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デザイン仕事 / SKATE DECK。

4/24(金)STAY HOMEな日々が続く。もともと2012年より東京から栃木に住まいを移し、リモート中心で仕事をしているから、仕事のやり方自体はこのコロナ時代において変わってはいない。でも、近所の友人のカフェにお茶をしに行ったり、友人が営む古家具へ行ったり、大好きなサウナに行く事も我慢しているため、なかなかの苦行だ。それも仕方ないことだと割り切っているんだけれども。それにしても家から西を見ると里山の稜線が続いていて、大好きな景色なんだけど、いやにはっきりとその稜線が見える。どうやらこの自粛が空気を浄化しているのではないのか。インドから四半世紀ぶりにヒマラヤが見えたみたいなニュースも見た。ナウシカ時代だ。

グラフィックデザインの仕事をするようになり、そのうちやれたらいいなぁ、と密かに思っている仕事がいくつかある。というかたくさんある。基本的には依頼を受けてデザインするのがデザイナーなので、そのやりたい仕事が入ってくるとは限らない(そもそも仕事自体が入るとも限らない)。とはいえ、言葉にするのも大事な事なので、それとなく、要所要所でのアピールも重要だったりすると思う。いわゆる言霊ってやつなのかもしれない。「いずれ『エルメス』となんらかしら仕事がしたい、まじで。『エルメス』のアイテムは何も持っていないけど。」こんな感じでとりあえず言ってみる。でも本当に『エルメス』の仕事ができたら素敵だろうな。銀座の『エルメス』には無料のギャラリーがあり、その取り組みが素晴らしい。僕みたいな年中ジーンズにスニーカーのようなヤツにも門戸が開かれている。何度か訪れるうちに、『エルメス』の姿勢が大好きになった。

もともと中学の時(94年ごろ)にスケボーが友人たちの間で流行り、そこでアメリカのカルチャーの洗礼を受けた。デッキ(スケボーの板)のデザインに自由を感じ、スケーターのファッションに影響を受け、そしてスケートビデオから音楽やノリを学んだ。この衝動がなければ、今こうしてグラフィックデザインの仕事をしていなかったかもしれない。それくらいショッキングな出来事だった。ただスケート自体は全然うまくならずに自分のセンスの無さに心を砕かれた。なので未だに「スケートがうまい」というだけで、心からリスペクトをしてしまうし、どんなにダメなヤツでも嫌いになれない。

そんな感じで下手くそながらにスケートカルチャーはずっと好きだった。そのスケートカルチャーが入り口になって、僕はアメリカの音楽がより好きになり、特にHIP HOPに傾倒していく。97年『ZOO YORK』というブランドが出した『MIXTAPE』というビデオはスケートカルチャーとHIP HOPが見事に融合している作品なので、気になる人は調べてみてほしいです。90年代のNYの空気がこれでもかとパッケージされている。

という事で、スケートデッキのデザインがいずれやれたら幸せだなぁと思っていた。自分のデザインしたデッキをどこかの誰かが、数あるデザインの中から選び、そしてボロボロになるまで滑ってくれたら最高だ。そんな自分にチャンスが訪れたのだ。ある時、知らない連絡先からメールがきた。神奈川の登戸に今度スケートショップをオープンさせるにあたり、お店のロゴのデザインをお願いしたい。という内容だった。もともと99年あたりのまだネットが普及する前から海外から買い付けてきたスケートデッキやそれにまつわるアイテム、スケートブランドのアパレルをネットで販売をしてきたという老舗のお店だった。もちろんOKの返事をし、一度会って打ち合わせをする事となった。ただ、どこから僕のことを知ったのだろう?と不思議だった。

打ち合わせは代田橋の事務所に来ていただいた。年齢は僕よりも10個くらい先輩だった。バリバリのスケーターを経て、ひざを悪くし、今はサーフィンがメインというナイスな方だった。スケーター特有の飾らなくシンプルな服装なんだけど、かっこいいアレだった。そこでどうやって僕を知り、オファーをくれたのか聞いてみると予想外に嬉しいものだった。今回のお店を作るにあたり、お知り合いに色々とデザイナーがいないか聞いていたらしく、そこで僕がヒットしたという事だった。しかもその紹介してくれたというのが、写真家で僕が常々リスペクトしている平野太呂さんという事だった。太呂さんとはマガジンハウスのバイト時代『relax』で初めてお会いして依頼、カッコイイ東京の先輩として不動の位置にいる。会うと緊張してしまい、そんなにたくさんの話をした事も無いのだけれど、写真も人柄もとても好きな先輩だ。その太呂さんから僕の名前が出ていたという事に驚いた。人生はどこに何が転がっているか分からない。

お店のロゴのデザインとともに、デッキのデザインも頼まれる事になる。しかも同時に3種類作りたいという。ようやく一つ目標が叶う時だった。しかも、きちんとアメリカのスケートブランドも作っているしっかりとした工場で作るとの事だった。ただ僕の悪いクセで思い入れが強い仕事ほどなかなか手がつかない。ロゴはオープンの関係があるので期日内にきちんと納めたが、デッキのデザインは時間がかかってしまった。あれこれ悩んだ末、あまり深く考えず、連作とし、シンプルな色とイラストとのデザインに落ち着いた。

願えばすべて叶うのか?といえばそれは違うと思う。ただ、願っていればその距離は近くなるとは思う。そんな話。

※ このスケートショップは『STOKE SKATE RETAIL』といい、登戸に実店舗がありながら、オンラインも充実しています。

※ 僕らで運営する『LIKE THIS SHOP』でも扱っています。

https://likethisshop.jp/

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