2021年ベスト・ブック20


 ベストに選んだ作品を見てもらえばわかるように、2021年は韓国の本を多く読みました。韓国語は読むのも喋るのもまだまだ拙いですが、そうしたレヴェルの読解力でも心に突き刺さった本を選んでおります。
 ちなみに韓国は絵本や漫画の質も非常に高いです。構成が映画的な作品も多く、さまざまな表現の要素を取りいれたハイブリッドな手法が一般的になっているんだなと感じました。



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20 Paris Lees『What It Feels Like For A Girl』

 VOGUEでトランスジェンダー初のコラムニストを務めたパリス・リーズの回想録。マジョリティーとされる人々とは違う視点が鮮やかな言葉で描かれた良書。



パトリシア・ヒル・コリンズ (著), スルマ・ビルゲ (著), 小原 理乃 (翻訳), 下地 ローレンス 吉孝 (翻訳, 監修)『インターセクショナリティ』

19 パトリシア・ヒル・コリンズ スルマ・ビルゲ 小原理乃 下地ローレンス吉孝 『インターセクショナリティ』

 人種、階級、性別などさまざまな要素が絡みあう複雑さを捉えるための概念について解説している。現代社会を紐解くうえで重要な示唆が多い。



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18 최은영 『밝은 밤』

 チェ・ウニョンの長編小説。軽やかで強靭な言葉は思いやりと叙情性で溢れている。



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17 Lenny Henry & Marcus Ryder『Black British Lives Matter: A Clarion Call For Equality』

 イギリスにおけるブラック・ライヴズ・マター運動を掘りさげた本。“黒人”と言っても、その言葉に含まれる問題は実に複雑で、アジア人である筆者にとっても無関係ではいられないのだと実感させられた。



もろさわ ようこ (著), 河原 千春 (編集)『新編 おんなの戦後史』

16 もろさわようこ 河原千春『新編 おんなの戦後史』

 庶民の視点が濃いフェミニズム本。日本においてこういった視点がもっと増えてほしいと強く思わされた。



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15 김아영 이현주 한고은 박다해 지음『페미니즘 리포트 』

 韓国におけるフェミニズムの強い影響力を確認できる研究書。脱コルセットや性犯罪などを取りあげながら、現在と未来の風景を提示してくれる。



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14 윤성희 『날마다 만우절』

 ユン・ソンヒの短編集。人という生き物の複雑さを抉りだす文体は優しさで溢れながらも鋭い。



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13 Two Fingas & James Kirk『Junglist』

 イギリスのジャングル・シーンを題材にした本。音楽はもちろん、人種など社会問題の要素もかかわってくる内容はポップ・カルチャー好きなら必読。



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12 Justine Picardie『Miss Dior: A Story of Courage and Couture』

 クリスチャン・ディオールの妹であるカトリーヌ・ディオールに焦点をあてた伝記。ファッションをより深く理解するためにおすすめの本だが、女性は男性の影になりがちという歪さを知る意味でも読んでほしい内容だ。



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11 이주연 이정환『헤어지자고 했을 뿐입니다』

 韓国で社会問題となっているデートDVが主題の本。女性というだけで受ける理不尽や不公平を浮き彫りにしている。



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10 조현준『영화로 읽는 페미니즘 역사』

 映画を通して、フェミニズムの歴史を読み解いていく本。入門編的内容でありながら、韓国と欧米の流れを比較できる構成は勉強になった。



稲葉 剛『貧困パンデミック――寝ている『公助』を叩き起こす』

9 稲葉剛『貧困パンデミック――寝ている『公助』を叩き起こす』

 タイトル通りの内容。政府が公助をやめ、多くの人たちが苦しんでいる日本の現在をわかりやすく書いている。



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8 Sally Rooney『Beautiful World, Where Are You』

 『Normal People』で一躍名声を高めた作家の最新小説。階級や社会に対する批評眼を丁寧に織りこんだ物語は滋味深い。



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7 Sheila Rowbotham『Daring To Hope: My Life In The 1970s』

 著名なフェミニストで歴史学者のシーラ・ロウボサムによる回想録。労働者の視点を忘れない彼女の姿勢は、もっと高く評価されていいはずだ。



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6 이재문 김지인『몬스터 차일드』

 子ども向けの文学でありながら、多数や普通とされているものに属していないだけで差別されることのおかしさを描いた物語は幅広い世代に読まれていいはずだ。



エマ・ブラウン『男子という闇――少年をいかに性暴力から守るか』

5 エマ・ブラウン『男子という闇 少年をいかに性暴力から守るか』

 男性に対する性暴力を取りあげた本。社会構造の観点から男性性を考えるヒントにもなる内容だ。



飯島 裕子『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤立と貧困』

4 飯島裕子『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤立と貧困』

 新型コロナのパンデミックの影響を受けた女性たちに迫った本。パンデミックだけでなく構造的女性差別も背景にあるなど、男尊女卑な日本という国の病巣が見えてくる。



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3 조남주『우리가 쓴 것』

 『82年生まれ、キム・ジヨン』で世界的名声を得たチョ・ナムジュの短編集。ガスライティングといった心理的虐待、家父長制、フェミニズムにおける世代間の葛藤などさまざまな社会問題を盛りこんだ内容は、『82年生まれ、キム・ジヨン』の視点を押しすすめたと言えるものだ。



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2 손희정『당신이 그린 우주를 보았다』

 文化評論家のソン・ヒジョンによる著書。イ・ギョンミやチャ・ソンドクなど、映画監督として活躍する女性を取りあげた内容は、韓国映画界の深みを知る意味でも必読。



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1 Michelle Zauner『Crying In H Mart』

 ジャパニーズ・ブレックファストことミシェル・ザウナーの回想録。アジア系アメリカ人として育つうえで遭遇しがちな痛みに触れつつ、パーソナルな出来事も綴られた実直な文体に惹かれた。


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