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2023年の展望

僕は、人との出会いによって、自分の可能性を広げてきた。だから、2023年も多くの出会いによって、今は見えていない可能性にアクセスしていくはずだ。だから、今立てている計画は、2週間後には書き換わっているんじゃないかと思う。

そして、今、考えていることも、この2週間に起こった出会いの影響が大きい。大きな方向性は変わっていないが、具体的なレベルでは、どんどん更新されている。

一週間前にの12月23日には、シンガポールにいた。Edtech企業のClassDoのCEOのChiewさん、ICMGのディレクターの辻さん、教育ライターの平野さんと4人でご飯を食べた。今回のChiewさんとの再会から、だいぶ影響を受けた。

Chiewさんとは、2013年にデジタルハリウッド大学で行った「反転授業の研究」のリアルイベントで出会った。登壇している僕が、机を親指で指さしている(マレーシアでは、人差し指で指すのは失礼だから、みんな親指で指す)のを見て、「田原さんは、なんでマレーシアのやり方で指さしているの?」と反応して声をかけてくれたのがきっかけ。Chiewさんは、マレーシア出身で、奨学生としてシンガポールの中学に通い、飛び級でカナダの大学へ進んであっという間に数学とコンピューターサイエンスの学位をとってしまi、日本の産学連携プロジェクトに加わって生産管理のアルゴリズムを大幅に改善してしまった天才だ。

それから仲良くなって、Chiewさんが通ったシンガポールの中学を訪問して見学させてもらったり(その時の報告記事)、その中学校と奈良女子大付属とのコラボレーション教育をオーガナイズしたり、ClassDoで試しに授業をしてみたり。。いろいろ一緒にやった。システムを作っているChiewさんと、新しい教育の方法論を模索している僕とは、ちょうど領域がずれていて、コラボしやすかった。

今回、日本に帰国して、株式会社デジタルファシリテーション研究所を立ち上げ、動き出しているのをChiewさんが見て、声をかけてきた。オンラインで話をして7年ぶりにお互いの近況報告をした。二人とも大きくアップデートしていた。ちょうどマレーシアに滞在していたので、ちょっと足を延ばしてシンガポールに日帰り出張をしたのが、23日のミーティングだった。

2012年に「反転授業の研究」を立ち上げて以来、10年間、教育システムの改革のために突っ走ってきたが、今回、Chiewさんと話をして新しい変化の文脈が見えた。それは、シンガポールが、

2030年にはAIとロボットによって多くの仕事が置き換わる

という想定で、国を挙げて教育改革をやっているということを教えてもらったからだ。

ブルーカラーのほとんどが外国人労働者の仕事になっているシンガポールでは、シンガポール人はホワイトカラーになっていくしかない。AIによって今までの仕事がなくなってしまうと、ホワイトカラーの失業者が増えて、深刻な社会課題が発生してしまうのだ。その対策として、アップスキリングとリスキリングのための体制を作って、4年間で国民全体をアップスキリング&リスキリングしていくとのこと。国民全員に教育バウチャーを配布するという徹底ぶりだ。

教師の役割も、「教えること」から「ファシリテーター」にアップスキリングして、評価制度もテストによらず、コンピテンシー・ルーブリックによる評価に切り替わるのだとか。教師全員がトレーニングを受けて「ティーチャー」から「ファシリテーター」にアップスキリングすることが求められる。

ClassDoは、そのような新しい教育を支えるプラットフォームとして生まれ変わっており、シンガポール政府と連携して教育の大転換を進めていくとのことだった。

日本での河合塾との戦略提携も発表され、ミネルバ大学のように非認知スキルを測定しながらフィードバックを行っていくような学習環境の構築に取り組むらしい。

Chiewさんと話して、2030年問題のリアリティと、そこへ取り組む文脈を理解できたのが大きかった。

アップスキリング&リスキリング

というわけで、12月23日からずっと、アップスキリング&リスキリングのことを考えている。

仕事と直結したアップスキリング&リスキリングのための学習環境が増えると、そこでアップスキリングやリスキリングして新しい職に就く大人に混じって、学校の代わりにそこで学んで仕事に就いていく若者が増えていくだろうなと予想した。

その場所が、教育システムの破壊的イノベーションになるのかもしれない。学校教育と生涯学習とが一体化すると、学歴社会は崩壊するし、多様な学びと進路にも対応できるようになる。一人一人の個性と仕事とのマッチングは、ブロックチェーンに記録された学習履歴データとAIによる提案を手掛かりにしながら、新しいキャリアコンサルタントがサポートするようになるだろう。

今の教育システムは、物不足を解消するための工場労働者を大量生産することには役立ったけど、それと引き換えに機械だけじゃなく人間を「標準化」することで生じた副作用が大きかったと思う。

本来は多様な生物である人間を「標準化」し、それを内面化すると、そこから外れている部分を自己否定するようになる。どこに合わせて「標準化」するかは、その社会の権力構造とも結びついているから、属性やポジションによって有利不利も出てくる。

「〇〇障害」というのは、「標準化」から外れているということで定義されるわけだから、これも、「標準化」の副作用だよね。

学校に限らない多様な学び場が生まれて、それぞれが自分の特性に合った学び方で学んで、人間は「標準化」しないで、それぞれの在り方で社会の中で居場所を作っていけるようになるといいなーと思う。

参加型社会というのは、一人一人が「自分標準」で生きて、お互いに相互学習をしていく社会だと思う。

そこへ向かうために利用できる文脈として、アップスキリング&リスキリングは、有効だなと感じたということ。

2030年までにたくさんの仕事が消滅するのだとしたら、その代わりにたくさんの新しい仕事を生み出したい。

そのためのプロセスとして、

1)直感に従って、新しい仕事っぽいことを1年ぐらいやってみる。
2)その正体が整理されてきたら、その仕事に名前を付ける。
3)その仕事のスキルを分析して、トレーニングプログラムを作る。
4)その「新しい仕事」で生きていけるようにする。

考えてみれば、僕は、

オンライン教育プロデューサー(2013-2016)
自己組織化ファシリテーター(2017-2020)
社会変革デジタルファシリテーター(2021- )

というように、直感的に動きながら、それに合った名前を、その都度、つけてきたと思う。

その時にやっている仕事は、5年後には無くなっているだろうという実感を持ちながら、

1)すでに身についているスキル=教える仕事
2)試行錯誤しながら身に着けつつあるスキル=創る仕事
3)将来的に身に着けたいスキル=研究

という3つをバランスしながら、1)を手放しながら、2)が1)へ移動し、3)が2)へ移動し、新しい研究テーマ3)を発見していくというようにスライドしながら生きてきた。

アップスキリング&リスキリングが必要な時代には、並行していくつもの仕事をしているほうが有利だと思う。1/3ずつのポートフォリオを組むことができるから。

社会が変わるのだから、仕事も変わる。柔軟に重心を移動したり、脱皮したりして、新しい仕事を生み出しながら、今年も生きていきたい。



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