Everglow(에버글로우)「-77.82x-78.29」


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 韓国の6人組グループ、エヴァーグロウ(에버글로우)。2019年3月18日にシングル・アルバム「Arrival Of Everglow」でデビューして以降、グローバルな人気を着実に高めてきた。“Adios”(2019)と“Dun Dun”(2020)はビルボードのワールド・デジタル・シングル・チャートでトップ3を獲得するなど、商業面も申し分ない。

 そんな彼女たちの作品に、筆者は戸惑いを感じることが多い。よく出来た部分とそうじゃないところの差が大きいからだ。
 たとえば、南極らしき場所で眠るメンバーたちを映して終わる“Adios”のMVを引き継ぎ、“Dun Dun”のMVでは氷山があるシチュエーションを選んだのは、グループのストーリー性を作りあげるという意味では優れたヴィジュアル表現だった。彼女たちのファンやメディアがあれやこれやと語りあえる側面を加えることで、エヴァーグロウの名が露出する機会を増やす、極めて戦略的なチョイスと言える。
 その一方で、“Dun Dun”のMVに続く“La Di Da”のMVは、世界観の引き継ぎが甘い。オープニングで雪を降らせるところは、“Dun Dun”のMVを意識しているように感じられる。だが、メンバーたちの力強い佇まいが際立つシーンの地面をよく見ると、水たまりができており、雪のはずが水も跳ねている。
 細かすぎる指摘かもしれないが、良質な映像表現であふれるK-POPだからこそ、そうした粗が目についてしまう。現代社会で疎外感を抱く若者や階層のために戦う彼女たちという物語も、正直そこまで上手く描かれていない。主体性が強く媚びない女性像をアピールした彼女たちの姿は評価できるものの、肝心の若者や階層の描写がない点は残念だ。

 この“La Di Da”をリード曲にした最新ミニ・アルバムが「-77.82x-78.29」である。1曲目の“La Di Da”は、筆者にとって懐かしさを抱かせるシンセ・サウンドが印象的だ。未来的な響きを纏いながらも、どこかチープさを漂わせるいなたさ。強いて言えば、アルファ・タウン“Power Of Magic”(1989)やバービー・ヤング“Excited”(1992)など、1980年代後半から1990年代前半ごろのユーロビート/ハイ・エナジーが少し脳裏に浮かぶ。
 とはいえ、目まぐるしく変わる曲調や突如ラップが挟まれるのは、ブラックピンク“As If It's Your Last”(2017)あたりのK-POPに通じるもので、モダンなセンスを漂わせる。過去と現在が複雑に入りくんだサウンド、言うなればレトロ・カレント(Retro Current)なポップ・ソングだ。

 “La Di Da”が推しなのに大変恐縮と思いながら、筆者がもっとも気に入ったのは“Untouchable”である。16分で刻まれるハイハット、ジョルジオ・モロダー的なアルペジオを紡ぐシンセ・ベース、そして心地よい横ノリのグルーヴが印象的なサウンドは、ミラーボールが輝くダンスフロアにふさわしいディスコだ。ほのかにスペーシーな雰囲気を醸すサウンドスケープは私たちの意識をここではないどこかへ導き、恍惚に満ちた解脱感をもたらしてくれる。
 歌詞も見逃せない。強く惹かれあう2人を描いたと思われるが、《여자들의 비밀에(女性たちの秘密に)》《여자들만 아니까(女性たちだけが知っている)》といったフレーズを混ぜ、女性同士の関係であることを強調している。さらに《We are we are, we never fall(私たちは私たちであり 私たちは絶対に倒れない)》とも歌われるため、女性たちの連帯を祝うだけでなく、女性同士の恋愛関係を寿いたとも解釈できる歌に聞こえる。

 そのような“Untouchable”を巧みな表現力で歌いきる彼女たちの姿に、グローバルな人気の理由を見た気がした。




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