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ちびっこ鉛筆のように

常に大量の考えごとをする癖があることに、30年と少しの間、気付いていなかった。だって頭の中は人と比べられないし。

数年前からアナログ手帳にハマり、よくノートを使うようになった。最初は何を書けばいいかもよく分からなくて、真っ白な画用紙の前に座るときのように緊張していたけど、少しずつ「なんでもないこと」を書くようにしてみたら、自分で思っていた以上にこの頭は世界に反応しているんだなとやっと気づいた。

今では家では大きめのノートを何冊か使ったり、お風呂にも耐水性のメモを置くような子になっています。

そんな中、モレスキンに合わせる筆記用具だけが気に入らないなと思っていた。去年末にポケットサイズを使い始めて、どうもペンの長さや書き心地がすんなりこない。他のノートでよく使うボールペンはこの紙には鋭すぎて、なんだかキツい文字に見えた。

あれこれ探しているうちに、ふと、短くなった鉛筆を試してみようと思い立った。デッサンの勉強で大量に持っていたから、短いのもたくさんあるだろう。でも家の中で探したら、鉛筆自体は1本しかないし、5Bだし(かなり濃くて柔らかい)、短さは丁度いいけどユニだし。少し高いけどステッドラーがカッコよくて好きだったのに。ユニはかわいいけどさ。

わたしは何か書くときは黒以外まず使わないのだけど、仕方なしに愛用していた色鉛筆も引っ張り出してみた。くすんだピンクベージュみたいな子は一番のお気に入りだった。次に短いのが青なのは意外だった。

書いてみたらお気に入りの色は馴染みすぎて読めないし、5Bの鉛筆はクレヨンみたいで思ったよりずっと好きだと思った。青もこの紙色に乗せると透き通って見えて好きになって、さっきから眺めている。

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小学生の頃に最初に持った、三角のかきかたえんぴつ。高学年に近づくにつれてシャーペンをつかうようになったけど、それまでは使ううちに小さくなっていく鉛筆を見てうっとりしていた。「がんばったで賞」みたいに感じていたんだと思う。そんな幼心を、放課後に日が落ちていくような切ない気持ちで思い出す。

鉛筆はカッターで削れるけど鉛筆削りも買おうかな。100均のオモチャっぽいのがいい。銀色のキャップもつけたい。キャラクターものの鉛筆を買って短くなるのを楽しむのもいいかもしれない。カンカンの筆箱に入れて無駄に音を立てたい。


運動会のかけっこで1度だけいちばんにゴールしたことがある。その時の運動靴を、狭い靴箱に何年も大事にしまっていた。

その頃に使っていたはずの鉛筆はどんな感じだったか思い出せない。でも、ちびっこ鉛筆を友達と背くらべしたり、赤と青が左右に分かれた鉛筆がカッコいいなんて思っていた。

鉛筆のように人生の残り時間もすり減っていく。丁寧に削っていたのに折ってしまったことも沢山あった。でもそれ以上にもっともっと何かに書きつけてきた。それが何であれ、そして誰にどう思われていようとも、そうやって今わたしもちびっこ鉛筆みたいになってきているのかも、なんて思う。

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