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闘牛は何しに日本へ?


久しぶりにサッカーに関する記事を書きたいと思います。

松本です。


今回は、つい先日、報道のあったレッドブル社の
大宮アルディージャ(以下、大宮)経営参画についてである。

2月ごろに初めてレッドブル社と大宮の関係が報道された。
そして、6月中旬に、レッドブル社の、大宮への経営参画が
あらゆるメディアで報じられた。

また、2月においてはレッドブルグループの横断的な役割を担うSDのマリオ・ゴメス氏が大宮の試合観戦に来ていたという情報もあった。

今回はレッドブル社経営参画後の大宮を考察するため、
レッドブルグループと、大宮の類似する事例を取り上げたうえで、
経緯についてもまとめていきたい。

大宮アルディージャの現在地


大宮アルディージャに関して言うと、私よりはるかに詳しく
熱狂的な人間も存在するので、少し情報は割愛する。

大宮アルディージャは埼玉県さいたま市にホームタウンを置く
現在J3のサッカークラブである。

また、長らくJ1にいたが、多くが残留争いを経験するチームだった。
同じ街には、J1の雄、浦和レッズもおり、
激しいダービーマッチを展開する。

運営の大元はNTTグループのNTTスポーツコミュニティ株式会社である。
なんの脈絡もない説明であるが、補足は個々人にお願いしよう。

闘牛が来る



J3リーグのトップをひた走るクラブに、闘牛が接触したのはいつ頃なのだろうか。
というか、なぜ・・・?

という疑問は横道に逸れる誘惑になるので、一旦おいておこう。

世界的なエナジードリンク企業であるレッドブル社はご存知の通り、
シティ・フットボール・グループ(CFG)と同様、
マルチ・クラブ・オーナーシップ(MCO)を展開している。

CFGはイングランドプレミアリーグの覇者
マンチェスター・シティをトップに据えるピラミッド構造であり、
13ものクラブが傘下、パートナーシップを組んでいる。

レッドブルグループではRBライプツィヒがカテゴリー上トップの立場を取るが、ピラミッドという訳ではない。感覚的ではあるが、CFGとは違った構造であると私は考える。ただ、そこは今回そこまで重要ではないので、
これもまた割愛する。

レッドブルの場合、エナジードリンクのマーケットを創造するというところがMCOの出発点であり、ブランドの形成を重視している。

レッドブルグループには現在、RB Leipzig(ドイツ1部), RB Salzburg(オーストリア1部), FCLiefering(オーストリア2部), Red Bull Bragantino(ブラジル1部), New York Red Bulls(アメリカ1部)が所属している。

また、日本人選手の在籍歴もあり、宮本恒靖現JFA会長、
南野拓実(現モナコ)などが在籍しており、今夏も
サンフレッチェ広島から川村拓夢選手が加入している。


MCOの原初とも言うべき、レッドブルグループは人材のリクルートメント、
スカウティング、クラブ運営の整理等をMCOのメリットとして活用している。

例えば、アメリカで発掘した優れたストライカーをNew York Red Bullsから
低予算の移籍金でRB Salzburgに移籍させたり、RB Salzburg で優れた成績を収めた監督、コーチを次はRB Leipzigで指揮を執らせるといった人事も可能になる。


実際、ヨーロッパの市場に出回る監督や選手の中で、レッドブルグループに
所属していたということは珍しくない。
特に、ドイツの監督にはレッドブル出身の指導者が多かったりする。
現クリスタルパレスのグラスナー監督、モナコのヒュッター監督、
ハーゼンヒュットル氏、ドイツ代表のナーゲルスマン監督、レッドブルスタイルの生みの親、教授ラングニックなど名の知れた監督陣がいるのだ。

現在、レッドブルをはじめ、CFGなどMCOが一般化しており、
世界の180クラブはMCOに所属していると言われている。


シティ・フットボール・グループ 傘下クラブ

日本との関わりとしては、横浜・F・マリノスがCFGに入っており、
また、レッドブル自体もセレッソ大阪とスポンサーシップを締結していた。
ただ、Jリーグでは、外国企業がクラブの筆頭株主になることを許容しておらず、マリノスには少数株主としてCFGが存在する。
その効果は甚だ目を見張るものがあり、
昨シーズンまで監督を務めていたケヴィン・マスカット氏や
現トッテナム・ホットスパーの監督を務めるアンジェ・ポステコグルー氏も
CFGの人事経路を通っている。

話を元に戻すと、大宮にレッドブル社が経営参画した場合、
そういったスタッフ人事、経営の立て直し、施設の強化そして結果的に
J1リーグへ舞い戻っていくというストーリーが完成するのか、ということである。
ただ、レッドブルグループの原則としては、
クラブの名前、クラブエンブレムをレッドブルに合わせなければならない。
どのクラブもRBが付いているのだ。

2月に、大宮とレッドブル社の関係が報じられた時、
大宮のエンブレム、クラブ名が変わってしまうのではないかと心配の声が上がっていた。もちろん、愛するクラブが変化してしまうことに拒否反応が出ることは当然であり、ファンなら声を上げるべきだろう。

