蠱惑的なテクノ・トラック集 Marcel Dettmann「Electric Drive」


Marcel Dettmann「Electric Drive」のジャケット

 ドイツのDJ/プロデューサー、マルセル・デットマンが最新EP「Electric Drive」をリリースした。まとまった作品としては、2022年のフル・アルバム『Fear Of Programming』以来となる。

 結論から言うと、「Electric Drive」はデットマンの魅力が詰まった秀逸なテクノ・トラックを楽しめるEPだ。ドライなオープンハイハットの鳴りとレトロ・フューチャーなシンセ・サウンドが交わる表題曲、ボイトロニックといったニュー・ビート系のアーティストも脳裏に浮かぶ“Mission”など、ダンスフロア向けのアッパーな曲が揃っている。全体的にエネルギッシュかつダイナミックで、パワフルなビートと重厚なベースを絶え間なく響かせながら、聴き手を享楽的グルーヴに引きこむ。

 デットマンのトレードマークであるダークな雰囲気も健在だ。インダストリアルの香りを漂わせる音像は深化し、蠱惑的な空気を醸す。
 ビートは多くの人たちを踊らせる獰猛さが際立つ一方で、ひとつひとつの音色は丁寧に作りこまれている。ゆえにダンスフロアはもちろん、ひとりヘッドフォンで聴きこむタイプの聴き手も楽しめる幅広さがある。
 洗練されたプロダクションも素晴らしい。全4曲のサウンドは驚くほどクリアで、ほのかにSFチックでスペーシーなエフェクトの数々には、デットマンの経験と手腕が凝縮されている。

 「Electric Drive」の辞書に単調という言葉はない。『Fear Of Programming』と同じくらいさまざまな要素を取りいれ、多彩なアレンジで聴く人を楽しませてくれる。作品全体を通じて、いくつものリズムパターンやグルーヴ、音響効果を巧みに組みあわせていく手腕は圧巻だ。


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