豪華!柳町監督二本立て(1)「ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR」
1976、柳町光男監督のモノクロのドキュメンタリーです。素材はまだ登場し始めたと思しき暴走族の青少年たちです。
映像は16mmかな?ザラザラとした感じですが、暴走シーンなどは複数のアングルで細かくカットを割っています。映像もリキが入ってますが、バイクの音が実にクリアに録音できている。低予算感も漂う感じ(失礼…)なのに、これは期待できる!ものすごい抗争シーンとかあるんじゃないか?と期待していましたが、なぜかNHKドキュメンタリーっぽい地味な作りへ展開。
しかし、最初いかにも不幸そうな族の両親のインタビューでしたが、話しているウチに「警察だってねえ、すみませんとか謝ってたんだから、息子の逮捕は見せしめですよ!見せしめ!」などと興奮してくる辺りの勢いがおかしい。
その他、新入りメンバーの歓迎会を喫茶店みたいなとこでやっていましたが、ことごとく学校中退、無職。「無職やってます!」っていうやってんだか、やってないんだか分からない自己紹介に思わず失笑。
興味深いのは「暴走族」っていうと思い浮かぶ特攻服の類が一切出てこない所。カーディガンとか着たりしてて結構オシャレというかトッポイというか。あの漢字でグラフィティを描くセンスとか、そこら辺の源流に興味が湧きました。一体どこから・・・?
映画の中でも「オレたちブラックエンペラーはツーリングチームなんだからよお」みたいなセリフもありました。自己規定としては俗にいう「走り屋」寄りだったんですね。警察の取り締まりにしても最近みたいな「根絶やしにしちゃる!」みたいな感じではなく微温的なというか親戚のおじさん的というか。まあ「おなじ日本人だし、表面上は敵対してるけど話せばわかるよね」という現代では失われた感覚を感じ取れました。なにかっつーと、犯人捜しをして存在を消してしまう程に攻撃しまくる現代・・・なにか間違ってねーか、と思う訳です。
基本的には前後関係をぶったぎって「シーンそのまま」を刺身でドンッとカウンターに置いちゃう柳町監督のぶっきらぼうなセンスもなんか不思議で中毒性があります。インテリっぽいわけでもなく、「暴走族を撮っててもオレはホントはヨーロッパ志向なんだからね」みたいな鼻持ちならない感じでもなく、本人の体質をむき出しでご開帳してるスタイル。不幸そうな中年女性が一心不乱に唱える念仏と「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」をmixする極悪DJっぷりにも大いに笑わせられました。
暴走族の子たちは基本的には空前の繁栄を迎えつつある昭和日本の青少年だから「NO FUTURE!」なんて青筋を立ててガナる感じでもなく、「なんとなく将来の事なんて考えるのだりーや・・・」っていう愛すべきボンクラたちなんですが、総長ともなるとさすがにシッカリしてる。栃木からきた別の族を歓待するように配下に命じたり、ラストでのウソ泣きだけで全てを乗り切ろうとする少年への圧の掛け方だったり、今では大物になってるんだろうなあ・・・。
と、柳町監督の不思議ちゃんなセンスであまり前面には出てきませんが、昭和のドラマだったり、昔の学校の先生の言い草だったりを思いだせる今では失われかけた感覚にも満ちています。業界によってはそのまま残ってたりもするんでしょうが・・・。その村に入り込んでうまく立ち回れている分にはいいのでしょうが、価値観を共有できないと息苦しくて仕方のないあの感じ。
この映画を観終えて、畏友ムーニーマンさん
に感想を伝えたら「柳町監督?!ボク、彼のダンプの映画観た事ありますよ!(小声で)暗いけど・・・」
という訳で、柳町監督の恐ろしい劇映画「さらば愛しき大地」を観てしまったのでありますが、これに関しては二本立てのパート2で!
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