夢見モグラは空を待ち侘びて 72日目
いつの日からかこの地下と呼ばれる場所で
暗がりの中に生を受け、
駆け巡っては日々耕して、
飛び回ってはトンネルを掘ったり、
ゴミを見つけは掃除して綺麗にして、
快適で住みやすい環境を作り上げていたきたことは、
きっとこの木の根が自由自在に、
伸び伸びと思う方向に進めていくためだったのかもしれないなあ、とモグラは思った。
その木の根元に耳を当てながら、水の滴が流れていくのを感じながら、眠りについていた。
空の心臓のトクンという最後の1拍が、
その余韻まで鳴り響いた時に、
その手は確かに握られていたし、
じんわりと温かい優しさのようなものに包まれていた。
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明日には解除される話。
はて、この72日間で自分の中で何が変わったのだろう。
僕自身はウイルスで体調を崩すこともなかったし、
幸なことに周りの人でもそのような事は聞いていない。
それでも尚影響は大きく、
涙が出るほど辛い悲しい別れもあったし、
悔しいことは人よりいくらか多いような気もするけれど、
それも次の日には気にならなくなるような、嬉しいことや楽しいこともあった。
あなたの人生でいつが一番充実していますか?
と聞かれたら、多少強がりに聞こえるかもしれないけれど、
僕はさほど迷わずに今かな、とわりと真顔で答えるのだと思う。
昨日は友達のラジオにお邪魔していた。
(写真に特に意味はありませんし、yogiというカードゲームで凌ぎを削っていた遠い日の思い出。)
入りの自己紹介から、
「エントリーナンバー1番、BIGMAMAギターボーカル金井政人です!」
と彼のバンドの新メンバーのオーディションという体で、
「特技は家事全般です!」
というスタンスで挑もうと思っていたが、スタッフの方にいざきちんと、台本を差し出してもらい、丁寧に応対をされた時に、肝心なつかみの部分をボケそびれたのは非常に心残りだ。
僕の弱いところが出た形。
というテーマについて、
番組に出る前段階でいろんなこと考えた。
自分自身に置き換えると、
もう少し解釈を拡大して、表現を止めるな、発信を止めるな、という風に、もう少し自分のフィールドを広げることに注力していたところもある。結果的に音楽が真ん中にあればそこに帰着するでしょう的な考えのもと。
その点彼は真にミュージャンだなあと、誇りにも憧れにも、自戒にも近い気持ちがある。
ふと自分が、バンドが、
立ち止まってしまった時に、
止まるな!と言ってくれる人がいてくれたことを思い返す。
基本スラムダンク信者の僕からすると、物語は一番きれいなところで、熱量がピークのところで終わらせることが、作品としてもっとも美しい(山王戦以上の試合は書けないよね的な)。
そこで終わるということが正しいこともある。
株式でいう損切りだし、カジノで負けないたったひとつの秘訣は、いかに勝っているうちに止められるか、ということでもある。潔く身を引く、ということは、選択肢として、緊張感として、常にどこかで持っていないと危険だ。
(いや、そもそもやらない、という負けない、という選択肢が正しい。)
ただ、少なくとも僕は、BIGMAMAというバンドにおいて、
背中を後押す、だったり、ケツを叩く、だったり、
あるいは沿道からの声援を受けて(あくまでイメージの話です)、
まだまだあなたの新曲をきいてみたいよ、なんて、
いろんな方々に支えられて、止めない、ということを選んだ。
ただ、まだそれが正しかったことには出来ていないし、実際にその兆しもなかなか見えてこない。
それでもその道を選んだのだったら、多少時間はかかっても、もう一度、止まらなかっただけの何かを、きちんと形に残しなさいな、という話。
明日でこの連載は終わりますが、皆様、引き続き応援のほどよろしくお願いします。
それではまた明日。
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本日はwk_kirby0427さんの写真を表紙に使用させて頂いております。
褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。