では、大宮はどうなるのか。
その話の前に、他の実例を出そう。

Leeds Unitedと闘牛


2024年4月ごろ、遂にレッドブルグループがイングランドに
勢力を伸ばす、という報道が出た。

具体的には、イングランド、ヨークシャーに位置する古豪リーズ・ユナイテッド(イングランド2部)にレッドブル社が出資するということだった。

リーズは今シーズンこそチャンピオンシップではあったが、
数年前には狂人マルセロ・ビエルサがオールコートマンツーマンを引っ提げ、16年ぶりとなるプレミア復帰を果たしている。

リーズのオーナー企業は2023年よりアメリカの
49ers Enterprisesになっており、その49ers Enterprisesのオーナー
Paraag MaratheがリーズのCEOを務めている。

49ers Enterprisesは他にも、サンフランシスコにアメフトチームを持っており、Marathe自体がフットボール部門の副社長を担い、チーム契約のネゴシエイター、サラリーキャップアーキテクトさらにはサンフランシスコの
Levi's stadiumのマネジメントも行っている。
つまり、バリバリのスポーツクラブに特化した人間である。

また、リーズの経営陣にはほかにも
アーセナルのhead of marketing、ウェストハムSD、リーズSDを歴任してきたAngus Kinnear、49ers Enterprisesの投資家であり、SalesforceやGucciなどのadvisory boardsを務め、Hapoel Tel Aviv(イスラエル1部)の共同オーナーを務めるRudy Cline-Thomas、資産家のPeter Lowyなどが名を連ねる。

つまり、マネジメント、クラブ経営、コネクションのプロフェッショナルが
集まっているのだ。

ここにレッドブルは経営の入る余地があるだろうか。

経営的参入余地は、ほとんどないと言えよう。

そもそも、レッドブル社は少数株主としての立場を崩さず、
さらには、Maratheは
「クラブのアイデンティティ(クラブ名、エンブレム)は
変化することはない」と言い切っている。

グローバルコミュニティとしてのレッドブルグループをリーズが求め、
推測だが、レッドブルはイングランドのマーケットを求めたのだろう。

エナジードリンクの市場分析はこの場面では有効であろう。
だが、具体的な数字が出てこない。
事実、イギリスではレッドブル社はトップシェアではない。
日本も同様である。

リーズ側のメリットとしてPSRの回避である可能性も否めない。
イングランドのクラブに適用される「収益性と持続性に関する規則(PSR)」のことを言い、財政悪化が招く破産が相次いで起こったことや
リーグ内の競争力維持のためのルールとして作られた規則である。

昨シーズン、エヴァートンやノッティンガム・フォレストの勝ち点剥奪の原因となった規則として話題に上がり、直近もプレミアリーグ内での規制強化が議論されたという。

その中の一つに、1シーズン70億円、3シーズンで200億円を超える損失を出してはいけないという条項があり、リーズもその逆風に晒されている。

リーズは昨シーズン、降格し、1年でのプレミア復帰を目指していたため、
選手売却を積極的に行わなかった。
その結果、ここ2年間ですでに、130億円ほどの損失を出してしまっている。

先日、レッドブルのロゴがリーズのユニフォームの前面を飾ることが発表され、私はほとんど確信に変わった。
レッドブル社の資本流入は、PSR問題の回避に少なくとも寄与している。

だから、リーズのクラブ名もエンブレムも変化しないのだ。

また、これには、MCOの弊害についても言及しなければならない。
それは、先にも述べたように、
クラブアイデンティティの崩壊や各クラブにおける真の経営最適化の不十分さ、リーグとしての規制などが挙げられる。

どこのファンでも海外投資家へのオーナーチェンジは喜ばしくない。ましてや、クラブエンブレムや名前、プレースタイルを変更するなど尚更だ。

あるクラブで成功しているからといって違う地域のクラブでも成功するとは
限らない。クラブは地域が違えば、全て違うのだ。

フットボールは市民のものであり、ファンのものだ。
企業名という王冠で、
ファンが入り込めない宮殿に仕立て上げることは健全でない。

以上の要因も、レッドブル社からすると例外的に出資という形になったと
言える。

大宮では

大宮では、筆頭株主はNTTのままで、
レッドブル社は少数株主になることが可能性としては否めない。

リーズと同じ結果になるとは言い切れないが、
日本のプロフェッショナルの3部は、アイデンティティを壊すには
少し大きすぎる。

レッドブルグループのほとんどが、最初は
国内で存在感のないクラブだったか、比較的下部カテゴリーであった。

リーズにおいては熱狂的なファンと世界でもtop10に入るリーグである
チャンピオンシップに位置することを考慮したのかもしれない。

大宮は首都圏でもあるので、日本のマーケットを取るにも
苦労はしないだろう。

NTTの背景(NTT株)のことも考えれば、
外資受け入れのタイミングとしては完璧だったかもしれない。

我々はこの動きを注視していくべきだ。
日本に新たなフットボールクラブが誕生するかもしれない。

長文になったので失礼します。
稚拙ではありますが、
読んでくれたら嬉しいです。

次回のを考えます。
「覚悟とはッ・・・!」





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