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鯉を食べる:特産品となった郷土料理は生命を殺す
売られている鯉の甘露煮は好きでない。味が強すぎるのだ。賞味期限も明示される。僕は賞味期限が記載されている「商品」を好まない。
料理はそれぞれのヒトに合ったものであった。人はあまりに違う。
家族を思い毎日料理を作る「シェルターとしての家庭」は失われた。食事作りは世界と個人を結ぶ重要なものだ。センターキッチンで作られ値段のつくものではない。
そして、それは個人の意識や努力の問題ではない。「食事の価値」を失った社会の問題である。
専門家は売られている食事で「安心安全」という。しかし、それが嘘だということは「私達の死に方」を見ればわかる。僕はピンコロの命の終わりを探している。
法的な整備は良いことのように感じる。製造者を守るために商品が一定の条件で保存されたあとで「商品」の状態を見て決めるのだ。
お店の厨房で「素材から丁寧に作られ」、店頭で売られるものには賞味期限など無い。家庭で作られた食事も同じである。
「安心安全」と言うレッテルが貼られているものほど危険なものはない。レンチンで提供されるサプライチェーンの末端の責任になる。
かつて、平野屋(父の実家)でべーコンを作り売ろうとしたが間違えであった。美味しいかもしれないが、商品となったら自分で食べるものとはかけ離れるのだ。
僕の父は鯉の料理が得意だった。実家では毎年年末には鯉料理を食べたものだと聞く。「鯉こく(ネギたっぷりの味噌汁)」、「鯉のうまに(甘露煮ではない)」。家庭には皆それぞれの味があった。
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少し前までは、養殖鯉のお店があったものだ。このお店もすでにない。
今年2回目の「鯉のうまに」である。
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捌いている方のお父さんも飲んだものだとお聞きした。少し考えたが頂かなかった。「捨てますよ」と念を押された。
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急いで家に帰る。鯉が命を失ってから2時間で出来上がる。
生命が終わってから僕の中に入り細胞が喰らうまでのプロセスこそが「食事の価値」なのだ。満腹は商品としての食事の価格に結びつくかもしれないが、それは価値ではない。
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友人にお裾分けした。リンゴは訳ありリンゴ、銀餡ご飯に菊をつけた。そこにも売ってい無いものである。
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厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。