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『塀の中の美容室』

ずっと気になってた作品。

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『塀の中の美容室』桜井美奈


『ご』と入力すると『ゴメン』と出てきて…『ゴメン。今日も仕事でダメになった』の一文ができあがる―。激務が続く番組制作会社で働く芦原志穂。彼女は今日も恋人にデートのキャンセルを告げるメールを打っていた。最近では「次はいつ会えそう?」というメールすら届かない。そんな中、志穂は上司からの命令で、刑務所の中の美容室を取材することになるのだが―。彼女たちは、なぜそこに髪を切りにいくのか。刑務所の中で営業を行う美容室を舞台にした、感動の連作短編集。(Amazonより)


受刑者が刑務所内で開いている美容室の物語。

思っていたよりも重苦しさはなく、サクサク読みやすい作品。

短編ごとに女性たちはそれぞれの理由で美容室を訪れ、コミュニケーションをふんだんに取ることはできないけれど、何かを背負って懸命な眼差しで仕事に打ち込む主人公の姿に何かを感じ取って店をあとにしていく。抱えていたもの全てが解決するわけではなく、劇的な変化は訪れずに過ごしていきそうなこれからに対して、ちょっとだけ荷物を軽くしてくれるようなふれあい。

また物語の核が描かれている第六章では、加害者の親族という一種の被害者としての視点でも描かれていて、ストーリーに新たな膨らみがあった。第四章の「髪を切っても、ラプンツェルは幸せになったんです」という部分が効いてくる最後は感動があった。

個人的には知らない世界を教えてくれた作品だった。

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