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株価変動の要因とその仕組み

お金を稼ぎたいと思ってネットサーフィンをすると, 大抵胡散臭いおっさんの投資話に行き着く. 確かに家で株とかの売買をするだけで巨万の富を得られたら, そんな嬉しい話はない. 

しかし株の売買をいざ始めたところでその価格の上下が予想できなければ, ただのギャンブルになってしまう. 全ての結果には原因がある. きっとその価格変動にも原因がある. 

それだけじゃない. 経済の小難しいニュースを見ていると口を揃えて「日経平均株価が...」なんて言っている. 株価の上下動は一体何を表しているのか. 

その答えに少しでも近づくために, 著者らが学習したことを備忘録としてここにまとめておくことにする. 

1.取引の仕組み

株価が時々刻々と変化しているとき, 我々の知らないところで何が行われているのだろうか. 実際の取引の様子がわかれば, 少しはイメージしやすくなるかもしれない. 

1.1 株式市場の構造

株式は個人間とか直接会社から買ったりはできない. 言われてみれば, 街中でそんなことが行われているのは見たことがないので当然だ. 個人や会社が株を買ったり売ったりするときに, その注文をするのが証券会社だ. 野村證券とか大和証券とかがそれに当たる. 

証券会社は, 株式を買いたいという注文(買い注文)や売りたいという注文(売り注文)を受けると, 実際に取引がまとめられている証券取引所にその注文を回すことになる. 基本的には全ての取引がここで行われている. ここにまとめられた売買の傾向から需要と供給のバランスで 価格が時々刻々と変わっていく. 

つまり株式の取引がまとめて行われているのが証券取引所. それを仲介するのが証券会社である. 

株式 図.001

1.2 株式の種類

この証券取引所で取引されている株式は全て, 公開株式と言われる上場した企業の株式で,これが一般の人や会社が証券会社を介して売買ができる株式のことである.一方, 上場していない会社の株式は未公開株式と呼ばれ, 創業者や親族,取引先,VC(ベンチャーキャピタル)に対して資金提供の見返りとして発行する株式がそれにあたる.

1.3 市場の種類

公開株式は上場した企業の株式だといったが, ではどんな条件を満たした企業が上場し, 株式を公開することができるようになるのだろうか. 

東京証券取引所

先に述べた証券取引所は国内に4つあり, よくテレビに映る東京証券取引所がその中の一つである(上図).実はその東京証券取引所の中には5つの異なる市場がある.マザーズや東証一部というよく聞くフレーズはこの東京証券取引所の中の市場を指している. 

それぞれの市場により取引される企業の株式に違いがあり, 大雑把に見れば, 東証一部は大手企業,東証二部が中小企業,その他がベンチャー企業といったところだ.それぞれの市場への上場の条件が下図にまとめられている.  

上場条件図

この上場に際して条件を満たしているかの審査をするのが先に述べた証券会社で, これを通過してさらに証券取引所に推薦書を提出することで, 晴れて上場申請ができたことになる.

さて, 取引の仕組みはわかった. では, 誰が, どんな心情で売買をした結果, 何に起因して株式の価格は変動するのだろうか. 

2. 株価の変動

株式を買いたい人が多くなれば, 供給が高くなるので価格は高くなり, 一方で売りたい人が多ければ供給多寡で価格は安くなる. 当然だ. 

株式の売買は, 数株ずつしか購入しないような個人投資家もいるが, それに比べれば大きな額を投資できるのが, 企業やクジラと呼ばれる大口投資家である. 

そこでこの後者の, 企業や大口投資家による売買が株価の上下に与える影響が大きいという仮説を立てることができる. 

企業や大口投資家たちは何を求めて株式を売り買いするのだろうか. 

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2.1 株式の価値

企業が別の企業の株式を所有するメリットの1つに経営に介入する権利がある. 

会社は株式を発行することでそれを所有した人から経営資金を手に入れることになる. その見返りとして, その株式所有数に応じた権利を手に入れられることになる. 

所有する株式が, 発行株式の3分の1を超えると企業の決定事項に拒否権を,半数を超えると役員の選出を,3分の2を超えると会社を解散・合併の承認などをできるようになる.

株式を持つだけで経営に介入できるというのは, 当たり前には感じないが, こう考えれば良い. 

ある家族の長女はアルバイトをしていて貯金が3万円あった. しかし6万円の欲しいものがあったので, パパから3万円をもらった. このときこのもらった3万円の使い道に父が制約を与えた. 「せっかく良いものを買うなら長く使える物を買いなさい. 遊びに使ってはダメだよ」娘はうるさいと思うだろうが, 父からもらったお金だから文句を言えない. 

