Daft Punk『Homework (25th Anniversary Edition)』


Daft Punk『Homework (25th Anniversary Edition)』のジャケット


 2022年2月22日の22時22分(日本時間2月23日早朝)、ダフト・パンクがtwitchで過去のフルライヴ映像を配信した。ライヴはアメリカのマヤ・シアターにて1997年12月17日におこなわれたもので、トレードマークであるヘルメットを被る前の彼らがパフォーマンスしている。配信は一度限りのため、現在は視聴できない。
 配信終了後、彼らはファースト・アルバム『Homework』(1997)の25th Anniversary Editionを世に放った。このニュースは世界中の音楽メディアを賑わせたのは言うまでもない。2021年に解散してから1年経っても人気は健在であり、フランスから世界中の音楽シーンにあたえた影響力も衰え知らずだ。

 本作は、オリジナル・アルバムのディスク1とリミックス・アルバムのディスク2で構成されている。
 前者はリリース当時の『Homework』と同じ内容だ、“Daftendirekt”から始まり、4曲目の“Da Funk”を逆再生した“Funk Ad”で幕が閉じる。彼らがもっとも無邪気にハウス・ミュージックを鳴らしていた頃の熱い衝動といなたさが絶妙に交わったサウンドは、いま聴いても味わい深い。
 基本的には4つ打ちを軸としたハウス作品ではあるが、細かいところに耳を傾けると、セカンド・アルバム『Discovery』(2001)以降に顕著となった多彩な音楽性の萌芽もうかがえる。なかでも、ファンク的な粘っこいグルーヴにアシッド・ハウスのスパイスを振りかけた“Da Funk”、イントロでエレキ・ギターのような音がフレーズを紡ぐ“Fresh”などは、ダフト・パンクをやる前はロック・バンドを組んでいた彼らの雑食な嗜好が際立つ。
 “Around the World”も特筆したい。シンコペーションが効いた忙しないベース・ラインはファンクやディスコの影響を醸しつつ、メロディーを奏でるシンセはLFOあたりのテクノが脳裏に浮かぶ音色をまとったおもしろい曲だ。

 ディスク2は、『Homework』に収められた曲のリミックスを集めた内容である。アイ・キューブやイアン・プーリーなど錚々たるアーティストたちがダフト・パンクの曲を調理している。
 特に好きなのはモーターベースによる“Around the World”のリミックスだ。乾いた質感のスネアやハイハットの鳴りは、ザ・ラプチャーや初期のLCDサウンドシステムといった2000年代初頭のディスコ・パンクを感じさせる。このリミックスは1997年に発表されたものだが、そう考えると後にセンセーションを巻きおこす音楽のプロダクションを先取っていたとも言える。

 ダフト・パンクといえば、『Random Access Memories』(2013)でディスコとファンクを本格的に復権させるなど、ダンス・ミュージック・シーンに留まらない功績を残してきた。しかし、彼らのルーツの一端は、ミラーボール煌めくダンスフロアとレコードでいっぱいのDJブースである。そうした側面を知らないリスナーこそ、『Homework』の25th Anniversary Editionを聴いてほしい。彼らのヴィジョンはデビュー当初から独特で、それはいまもなお魅力的なのがわかるはずだ。



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