『いつの空にも星が出ていた』
やっぱりこの人はすごいなあ。
『いつの空にも星が出ていた』佐藤多佳子
物静かな高校の先生、予備校に通う女子高生、家業の電気店を継いだ若者、少年野球のピッチャー、洋食店のシェフ―一見つながりのない人たちを結んでいる、強くてまっすぐな気持ち!なにかを心から「好き」でいる、すべての人へ贈る爽快な感動!!(Amazonより)
勝手なイメージだったけど、『一瞬の風になれ』とか、しっかりとした取材を土台に当事者の心象描写が素晴らしいと思ってたけど、今作のあとがきを読んで、『明るい夜に出かけて』のように、作者個人として情熱を注いでいたもの、好きなものに対する真摯な姿勢が根本にあるんだなと改めて気付かされた。
ホエールズ・ベイスターズを軸に、時代時代のファンに焦点を合わせた短編集。その時代のチームの強さもエピソードの大事な要素になっているし、それまで積み重ねてきた栄光や敗北の歴史も前編を通して何度も何度もリフレインしてくる。
チームの成績や勝敗は事実で、人物ごとのエピソードはフィクションで、現実と虚構が入り混じった、むしろそこも気にならないほどにリアリティを感じさせてくれた。
各々の野球・チームへの向き合い方があり、熱狂的に好きだったピークを過ぎても心の中に種火みたいなものは残っていって、それぞれの寄り添い方と距離感でこれからも付き合っていく未来みたいなものが想像できて素敵だった。
いつもそうなんだけど、作者の書く物語ってすごくすんなりすいすい入ってくるんだけど、読み終わったあとは心地よさという満足感に満ちあふれていて、どんな気分のときにも読める作品だなと思う。
これからも作者の好きなことに対する愛情に満ち溢れた作品を読んでいきたい。
最後に、タイトルが素晴らしすぎる。
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