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タイでのエピソード・その25

その24の続き—

とある日、おふくろが血相を変えて私の部屋に入って来た。

「どした?」

私が聞くと、母は眉を顰めてこう答えた。

「大ちゃん…死んだって。」

…大ちゃん?大ちゃんと言われても…誰の事だ?

話を詳しく聞くと、母の姉…要は叔母だが、その叔母の娘(いとこ)の子供が電車に飛び込んだらしい。

名前は大地。まだ26歳の若さだった。

飛び込んだのは私の家の近くの線路。札幌行きの特急に飛び込んだとの事。

あの大人しい大地が…そうか。

彼は親族との集まりの時、ずーっと下を向いて何も話さない様な人物だった。日頃から、抱えていたものがあったという事か。

…自殺で子を失った親の悲しさは計り知れない。

だが、私はあえて、大地の親であるいとこに色々と聞いてみた。

「大地は、何か抱えていたのだろうか?」

「…分からない。」

「…彼女っていたの?」

「分からない。何も話さない子だったから…。」

「ふーん。普段、どんな音楽聴いてたの?好きな芸能人とか…」

「どうなんだろうね…。何を考えていたのか。」

「…あいつ、将来、何になりたかったんだろうな?」

「そうね…何を思ってたのか…。」

….いやいや。下手するとお前が大地を殺したんだよ。どいつもこいつも…育てられないなら産むな。

私はそう思いながら、「あっそ」ってな感じでそっぽ向いた。

大地…辛かっただろうな。

後から検死を担当した警察に話を聞いたのだが、大地の頭部はマサカリで割られたように真っ二つになっていたらしい。あまり見ない惨状に、場慣れした警察も目を細めて彼を偲んだ。

大地が割れた、か…笑えない。

さらにその後、私は彼が、私の通うスポーツジムの会員だった事を知る。

鬱の中、何かを見出そうとして通ったスポーツジム。

私はその話を聞いて、今の私と彼を重ねた。

彼の死は無駄だったのだろうか。このまま誰の気にも留められず、あんなクズみたいな親にだけ偲ばれる様では、あいつが報われない。

…そう思ったからかどうかは、今となっては分からないが…

それから暫く、私はレスミルズプログラムで最もキツい「GRIT(グリット)」というプログラムに毎週出た(都度、300円の有料)。

まだまだ通いたてだった私は、今ほど体力が出来ていなかった。それでも最低、三ヶ月は出てやると心に決め、出続けた。

GRITは30分間のHIITを全力で行う。簡単に言えば、ぶっ倒れる寸前まで追い込む(本来は)。心拍数200以上とか行くが、そもそも一般人はそこまで「追い込めない」。

参加してる常連のオバチャン達は、誰一人、真面目になんてやってない。真剣にやれば、やり方にもよるがアスリートのトレーニング強度をも凌駕する。

そのジムでは週二回、GRITのプログラムが設けられていた。恐らく、一般的には週一回出れば十分。でも私は週二回出ると決め、それを三ヶ月続けた。

しつこく言うが、その辺のエアロビなんぞに比べて別次元にキツい。これから「やってみよう」と思ってる人は要注意。次の日の仕事に容赦無く、支障が出る。

あまりにもキツ過ぎるので、希望者が毎回5、6人程度しかいない。その数人で円陣を組んで、お互いを励まし合いながらやる。

…のが本当だが、相変わらずそーいうのが苦手な私は、「話しかけんなよ」オーラ全開で孤立し、勝手にガチで追い込みまくった。「仲良しこよし」は嫌いでね。

レストはほぼ無い。あるとしても10〜20秒程度しかくれない。冗談抜きで何度も溺れそうになる。

みんな黙々とやる中、私は時折、大声で叫びながら続けた。当然、周りから見たら「変なやつ」だろう。そんな事は、どうでも良かった。

「あああああああ!大地ィイイイイ!」

あいつの真っ二つの顔が脳裏に浮かぶたび、私に火が入った。

体が動かなくなる都度、大地の名前を叫ぶ。

「うぉおおお!力、貸せェ!」

変態だろうが中二病だろうが構わん。ひそひそ話も聞こえたが、当然気にしない。特に誰も私に文句を言わなかったし、インストラクターもそんな私を注意しなかった。

「あいつの人生は無駄じゃない。意味があった。少なくとも、捨てたもんじゃなかったんだ。それを俺が証明してやる。」

その一心でひたすら、鬼の形相でワークアウトを続けた。

結果…

私は三ヶ月を乗り切り、さらに強靭な肉体を手に入れ、自信も取り戻した。

…ほらな?ざまあみろ。大地、お前の存在価値が証明されたぞ。

お前がいたから、俺はパニック障害を乗り越えて、こうしてここに立っているんだ。お前がやって来た事は、捨てたもんじゃ無かったって事さ。

大地、ありがとう。

…それからさらにワークアウトにハマった私は、スポーツジムに通い続けた。いつの間にか、パニック障害はどこかへ行ってしまった。大好きなコーヒーも、量を間違えなければ飲める様になった(缶コーヒーはやめた)。

——二度目の渡タイから帰って来て、数年が経過したころ。

私はすっかり、地元に定着してしまっていた。もう、タイに行く事は無いと思っていた。

そんな折、ボーッとYouTubeを見ていると、とある動画が目に入った。

その動画のタイトルは、以下のもの。

「この地球に山や森は存在しない」


その26へ続く—

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