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No.26 繰り上げ返済したいですって? 本当にしていいんですか?

住宅ローンをお支払いの方がよくおっしゃいます。          (注:今回の記事は長文です)

「今ある200万円を繰り上げ返済しようと思います。」

「毎月3万円を繰り上げ返済に回しています。」

「60歳以降のローン残高が○○万円なのでその時までに全て繰り上げ返済して完済する予定です」

そうですか、目の前にある住宅ローンという「借金」を消してラクになりたいというお気持ちは自然なことです。よくわかります。

FPの方たちの中にも、「繰上げ返済推奨派」と「繰上げ返済反対派」がいます。

私は以前から「繰上げ返済反対派」です。

その理由を挙げていきましょうね。

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理由①借金は金利が高いものから優先して返済すべき

住宅ローンの繰り上げ返済は50年から30年くらい前まではしなくちゃならないものでした。皆さん、当然のようにされていたのですね。

経済の高度成長に伴い、インフレがすごい勢いで進み、ものの値段が上がっていました。金利も5%、7%、とかそういう高金利時代は借金は早く返すのが鉄則です。それに、借金額は変わらないのに給与はどんどん上がる時代でしたから繰り上げ返済が今よりずっと楽に出来た時代なんです。

しかし今は違います。住宅ローン金利、変動金利で0.6%とか固定金利で1%とかいう金利相場の中では繰り上げ返済する効果は薄いです。

理由②繰り上げ返済するくらいの余裕があれば、その分を積立て投資に回すべき

私の知っている海外金融商品は普通に5%から10%の平均利回りです。

仮に借入金利 初回から 1.0%で                    返済方法は元利均等返済住宅ローンで                  当初借入元金 35,000,000 円  
当初借入期間 35年 0ヶ月                       毎月返済額 98,799 円
返済済み期間 5年 0ヶ月                       現在の元金残高 30,717,646 円                        で、残り返済期間 30年 0ヶ月 の場合                                                                 

繰り上げ返済 3,000,000 円をすると 
繰り上げ返済後 元金残高 27,644,445 円となり3年4か月の返済期間が短縮され、利息は979,829円減少します。

しかしまだ、26年8か月の返済期間があります。冷静に考えると、現状では手元にあった300万円の現金が消えた!という事実があるだけです。

本当に、繰り上げ返済の効果を享受できるのは26年先なんです。約98万円もの利息を減らすことが出来たというのは、紙面上でのこと、あなたの頭の中だけのことなんです。26年先の98万円の価値はインフレによって大きく下がっている可能性が大です。仮に毎年2%のインフレ率(物価上昇率)がずっと続いたとするとこの98万円は60万円くらいの価値になります。(金融広報中央員会『知るぽると』サイトの資金シュミレーションで試算しました)

検証のため、この300万円を繰り上げ返済しないで毎月1万円づつ25年(300ヶ月)の積立て投資をしてみましょう。

5%で複利運用できると598万円ほどになります。7%で複利運用できると814万円ほどになります。このように税金を加味しても十分なパフォーマンスが国内の商品でも存在します。

それでもまだ300万円繰り上げ返済をして、将来の26年から先の利息97万円を減らして良しとしますか?

繰り上げ返済などせずに、別途積立投資で運用すべきだと思います。

繰り上げ返済した後、特にこのコロナ禍のような状況で住宅ローン契約者の勤務先の会社の業績が悪化し、リストラ、配置転換、または最悪の場合、倒産してしまった場合を考えてみましょう。

この場合、繰り上げ返済して手元の現金は少なくなっていて住宅ローンはまだ20年以上残っているとなると、ローンの支払いが出来ずに泣く泣く家を手放すという最悪のケースも考えられます。               住宅ローンの繰り上げ返済をして手元の現金を手放すべきではありません。

理由③住宅ローンには団体信用生命保険という、死亡または高度障害時にはローン支払い払込免除スキームが付いています。(フラット35などにはありませんが)

例えば、一番の悲劇は一時金500万円での住宅ローン繰り上げ返済をしたあと間もなくローン契約者が亡くなった場合、ローン契約は団信で返済が済むので、繰り上げ返済したことは全く何の効果もなく、ただ500万円は消え去り、その後の遺族の生活にも悔いを残す結果となります。

又は、ガンなどになった場合、団信にガン特約などが付いていれば安心です。この時もまとまったお金を繰り上げ返済してしまったことに悔やむことになるでしょう。

理由④もともと、住宅ローンは無理のない、払える金額で設定したはず

 賃貸でも同様に発生する住宅費です。これを無理やり無くすととてもすがすがしく気が大きくなるでしょう。住宅ローンの返済が無くなり、その分、しっかりと貯めたり、投資に回せますか?

おそらく、多くの場合は住宅ローンが無くなり可処分所得が増えた分はかなりが消費に回るのではないでしょうか?

外食?旅行?家電品?自家用車?改築?リフォーム?服飾雑貨?趣味?とそれまで我慢していた消費をすると思います。その中には無駄なものもあることでしょう。

あれ?ローン利息がもったいないから繰り上げ返済したんじゃなかったんですか?

あれ?あなた、無くした利息金額以上にお金使ってません?ということになると思います。

結局、ローンが無くなったら無くなったでその分、気が大きくなり消費にお金が回るものです。これなら、無理して繰り上げ返済することなかったなとふと思うことがあるかも知れません。

この超低金利時代に貴重な資金を手放して住宅ローンを繰り上げ返済する意味合いはとても薄いと考えます。

むしろ、大事な資金を手放さずに海外積立て投資などにしっかりと目を向けて資産形成する時だと思います。


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