甘美なグルーヴ、多彩なサウンド Seven Davis Jr.『Stranger Than Fiction』


 テキサス州ヒューストン出身のプロデューサー、セヴン・デイヴィス・ジュニア。レコードショップやストリーミングサービスにおいて、彼の作品はハウスに分類されていることが多い。しかし、これまでリリースしてきた作品を聴いてもわかるように、ハウスと一言で形容するには無理がある多面的な音楽を鳴らしてきたアーティストだ。ファンクを前面に出したかと思えば、R&Bの香りを漂わせながら甘美なグルーヴを創出する時もある。ゆえに特定のシーンを象徴する存在ではないが、どこにも属していない孤高さという魅力を持つに至っている。

 そんなセヴン・デイヴィス・ジュニアの最新アルバムが『Stranger Than Fiction』だ。本作でも彼は多彩なトラックを並べ、自在にグルーヴを操り、聴き手を踊らせてくれる。ハウス、テクノ、ヒップホップ、R&B、ファンク、ジャズ、ディスコが絶妙に溶けあったサウンドの味わいは濃厚で、どこまでも肉感的。ダンスフロア向けの作品という括りに置いておくのはもったいないと思わせるほど、幅広い層に届く可能性を持った内容だ。
 ジョン・ケイルやザ・アーキテクトなど、さまざまなゲスト陣も見逃せない。彼の多様な音楽的引きだしと見事に共鳴し、作品の多面性を一段上のレヴェルに引きあげている。

 『Stranger Than Fiction』は、定型を持たないポップ・ミュージックとして質が高いアルバムだ。こうした曖昧さに何かしらのラベルを貼るのは難しいが、そんなのは貼る側の身勝手な都合でしかない。聴き手はただ、いくつもの表情を披露してくれるサウンドに浸りながら、楽しめばよいと思う。


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