夢見モグラは空を待ち侘びて 62日目

時折空は、
夢の中でモグラになることを楽しみにしていた。
その方が地下を自由に動き回れるし、
走って、歌って、踊ることもできる。
その日はいつもよりすこぶる調子が良かったので、
通りすがりの地下の街の人たちが、
モグラの軽やかなステップに目を奪われ、
いつのまにか、モグラを取り囲むように人だかりができていた。
よし、ここで最後の大技だ、
強く地面を踏み込んで、宙を舞う、
最高速でターンを決めて、ビタっとテレマークで着地、
さあ振り向いて喝采を浴びるんだ、
というところで、空の目は覚めてしまった。
空は小さく、ちっと舌打ちをした。

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絶好調貯金の話

明日のための通しリハ。
僕らのリハには2種類あって、
メンバーだけで行うメンバーリハと、
楽器スタッフや音響スタッフにも来てもらって、本番に近い環境で行うリハ、ゲネプロ、と呼ばれるものがあって、今日は後者。

本番前に頑張りすぎて、
喉を枯らしたり、痛めたりしてしまっては、
本末が転倒なので、前日にリハがある場合はその匙加減が絶妙に難しい。
ちょっとやりすぎたかな、いや、まあ大丈夫かな、
というところで大事をとって早めに帰宅。

数週間前くらいから、
万全のコンディションで当日を迎えられるように逆算して、
ちょうどよくその日100点の体調で迎える、というのも勿論技術だけれど、
どんなに良い子にしていたって風邪をひくこともあるし、
花粉がよく飛ぶ時もあるし、運の要素も大きい。
絶好調貯金、みたいに調子も、銀行みたいに貯金できたら良いのにとか毎回思う。
ライブの日を迎えることが、
ステージに立つこと自体がとても怖い時期もあったけれど、
ここ数年は、気負いも、緊張感も、飢餓感も、
そして存在証明欲も、ほどほどにブレンドしあって、
自分としてはちょうど良い味をしているような気がしているし、
明日もきっとそう。

ライブハウスに来られる方はお気をつけてお越しくださいませ。
具合が疑わしいな、不安に思う方は、どうかご無理をなさらず。
決められたルールの中でですけれど、自由に楽しんでいただければと思います。
一生懸命演奏して歌を歌って、
自分のやれることはそう変わりませんけれど、
変わらずにそこにあることの価値を、どこか見出せればと思います。

それではまた明日。
ライブハウスで、配信の画面の前でお待ちしております。

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本日の表紙はm16_____aさんの写真を使用させていただいております。