2019年ベスト・トラック50


 2019年のポップ・カルチャーについてはベスト・アルバム50に書いたので、そちらをぜひ。そこで書かれている評価基準をベスト・トラックにも適用しています。

 ベスト・トラックを選んでいて印象的だったのは、K-POPのインパクトです。作品のコンセプトに合うサウンドなら何でもいいといった爽快さを感じました。リストに入れたK-POPを聴いても、まんま欧米の流行りを鳴らしているわけではないのがわかるでしょう。ヴォーグ・ハウスの匂いを感じる曲があれば、アストル・ピアソラ的な3・3・2のリズムを消化したラテン・ポップもある。

 筆者がブログやWebメディアで記事を執筆した曲は、曲名のところにリンクを貼っています。興味があれば参考にしてください。ベスト・トラック50のプレイリストもあるので、こちらもよろしければ。




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Key(키)“I Wanna Be (Feat. Soyeon Of (G)I-DLE)”

トランシーなフューチャー・ベースかと思いきや、ここ数年再評価の機運が高まってきたUKガラージのビートを刻むなど、耳を飽きさせない展開。この曲が収録されたアルバム『I Wanna Be』のジャケを見て、デヴィッド・ボウイの『Earthling』を連想した。



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Jamila Woods “Betty (For Boogie)”

シカゴのR&Bシンガーによるダンサブルなトラック。UKガラージのビートに滋味な歌声の組み合わせは何度聴いてもクセになる。突如トラップになる展開はどこかK-POP的。



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Burial “Claustro”

ざらついたサンプリング、性急なUKガラージ・ビート、ダークなサウンドスケープ。その哲学は、時代が変わっても輝きを失っていない。曲の終盤ではトランス的なサウンドも鳴り響くなど、笑えるところもある。



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Moomin “Concrete”

Emulator II的な鳥の鳴き声を聴いて、808ステイトの"Pacific State"を連想したのは筆者だけだろうか? 午前4時のダンスフロア、その場限りとわかっていながらも仲良くなった誰かと一緒に聴きたいブレイクス。



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Mahalia “What You Did(Feat. Ella Mai)”

スウィートで艶やかなR&Bナンバー。太いベースとキックはダンスフロアのサウンドシステムを通して聴きたい。



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Moon Diagrams / Shigeto “Trappy Bats Meets Shigeto

シカゴ・ハウスを通じる跳ねたビートが印象的なトラック。反復の気持ち良さに忠実なストイックさが光る。



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Black Flower “Clap Hands”

体を揺らさずにはいられないファンク・ジャズ。ベッドルームはもちろんのこと、ダンスフロアに集う者たちも喜ばせるトラックだ。



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Aurora Halal “Liquiddity”

ジェフ・ミルズの影もちらつくスペーシーなテクノ。サイケデリックなサウンドスケープに導かれてたどり着くのは、冷ややかで心地よい快楽だ。



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Sulli “Goblin”

f(x)の元メンバーが発表したソロ曲。メルヘンチックなサウンドに、シニカルで風刺的歌詞が乗ったポップソングだ。今年自らこの世を去ったのはとても哀しい出来事だった。



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CL “+DONE161201+”

ほのかに漂うレゲエの匂いには、CLが影響を受けたと公言するローリン・ヒルの影。豪華な面々が参加したMVも話題になった。



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Pinch / Kahn / Killa's Army “Crossing The Line”

強烈なベースを響かせるインダストリアル・グライム。ミラーボールが煌めくフロアよりも、湿度高めの薄暗い違法レイヴが似合いそうなトラックだ。



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SuperM(슈퍼엠)“I Can't Stand The Rain

パンソリといった韓国の伝統音楽を取りいれたK-POP。こうしたルーツを鮮明にしたサウンドは、アジア人のステレオタイプに声を上げる者が増えてきた影響もあるだろう。



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Krystal Klear “I'll Be There When You Need Me”

アイルランドのアーティストによるアンセム。メロディー、ビート、展開などあらゆる面でベタを選んでいる。トランシーなシンセが生みだす高揚感には抗えない。



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Oh My Girl(오마이걸)“Vogue”

