第1章 ヨウとおジィ 昔ばなし 06
日野上等兵の肩を揺すったが、身体からは温かみが消えていた。アカシアの木にもたれたその姿勢は昨日からまったく変わりがなかった。たかる蝿の数が少し増えたかもしれない。蝿にとってこのあたりに屯する日本兵に生人も死人も区別はないだろう。
大概が死んだようなものだ。日野上等兵が死に、叉銃さじゅうを組んでいた相方は全員くたばった。同じように行軍し、同じ量の糧が与えられ、死ぬものは死に、生き残るものは生き残る。両親が与えたこの身体は、まだ地獄に耐えろということなのだろう。
水が飲みたい