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見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって【はじめに】

-Prologue-

相も変わらず空は広いし、雲は柔らかそうだし、ビルは高い。
コンクリートは固いし、急かすように信号は点滅にして赤に変わる。
一見して世界の表情は何も変わらない。

人と人は2mの距離を置き、不織布で口を覆い、
不要不急なんて言葉を合言葉に、出歩くことを控え、家での時間を過ごした日々。
そもそも自分は必要か?なんて思いに耽る。
バスの隣の座席の人が咳払い一つするだけで不安になる。
逆もまた然りで、一瞬にしてその場に居づらい空気に押し出されそうになる。
換気のために10センチだけ空いた窓。
ウイルスを根城に充満した不安や不満はまでは換気出来ない。
蓋をされたようななんとも息苦しい世界だ。
20XX、人間は目に見えないウイルスに翻弄されている。

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失われたものは何だ。
ある人は会話する機会を失い、喋り方を忘れてしまった。
ある人は一度しかない部活の大会が開かれず、試合をする前に涙を飲んだ。
ある人は来る日も来る日も患者のために多忙を極めて、家族との時間をすり減らした。
話しかけられた人が誰だかわからない。
マスクをしたまま出会い、別れた人たちは、互いの顔を知らないまま。

時間は誰しもに平等に与えられているというのは少し嘘だ。
青春真っ盛りのジェットコースターで行く3年と、杖をついていく静かな余生の3年では、体感速度とそこから見える景色が圧倒的に違う。
それでもどちらにとっても宝物であることには変わりないのだけれど。
誰かの心の中で持ち腐れた時間が、鼻にツンとくる悪臭を放ち、すれ違うたびに息を止めたくなるスクランブル交差点。

それでもこの時の流れの中で唯一、得られたものがあるとするのならば、
気づきというか、発見と強がれるものがあるとするのならば、それはきっと。

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あるところに、
“文字”でしか語れない人間が居た。
またあるところに、
”写真”でしか語れない人間が居た。

二人の出会いはネット上、あまり流行っていないSNSの中だった。
どちらも「あい(eye AI)」と自身のことを名乗った。
挨拶などなく、唐突に、eyeのその写真に対してAIがコメントを付けると、
数日後にはまた新しい写真が更新され、その繰り返しはいつの間にか、習慣になり、互いの生活の一部となっていった。
そして、いくつかの季節が巡ったある日のこと、
ふとはじめから読み起こし、最後まで読み終えた時に、ふたりは記録していたその習慣に、ひとつの名前をつけることにした。

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「目に見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって」

@mienaimononi

あるところに、“文字”でしか語れない人間が居た。またあるところに、”写真”でしか語れない人間が居た。「見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって」【製作】金井政人(文字)タカギユウスケ(写真)

♬ オリジナル楽曲 - 見えないものに怯えた僕らは、目にみえるものを愛したくなって - 見えないものに怯えた僕らは、目にみえるものを愛したくなって

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【製作】
文字:金井政人

写真:タカギユウスケ

この企画、通称 #ミエミエ #見え見え
は金井政人(文章)とタカギユウスケ(写真)を中心にnoteにて週一回の投稿、
2022年10月から半年ほどの連載を予定しております。

実際に足を運んで、自身の目で目の当たりするということには、
映像とも写真とも違う、他の何にも変え難い感動があると信じています。
その一歩の背中をそっと押すような、
それでいて、今あなたの手元にあるものがもっと愛おしく見つめられるような、
そんなものが届けられたら。
しばらくの間ですが、温かい目、長い目で、お付き合いいただけたら幸いです。

褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。