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タイでのエピソード・その79

私とカナヤンは、オンヌットのテスコロータス2階で、朝食を摂る事にした。

2階はコーヒーショップやスポーツショップなどのテナントの他、薬局や各通信会社もあり、簡単にインターネットやスマホの契約を済ませることができる。テスコロータスのメインフロアもこの2階で、食品から家具まで何でも揃う。

その一角に、腹を満たすことができるタイお馴染みのフードコートがある。以前は何度、お世話になったことか…。

カナヤンにここでの食事の仕方を伝授し、各々が好きに食事を済ませた。

彼が頼んだトムヤムのスープ。相変わらずリーズナブルで、その値段に見合わぬ美味しさがあった。辛いというより、甘辛い感じ。

私は魚の肉団子が入ったクイッティアオを頼んだ。まぁ、お馴染みのやつだ。

一口すすると、あの頃の生活が脳裏にふっと蘇って来た。

あぁ…この味である。どこか安っぽくも出汁が利いてて非常に美味い。麺は細麺(センレック・米麺)にした。

スルスルいける軽さの中にモチモチとした歯応えもあり、言うことなし。カナヤンも満足していたようだ。

食べ終わって10時以降になったものの、相変わらずテスコロータス全体はまだ薄暗く、いくつかの店舗のシャッターは下がったまま。

そりゃそうだ。定刻に仕事を始めるタイ人など、タイ人ではない(笑)。

そういった事も含めて、「あぁ…ここは本当に変わっていない」と心から感じた。

ある程度レイアウトやテナントが入れ替わっていたものの、ほとんど変わっていない。懐かしい広場の空気を、心から満喫した。

…さて、他にも行きたい所はあるが、我々には時間がない。ともかく、やることをやっておかなければ。

目的地は私の元・地元である「ハビトモール」。

テスコロータスから歩いて行ける距離なので、食後の運動がてら、そこまで歩く事にした。

オンヌットの裏通りのソイを歩いて、お馴染みのスーパー「ビッグC」の裏側を通る。

通称「マッサージ通り」。その名の通り、マッサージ店がたくさんあるが、それに加えて食べ物屋もあるし、ちょっとしたカフェもある。オンヌットの地元民がお世話になるストリートだ。

ここからさらに10分ほど歩くと…「それ」は見えて来た。

あぁ…!忘れもしない。私が約2年ほど滞在した、ハビトモール内にあるコンドミニアム「The Base Park East」である。

そこに続く、道幅の狭い危なっかしい橋まで変わっていない。ここはせめて工事しとけよ!と突っ込みたくなるが…ここも含めて、何ともタイらしい。

汗だくになりながら我々二人は、ハビトモール内に足を運んだ。

セブンイレブンは…残っているな。トイレの場所などもレイアウトは変わっていない。ただ、以前はこの広場にここまで机や椅子など置いていなかった。SUBWAYなどは撤退しているようだった。

もう片方の広場はどうだろうか。

ふむ…いくつかの店舗が入ったようだが…閑散としているし、何より私の知っている店舗が生き残っていない。

ま…タイなんてそんなもんだ。タイ人は金もないくせに、無計画のまま何となく店舗の経営をする。そして半年もせずに潰す。これも、よくあるパターン。

にしても…住んでいた時にお世話になった、日本人向けの弁当屋さんまでも無くなっているとは。

そこの店主は日本語がペラペラの女の子だった。一緒に飲みに行った事もあったし、かなり仲が良かったので、いれば挨拶しようと思ったのだが…。

これも見事に、無くなっていた。こればっかりは、仕方ないね。

ここからさらに、コンドミニアム側に向かって歩みを進めた。

韓国系のカフェ、TOM'N TOMS COFFEEはもう無くなり、スターバックスになっていた。これは以前から知っていたのだが…

何と、銀行(SCB・サイアム商業銀行)までもが無くなっていた。マジかよ!…これはハビトモールにとっても相当痛いのでは。

話によれば、ハビトモールの景気はそこまでよろしくないらしい。家の中で稼げる・もしくはもう稼ぐ必要がない投資家などが引き篭もるには最高の環境なのだが…何せ、駅までが遠すぎる。ソイの出口まで出るだけでも一苦労なのだ。

しかもショッキングな事実として…

ハビトモールの象徴とも言える無料シャトルバスが無くなった…っぽい。わからないけど、バス停が見当たらなかった。

もしそうだとしたら、確かにここに住む意味はほとんど無くなったと言ってもいいだろう。車でも持っていない限り、場所的にあまりにも不便すぎる。

ハビトモール内に入っていたのは半分以上が飲食店だったし、やはりここもコロナの影響をモロに受けたのだろうなぁ。

最後に、例のコンドミニアムに足を踏み入れてみた。

ここは何も変わっていなかった。私の中の思い出のまま…。

入り口に突っ立っている警備員のいい加減さも、ユルユルのセキュリティも、ロビーの無駄な豪華さも…。

指紋認証を無視し、誰かが来た時に合わせてツラッと中に入る事も出来たが…やめた。もう、十分だ。

足を運べば多少はノスタルジックな気持ちになると思ったのだが…やはり私の頭の中は、自分でもびっくりするほど静かだった。

オンヌットも、ハビトモールも、以前に比べれば大きく変わっていた。

だがそれ以上に…私が変わりすぎた。

全ての思い出は、「おふくろありき」だったのだ。

ここで思い出を振り返ることで改めてそれを実感し、それと同時に、いかに親に甘え続けていたのかが分かった。

「マサヤン、もうええの?」

「うん、行こう。」

私は心の中で第二の故郷に「バイバイ」と言った。

またいつか、会う日まで。


その80へ続く—

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