もろにマドンナの同名曲を想起させるサウンド。こういうストレートな曲が多いのもK-POPの魅力。



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Machine Woman “East Midlands Rave Tune”

ド派手なレイヴ・チューン。一方で、ゴツゴツとしたビートはインダストリアル・テクノ的。ブラワンの“And Both His Sons”を連想。



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Clouds “Sharp Like A Razor”

享楽性を極めた強烈なガバ・キックにノックアウト。頭を空っぽにして、体内の水分を絞りきるまで踊り狂うのが正解。



Bézier“林百貨”

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Bézier “林百貨”

初期デペッシュ・モードの匂いもするエレクトロ・ディスコ。踊れることに特化したサウンドは潔い。



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IU(아이유)“Above The Time(시간의 바깥)”

大親友のソルリについて歌ってる? とも思える歌詞。幽玄なコーラスとストリングスが光るポップ・ソングだ。



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Loyle Carner / Jorja Smith “Loose Ends

ロイル・カーナーには申し訳ないが、ジョルジャ・スミスの繊細なヴォーカルが魅力の8割を担っている。音を詰め込みすぎないビートも巧み。



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Leellamarz(릴러말즈) / Apro(아프로)“W.T.F (Feat. Justhis)”

行進曲の要素を取りいれたケミカル・ブラザーズといった趣。リズミカルでアグレッシヴなラップは聴き手を昂らせる。



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Lee Aram(이아람)“Nasa(Feat. Ownly)”

一瞬ラー・バンドを彷彿させるイントロに惹かれた。ピアノとギターが基調のサウンドは甘美な雰囲気を醸す。



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BIBI(비비)“Nabi(나비)”

ラップと歌を自由に行き来するヴォーカルが良い。曲展開の奇抜さではなく、メロディーと音の気持ちよさで勝負する構成にも惹かれた。



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Felicia Atkinson “You Have To Have Eyes”

Shelter Pressのオーナーが作りあげた超絶トラックにズブズブ。意識が解体されていくような感覚に襲われるドローン・サウンドだ。



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Kano “SYM

グライム・レジェンドがゴスペルを取りいれた曲。突如トランシーなシンセが交わるなど、曲展開には旺盛なチャレンジ精神。



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Famitsu “X-T-C”

オーパスIIIなど1990年代初頭のレイヴ・ミュージックを連想させるダンス・チューン。ど直球でエクスタシーなんて言われたら踊るしかない。



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BTS(방탄소년단)“Boy With Luv(작은 것들을 위한 시)Feat. Halsey”

高品質のポップ・ソング。一度聴いたら耳に残りつづけるという点だけでいえばベスト10クラス。



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Happa “Ls14 Battler”

ベース・ミュージックとインダストリアルを接続したサウンドで、瞬く間にダンス・ミュージック・シーンの最前線に躍り出たアーティストもUKガラージを鳴らした。ハッパにしては陽性な雰囲気が際立つ。



CHAI“ファッショニスタ”

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CHAI “ファッショニスタ

ストイックなリズム隊がグルーヴを支える親しみやすいポップ・ソング。それでいて、アンダーグラウンドを根城にするポスト・パンク・バンドみたいな匂いがするのも好みだ。



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The 1975 “People

インダストリアル・ロックど真ん中のサウンドで多くのリスナーを驚かせた話題曲。このバンド、引きだしの多さが尋常じゃない。



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Phoebe Green “Easy Peeler

マンチェスター出身のアーティストが放ったセカンド・シングル。乾いた質感のドラムとベースによるミニマルなリズムは、ポスト・パンクの要素が顕著に表れている。



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Vagabon “Every Woman”

カメルーン育ちのシンガーソングライターが発表した美しい曲。たおやかな歌声は、日々戦っている人たちに優しく寄り添う。



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Red Velvet(레드벨벳)“Umpah Umpah(음파음파)”

