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【企業分析】 SanSanのビジネスは名刺管理ではなく "縁の管理" かもしれない

1. sansanの歴史

2007年6月11日 三三株式会社(現 Sansan株式会社)を設立
2007年9月 法人向けサービス「LinkKnowledge」(現 Sansan)を提供開始
2012年2月 個人向けサービス「Eight」を提供開始
2019年6月 東京証券取引所マザーズに上場

■創業ストーリー

株式会社sansanの創業者 寺田親弘さんは, 幼少期から戦国時代が好きだったようで, 天下を取ることこそ彼の大望であり, それは現代で言う所の起業だと考えていたんだそうです. 

創業前寺田さんは, 三井物産でシリコンバレーのベンチャー企業に対して日本向けビジネスの展開を担当していました. その頃, 社内外の人脈の重要性を痛感したとともに, その橋渡しとなる名刺の非行率さに衝撃を受けたことが, 株式会社sansan創業の原体験になっています. 

■上場へ向けて

名刺管理サービスの提供開始して4年目にして黒字化を達成した株式会社sansanですが, 当時創業メンバーは「こんなはずじゃなかったのに、しょぼいな...」との思いが拭えなっかたそうです. 

この頃からsansanは明らかな成長を見せはじめます. 2012年2月には、個人向けサービス「Eight」を提供開始, 顧客が増え始める成長ステージでの資金調達に当たるシリーズAでは調達した5億円はテレビCMに投じられます. 今では「それ, 早く言ってよ〜」という耳から離れないフレーズも, 知らない人は少ないでしょう. 

その後2018年12月の資金調達を持って, 資金調達後評価額は1010億円に到達. 日本でメルカリとプリファードネットワークスに次いで国内3社目のユニコーン企業へと躍り出ます. 

ここでは, 世界から「それ, 早く言ってよ〜」をなくすべく行われる, 彼らのビジネスを俯瞰します. 

2. ビジネスモデル

株式会社sansanのビジネスの柱は2つの名刺管理サービスです. 

・BtoB名刺管理SaaSの「sansan
・BtoC名刺管理SNSの「Eight

■sansan

社名をそのまま授かった名刺管理サービスsansanは, 大量の名刺の正確なデータ化や効率的な管理を実現する社内名刺管理プラットフォームです. 

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上の図はsansanのサービスフローです. 

まずsansanでは名刺をスキャナやスマホでスキャンするだけで99.9%の精度でデータ化できます. そこに使われている高度な文字認証技術(OCR, optical character recognition)を主とする高度なAIテクノロジーはsansanの大きな特徴の1つです。

次にそのデータをAIで管理します. これによって会社名や部署などの単位で人物情報を分類し、人事異動などの事件に従ってリアルタイムに反映することが可能になります. 

最後にこの名刺データををAPIを利用した外部連携により活用します. 

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社員たちが交換した名刺を管理することは, それすなわちステークホルダーの管理に相当します. ここで挙げられているように, CRM(Customer Relationship Management, 顧客管理)の代表的なサービスsalesforce をはじめとする業務改善プラットフォーマーと連携することで, ビジネスを出会いから効率化してしまうことができます. 

月額課金制のサブスクモデルを採用しているsansanのビジネスモデルは下の図のようになっています. 

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■Eight

一方Eightは名刺管理SNSをスマホアプリとして提供するBtoCビジネスの形態をとっています. 

相手の転職や昇進を把握できる他に, 投稿に対して「いいね」ができるあたりはまさにSNSです. 

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Eightはスマホで自分の名刺をスキャンするだけでプロフィールを作成できる簡便さはsansanと同様ですが, そのSNSという形態をフルに使ったマネタイズメニューが多数存在します. 

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Eightは基本的なSNSとしての機能は無料で使えますが, 便利な以下のような追加機能を利用しようとするとお金がかかります. いわゆるフリーミアムモデルってやつです. 

Eightプレミアム
月額480円を支払うと, 名刺データのダウンロードや連絡先アプリとの連携ができるようになります. 

Eight企業向けプレミアム
EightはSNSですから個人での名刺管理はできても社内の一元管理はできません. それを実現するのがこのオプションです. 

Eight Ads
Eightのユーザーに対して広告を配信するサービスです. サービス利用者は各投稿の間に挟まるように提供させる, いわゆるインフィード広告を配信することができます. BtoB商材と親和性が高いEight ならではのうまいマネタイズオプションですね. 

Eight Career Design
Eightに登録されたユーザーのプロフィール情報や人脈情報を企業が求める人材像とマッチングさせてダイレクトリクルーティングの環境を提供している採用プラットフォームです。

Meets
Eightのテクノロジーを活用し、サービスを「買いたい人」と「売りたい人」とをつなぎ、社会の生産性を上げるビジネスイベントです。
企業の営業活動及び購買活動に存在する無駄を無駄を排除します. 

ここまで多くの追加機能があると, 考えれられる全ての有効なオプションを実装したような印象を受けますが, ここにマネタイズのチャンスを感じていることがよくわかります. 

Eight Career DesignとEight Adsにフォーカスするとビジネスモデルは下の図のようになります. 

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3.sansanのビジネスは名刺管理か・・・

sansanはここ数年で名刺管理機能・顧客情報を入り口とした、さまざまな機能提供を始めています. 

社内のあらゆるデータを正規化・統合・リッチ化する Data Hub , 反社チェックオプションpowered by Refinitiv や, BtoB企業のセミナーに必要なアンケート機能を Sansan と連携しながら提供できるpowered by CREATIVE SURVEY など名刺交換を皮切りにできた縁を最大化できる機能は拡大は止まりません. 

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Eightの多様なマネタイズオプションの多さにも驚かされました. 

ではなぜここまで, 名刺管理サービスはCRMや広告, さらには人材マッチングにまで拡大しデータドリブンなビジネスを作ることができたのか. 

それはおそらく人の縁がそれほどまでに人間の社会活動に重要な意味を持つからでしょう. 

人は一人では何もできません. ビジネスを作ることも, 物を売ることも
仲間と協力することで始めて具現化されることは少なくありません. この文章でさえも, 筆者の執筆以前に, 調査や下書きを作成をしてくれた友人がいます.  

それに加え, 何よりサービスを提供する相手がいなければ商売は成立しません. そのサービスを本当に良いと思って利用してくれる顧客やクライアント, そしてこの文章を今読んでいただいている読者. 
必要としてくれる人がいて初めて物には価値が生まれます. 

sansanが事業を通して行なっていることは, 名刺管理という乾いたビジネスコミュニケーションの媒介ではなく, たまたまできた縁を互いの利益のために最大化することを目指す縁の管理かもしれません. 

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