タイでのエピソード・その71
—その70の続き—
全てのビザツアー参加者が帰り、さらにそこから一時間ほど経過したあたりで…ようやく私の名前が呼ばれた。
「お偉いさん」専門の部屋へと通され、そこで尋問が始まった。
役員 : 「ミスター、日本人ですね?(英語)」
私 : 「はい。あ、タイ語で大丈夫です。」
役員 : 「おぉ〜、タイ語が出来るのですか。どこかで学んだのですか?」
私 : 「いえ、独学です。」
役員 : 「上手ですね。まぁ、座って下さい。」
私 : 「はい、有難う御座います。」
役員 : 「…さて、Mr.マサヤン。前回のパスポートはどうしたのですか?」
私 : 「洗濯機と一緒に洗ってしまったんです。ボロボロになったので、イミグレーションで取り替えてもらいました。でも、イミグレーションのスタッフが、私にそのパスポートを返してくれなかったのです。」
役員 : 「なるほど…。今回、観光ビザを取るのは何度目ですか?」
私 : 「一度目です(このパスポートでは 笑)。」
役員 : 「なぜ、タイに滞在したいと思っているのですか?」
私 : 「タイが好きだからです。問題あります?」
役員 : 「いえ…無いです。ただ、最近はよからぬ目的で滞在する人も多いんですよ。例えば、ジャパニーズヤ◯ザ…わかりますよね?」
私 : 「はい。私がそう見えます?」
役員 : 「ははは。見えませんね。ところで、滞在している間はどうしているのですか?三ヶ月もどの様にやりくりするのですか?お金は?」
私 : 「あ、私は仕事があるから大丈夫…」
役員 : 「ん?仕事?…あなた、観光ビザですよ?」
……しまった…!口を滑らせた。
日本円で稼ぎ、日本の口座に収益が入っているので問題は無いが、グレーっちゃあグレーな事をしている。ここでそれを言うのはバツが悪い。
私 : 「いや、大丈夫です。私は投資家兼トレーダーなんですよ。主にFXで稼いでます。」
役員 : 「あぁ、なら問題ありません。」
……危なかった。タイでは投資家・トレーダーならビジネスビザは求められない。その予備知識があって助かった。
役員 : 「しかし…日本が恋しく無いのですか?そこまでして、タイが良いのですか?」
私 : 「勿論です!タイを愛していますよ。」
役員 : 「(にこっと笑って)それは嬉しいですね!私も日本が大好きなんですよ!」
私 : 「ははは!それは何よりです!(さっさと帰してくれ…)」
役員 : 「でも…今は先ほどの述べた理由で、観光ビザも取得条件を厳しくしてるんです。なので、今回はリマーク(赤ハンのこと)を押させてもらいますね…。」
私 : 「えええええ!そんなぁ。私は何もしてない。あんまりじゃないですか!」
私は全力で悲しい顔をし、両手を合わせて懇願した。
役員 : 「うーーーん…」
私 : 「もっとタイを知りたいんです。お願いです、それはちょっと待って下さい!」
役員 : 「…分かりました。でも、次は必ずリマークを押しますからね。」
私 : 「はい、有難う御座います!」
——てな感じで、何とか赤ハンを押されずに済んだのでした(笑)。最後は「親日」に助けられた。親日万歳。やっぱ「日本人」は最強なのだよ。ふはは。
でも、次は確実に押されてしまう。そして、同じ戦法は二度と通用しない。よって、タイに居られる期間は実質あと六ヶ月ってところだ。
その後、私の為に待っていてくれたツアースタッフに迎えられ、国境付近まで帰って来た。
ふう…やれやれ。
ここからスマートフォンがタイの電波を拾い始める。
…と同時に、ツアー会社のTさんから電話が掛かって来た。
「もしもし!?マサヤンさん?大丈夫!?」
驚いた。あのぶっきらぼうな、第一印象最悪のTさんが、声を荒げて私を心配した。
「あ、大丈夫ですTさん。ご迷惑をお掛けしました…。何とか、観光ビザ取得出来ました。リマークも無しです。」
「あぁ、良かった…。心配したんだよ。」
「すいません、ご心配をお掛けして…。」
「…で?何がどうしたって?」
…Tさんに事情を説明し、それから私はバスでウドンタニ空港に向かい、一人で飛行機に乗って帰った。最終便には普通に間に合った。
もちろん、自費である。まぁ、しゃーない。
Tさんが「帰れるの?お金は?」と、そこまで心配してくれた。本当に良い人である。何度もお礼をした。
ウドンタニ空港からスワンナプーム空港に到着後、タクシーに乗ってオンヌットへ帰宅。
やーーーっと帰って来れました。
いつものオンヌット。いつものハビトモール。あぁ、ただいま。愛してるよ…😭。
平和ってのは失ってから、その有り難みに気付くものだ。その事を、心から実感した。
にしても…
あと六ヶ月、か…。
その後、どうしよう。今更マトモになんて、働く気にもなりゃしない。
帰るところも…無いしな。
今こうして思い出しても、胸がぎゅーっとなる。ずーっとハビトモールいたかった。それくらい、最高の場所だった。二年くらい居たのに、全く不満など無かった。
帰りたくない。でも…。
…私の心と頭は、ぐわんぐわんに揺れていた。
—その72へ続く—
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