お金を挙げた側の父が, 娘のお金の使い方に文句を言えるように, 資金を提供した株主が, そのお金の使い方(経営)に文句をいえるというわけだ. 

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つまり, 企業や大口投資家による投資は, 資本主義の仕組み上最も優雅なパトロン活動であると言える. 

もちろん, 投資額が多ければ売買での差額から得られる売却益や, 株主に一定期間ごとに配布される配当金も大きくなる. 

この株式の持つ事による経営に介入する権利と, 配当や売却益を得る権利が株式売買の基本的な動機になる. 株式売買の動機がわかればその価格変動の要因がわかるまでもう一歩だ. 

2.2 ミクロ要因

今まで述べたように投資家たちはその経営権売却益などを求めて株式を売ったり買ったりする. 

そのため投資家たちは, 自分達にはないアセットを持つ企業の経営権を手に入れたいと思ったり, 企業の1株あたり価格が向上すると期待できるような企業の株式を購入することになる. 

最も単純化すれば, こんな流れが想像できる. 
技術やビジネスモデルなどで優位な(になれそうな)企業ができれば, 経営権を求めて大口投資家による株式購入が起こると予想できる. つまり株式の需要が高まりそうな企業だということだ. さらにそれを予測した投資家たちは将来の売却益を求めて株式を購入する. そうするとさらに需要が高まり, 株価は上昇する. 

もちろん株価が下がる時にはこの逆のことが起こる. 実際のダイナミクスはここまでシンプルではないが, 上記のように想像すればわかりやすい. 

つまり, このような企業の評価に伴う株式の需要が増減する要因が, 株価の変動要因である

この企業の評価に影響を与えうる内容としてはこんなものがある. 

企業業績(利益成長等)
    ... 売上や営業利益, またはその増率などで判断される業績
M&A,買い占め等
    ... 企業の買収や企業の株式の買い占めが起こると買収元の
        企業の業績などにより株式が動くことが多い. 
株式分割,有償増資
    ... 株式の全体数を増やす取り組み.全体の株式が増えたこと
     により1株が表す株式の権利が小さくなる(株式の希薄化).
     これにより株価は減少する傾向にある.

個々の企業の動向による株価変動の要因を個別要因またはミクロ要因と呼ぶ. 

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2.3 マクロ要因

ここまで企業の経営に介入する権利やM&Aなどに伴う大口投資家たちの動向にフォーカスしてきたが, 少額投資をしている個人投資家の動向は無視できるのであろうか. 答えはNoである. 

もちろん, 1人の動向が株式変動に与える影響は小さい. しかし, 彼らがまとまって似たような売買をしたら, その影響は大きい. つまりなんらかの外的要因から集団心理が働きそれが売買の傾向に現れるパターンである. 

このように市場のここの企業によらず, 外的な行動傾向に伴う株価の変動要因をマクロ要因と呼ぶ. 

その最たるものがいわゆる景気などに代表される経済的要因である. 経済的な影響が集団心理に影響を与える例は以下のようなものがある. 

景気:良くなるとモノが売れ → 利益の増加 → 株価の上昇
金利:低くなるとお金を借りて設備投資が増加 → 株価の上昇
為替:円安になると輸出メインの会社の利益増加→株価の上昇

パンデミックなどに伴う株価の低下も結果としてこれを生むことになる.

それ以外にも政治的な要因もあるだろう. 例えば, 国の金利政策が企業活動に影響することを危惧して株価の集団的な売買傾向が現れることは容易に想像がつく. 

2.4 日経平均株価

株式は個々の企業の動向ではなく, 政治的経済的に起こる集団心理によって起こる株価変動の要因ががマクロ要因なわけだが, これは単純に全ての企業に対して株価の平均値をとってやれば, 各企業間の差が相殺されるわけだから簡単に見ることができる. これが日経平均株価である. 

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これを見るとどのような政治的経済的動向が集団的な売買行動を促すかがよくわかる. 各企業の業績による変動(市場要因)がうまく取り除かれ市場全体の要因により日経平均は変動している. 


以上が我々が株式の変動を俯瞰するために学んだ内容である. あまりに基礎的で退屈する読者もいることと思うが, 日本の教育において最も重要度の割に学ぶ機会の少ないものがお金だと思っている. そのため多くの人にとって株式はその参入障壁が高く, かつ我々のようなリテラシーレベルにある人に対する解説文は少ない. 今後もさらに理解の粒度が高まるよう精進しようと思う. 



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