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“1”を超えた先に見えるもの【8月17日(木)】

もうすぐ世界陸上が始まる。コロナ禍の影響で2021年に予定されていたオレゴン世界陸上が2022年に開催された影響で、今回のブダペスト世界陸上は異例の2年連続開催。

選手たちの結果も気になるけれど、昨年のオレゴン世陸が終わった段階で気になっていたのは中継のテーマソングだった。というのも、これまで世界陸上といえば言わずもがな織田裕二であり、All my treasuresだった。

日本の陸上ファン全員が「地球に生まれてよかった」と思うかはさておき、やはり世界陸上の中継でMCをしている織田裕二は箱根駅伝の中継で解説が外れすぎる瀬古さんと並ぶ風物詩だと言っていい。選手より織田裕二で世界陸上を感じるってなんだそれ。

そんな彼もオレゴン世陸まで13大会に渡って続けたMCを卒業。では、2023年ブタペストは一体どうなるのだろうか。All my treasuresの行方は。それが、2023年の関心事の1つだった。

はて。と思っていたところある日インスタグラムを開くと目に入ってきたのは星野源の投稿、「世界陸上」の4文字。星野源も陸上競技も大好きだが、この2つは自分が好きなだけであって、絶対に相容れないものだと思っていた。

大学生の頃から星野源の書くエッセイに惹かれ、社会人1年目疲れたときに救ってくれたのは星野源のオールナイトニッポンだった。その彼がまさか世界陸上のテーマソングを作る日が来るとは。さらに驚いたのが、TBSのインタビューに対して女子短距離のフレイザー・プライスが好きと答えていたこと。なんてことだ、陸上を観てるのか。

生命体。どんな感じになるのだろうと思っていたら、最高だった。走る自分も、この世界でもがく自分も、すべてひっくるめてエンパワーメントされるような歌詞。

『“1”を超えた先』というフレーズが頭に残る。

おそらくこれは順位のことを言っているのだと思う。ラジオでは「順位を超えたものへの肯定。また、1人という孤独を超えた、アメーバのような。真空のような状態」について書いたと言及している。

個人的には、中長距離でラスト1周で鐘が鳴らされる瞬間が浮かんだ。トラック種目では、残りの周回を知らせる掲示がフィニッシュ地点に置かれている。それが1周ごとに減っていき、最後は『1』の数字とともに先頭ランナーの通過時に鐘が鳴らされる。

長距離種目とはいえ、世界陸上ともなるとラスト1周は短距離種目なのかと見間違えるほどのスピードで激しいスパートが繰り広げられる。あの数十秒は、1人1人の個体どうしが競り合っているはずなのに、大きなエネルギーが混ざっていく感覚になる。その場にいる全員が息を飲み、先頭に視線が注がれる。

選手目線でいうと、ラスト1周は身体は軋むようにきついのに、スパートのために思っている以上のスピードを出せることがある。その瞬間は、フィニッシュラインまで一直線に見えて、身体のきつさとか呼吸とか、全部ぜんぶどうでもよくなる。ただ線を超えることだけを目指す。

あれはなんなのだろうな。走るのはきついと思いながら、あの瞬間を感じたくてまた走ってしまう。そういう性なのだろう。

というわけで、もうすぐ世界陸上が始まる。織田裕二のいない世界陸上で、僕は『生命体』を繰り返し聴いてしまうと思う。

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