ハウシーなバブルガム・ポップは、眩しい太陽が似合うサマー・ソングでもある。MVで突如登場する亀に思わず微笑。



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SL “Welcome To The Wild

ポテンシャルはデイヴに匹敵する。サウス・ロンドンはおもしろいラッパーを次々と輩出している。



三浦大知“Colorless”

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三浦大知 “Colorless

日本のポップ・ミュージックのなかでは、かなり先鋭的なサウンドだ。三浦大知の秀逸な言葉選びも光る。



土岐麻子“Passion Blue”

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土岐麻子 “Passion Blue”

女性賛歌と言っても差し支えない上質なポップ・ソング。ラップ的な土岐麻子の歌い方にも惹かれた。



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Jorja Smith “Be Honest (Feat. Burna Boy)”

ジョルジャ・スミス流アフロ・スウィング。もともとレゲエからの影響を公言していたが、その嗜好をより明確にした曲。



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Analemma “Plunging Asymptotees”

ソフィーとジュリアナ・ハックスタブルによるユニットのデビュー曲。とても先鋭的なノン・ビート・トラックだが、自然とリズムをとってしまうキャッチーさも光る。インダストリアル要素が濃い不穏なサウンドスケープに、レイヴィーなシンセやトランスの高揚感を小さじ一杯振りかけている。



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Object Blue “Ecstasy Of St. Teresa”

端正な音作りに奇抜な曲展開。DJではキャッチーな繋ぎを披露することも多いが、オリジナル作品では実験精神に忠実だ。



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Majja “Black James Dean

スモーキーなサイケデリアを創出する音像に惹かれた。デルロイ・エドワーズあたりのロウ・テクノに通じるサウンド。



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Dave “Lesley

イギリスに留まらないワールドクラスのラッパーだと示した名曲。ノン・ビートの11分に込められた才気は畏怖を抱かせる。



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BLACKPINK(블랙핑크)“Kill This Love

ビヨンセのコーチェラライヴを想起させるホーン・サウンドが際立つ曲。日本語版もリリースされたが、こちらは凄惨を極めた出来だった。もちろんそれはBLACKPINKのせいじゃない。



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ITZY(있지)“ICY

エネルギッシュなバブルガム・ポップにヴォーグ・ハウスのスパイスをまぶした曲。クラブのサウンドシステムでも機能するベースとビートには、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼女たちにふさわしいアグレシッシヴさがある。



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TWICE(트와이스)“Feel Special”

TWICEの曲のなかでは一番好き。弱さと向き合うことも強さであると歌う歌詞は、セルフ・エンパワーメント・ソングの多様性を拡張するものだ。



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Yu Su “Watermelon Woman”

イタロ・ディスコのいなたさを醸すダンス・トラック。親しみやすさに潜む毒はとてもトリッピー。



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Octo Octa “Move Your Body”

どこまでもリスナーをアゲていく素晴らしいハウス・ミュージック。この曲に合わせて汗を撒き散らす観衆に何度遭遇したことか。



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Lim Kim “Yellow

東アジア人のステレオタイプと男性優位社会を辛辣に攻めたてる曲。キャッチーな側面と先鋭さが共立したサウンドが秀逸。



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(G)I-DLE((여자)아이들)“Senorita

アストル・ピアソラ的な3・3・2のリズムを巧みに消化したラテン・ポップ。ソヨンのラップがずれているようでそうじゃない奇抜な曲展開に爆笑。



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Quin “Lucid(Feat. Infinity)”

ここではないどこかへ飛ばしてくれるR&Bナンバー。アンニュイなヴォーカルの妖しさは聴けば聴くほど増していく。



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CLC(씨엘씨)“No

韓国の世情とも共振する痛烈なポップ・ソング。IZ*ONEに対する当てつけ?と思わせるMVもおもしろかった。



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AOA(에이오에이)“Egotistic(너나 해)”

Mamamoo(마마무)の名曲をAOAがカヴァー。この曲は『Queendom』でのパフォーマンスも込みで楽しむべきだ。異性装を纏うAOAがドラァグ・ダンサーたちと歌い踊るそれは、属性にとらわれない連帯の可能性を雄弁に示した。







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