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フラッシュ 08

「ちょっと一本吸いに上がっていいかな」地下五階で行われた会議は終わり、明石が天井を指差した。地下施設内は全面禁煙だ。チェーンスモーカーの明石は普段の勤務中は煙草を吸うことはないが、緊張を強いられる場面を采配してきて消耗した。

明石は地上にある喫煙所にユーハンを誘った。ユーハンはチェレンコフ光の猛烈な瞬きに意識を失いかけた。暗い所で激しい光の点滅を見ると誰でも悪心を覚えたり、平衡感覚を失ったりする。ユーハンは一瞬被爆したのかとキモを潰したが線量計は反応していなかった。水中で生じたベータ線は水に吸収されるので、ガラス越しに光をみている人間にまで届くことはない。

「会議、悪かったね、宿直なんだから職責は俺とリー君、ふたりにあるのに。外国人が駄目なら最初から採用するなって、あの老人どもに言ってやれ」ユーハンが外国人ということで、役員会議からハブにされたことを謝った。ユーハンは気にしていないですからと答えた。

ユーハンは押し寄せるチェレンコフ光を目撃できてそれで満足だった。むしろ役員会議という俗物の集まりに招集されなくてよかったと感じている。

明石は携帯電話から中央制御室に連絡し、十分ほど喫煙所にいると伝えた。

「テーラー博士くらいの物理学者になると、もしかしたら宇宙規模の空間把握の感覚も違うかもしれなくて、それなりに現実味があるのかもしれないけど、太陽の一〇〇〇倍の直径って言われても、俺正直まったくわかんないんだよね」地上へ向かう高速エレベーターのなかで、階数表示の移ろいをじっと眺めたまま明石が言った。

「私、いまだにアンタレスやリゲルと地球のサイズを比べたアニメーションを見ると首筋のあたりがぞわっとします。大き過ぎて手に負えないです」

「だよな、デカ過ぎるよな」

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