルンとしたイケメンが東映に入ってくるとこういう扱いを受けるらしいです!

で、何とか故郷に戻ってきた志賀さんですがその集落の猥雑かつエネルギッシュな風情がまた素晴らしい。差別問題が絡むデリケートな話題ですが、大抵彼らのような存在が作品に出てくると、侍や百姓にいじめられて・・・みたいな啓蒙的なノリが前面に出てきますが、この作品ではみんな楽しそうにどんちゃん騒ぎを繰り広げています。日本にしか見えないけど、どこかジプシーのような風情さえあって、なかなか貴重。若手実業家が領土拡張戦争に邁進している風の時代劇では絶対にさらえない歴史上の現実なのかもしれません。

そして風戸さんもこの集落に連れてこられ(拉致気味)ますが、岩尾正隆さんに一目惚れされて手荒い求愛を迫られてしまいます。岩尾さんって「新仁義なき戦い 組長の首」の時も似たような感じで稔侍を襲ってたような気が。いかにもコワモテの風貌の人が東映に(以下、ループなので省略)。

そんなその日暮らしを謳歌している人たちの中にも上昇志向のオンナがいた!「愛のコリーダ」で一躍有名になった松田暎子さんです。こんな環境でホントに武家の養女?大奥へ?って疑問をしたたかさと情の濃さを両立した風情でなんとなく抑えられたような。決して万人が好きそうな美人ではないけど腐れ縁の志賀勝さんをコキ使っても違和感の無い存在感が良い!

てなわけで己の肉体(というか脱ぎっぷり?)で大奥内出世街道を突っ走る松田さんに誘われて爆笑必死の女装姿で大奥に乗り込む志賀勝さん。乗り込んだ先はトイレ。祖父母の家とか子供の時はまだ旧式の・・・なんて言うんだろ、とにかく臭いというより刺激臭のあるトイレも体験しているオイラからするとめちゃくちゃハードな場所で待機する志賀勝さん。目的は蛇を使って将軍の寵愛の深い&懐妊中のひろみ摩耶さんを驚かして流産させること!とにかくそうやって上(便器)を見上げてひろみさん(といえば良いのか摩耶さんといえば良いのかややこしい芸名やで)を凝視する志賀勝さん。同様のシーンはこの後もあるんですが、この映画を観てトイレ盗撮魔になった奴がいないかが心配・・・。用便中、という事を忘れて彼女に夢中になるのも無理ないかもなあ、なんて思わせるくらいひろみさんの美貌は現実離れしていて、あり得ないような状況もなんとなく納得させてくれるような。

ひろみさんは結局松田さんの奸計にはまり、流産→発狂→放逐という転落コンボを食らい、ついでに将軍の菅貫太郎もインポになっちゃいます。というか菅さんのチンケな(誉めてます)将軍役も実にイイ!顔だけ見ると整った顔立ちだけどインテリかつ陰湿な悪役を数多く演じてましたが、今回の小市民的な将軍役も菅さんだから印象に残ったというか。浮世風呂=トルコ風呂も実に楽しそうに堪能していました・・・。

で、ラストシーンはそんな菅さんのチンポが哀れにも・・・って、オイラが畏友ムーニーマンさんと撮った「Kenji」のまんまじゃないか!ってこの作品を観てから思いついたのかそうではなかったのか・・・まあ誰もが思いつきますが実際にやろうとはしない事なので。まあ「Kenji」もそのオチだけは最初から決まってたか・・・。気になる人は観てみましょう!

と、自作の宣伝をしている場合じゃなく当時の下層階級をイキイキと描いたこの映画、いわゆるスターと呼ばれる俳優がいなくて撮影所内での序列も決して上の方ではない、しかしギラギラしたメンバーが結集したのも成功の大事な要因かもしれません。70'Sってヤケクソで素晴らしすぎます!





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