『あの夜を覚えてる』
観終わった後の多幸感。
『あの夜を覚えてる』
“君が踊り、僕が歌うとき、新しい時代の夜が生まれるー”
1967年のとある夜に始まった「オールナイトニッポン」。
楽しかった夜、寂しかった夜、不安な夜。
どんな夜もラジオから聴こえてくる声は、すぐ側にあった。
2022年。55年の月日が経ったある夜。
今宵も「オールナイトニッポン」の放送が始まる。
キューが振られ、パーソナリティがカフを上げれば、
真夜中のブースが、ラジオの前のあなたと繋がる。
しかしその番組には、誰にも言えない秘密があったー。
舞台は有楽町、深夜のニッポン放送。
すべてのラジオリスナーに贈る「あの夜」の物語。
ラジオ好き、オールナイトニッポン好き、佐久間宣行好きとしては見逃せない作品。
生ドラマって方が合ってるかもだけど、初めて演劇を観た。
感想としては、ただただ「ラジオ好きで良かった」と心から思える幸福感に溢れる140分だった。
ラジオ局をそのまま舞台にした生配信っていうのも面白くて、企画自体のワクワク感・ヒリヒリ感もすごく良かったけど、シンプルに物語としてとても好きだった。
リスナーとしてのラジオ愛、盲信、美化しすぎてしまっているが故のショック、それでも結局はパーソナリティの人間性にどうしようもなく惹かれてしまっていることを自分含め観た人は再確認したんじゃないか。
またそのこととは対照的に、もちろんフィクションなんだけど、届ける側の現実と追い求める理想の間での苦悩や努力、喜びを知れてとっても良かった。流れゆくものであるため、聴いている時は楽しみが先行してしまい、裏側のことまで思いを巡らす機会って中々ないから。
各パーソナリティのちょっとした出演や仕掛けもグッと来て、特にやっぱり星野源の歌が、現在のオールナイトニッポンにおける必要不可欠であることを改めて思い知らされた。
”音の中で 君を探してる 霧の中で 朽ち果てても彷徨う
闇の中で 君を愛してる 刻む 一拍の永遠を
歌の中で 君を探してる 波の中で 笑いながら漂う
今の中で 君を愛してる 刻む 一拍の永遠を 刻む 一粒の永遠を”
音楽への想いを綴ったものであるとはわかってはいるけど、劇中ではラジオという電波を通してリスナーに向けられたなにかであるように感じてしまった。
そして、ディレクター役の方もミキサー役の方も、髙橋ひかるも良かったけど、今まで知らなかった千葉雄大の凄さをこれでもかと見せつけられた。第一幕のパーソナリティとしてもがきがらも精一杯やっている感じもいいけど、やはりラストの部分。生放送であれだけの感情の発露を見せられると否が応でも受け手は揺さぶられるものがある。
ラジオ好きはもちろん、仕事への矜持という部分ではラジオに興味がなくても、たくさんの要素や仕掛けが詰め込まれたエンタメとしても最高な作品なので是非観てほしいし、DVD化してほしい。
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