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【緊急事態】佐賀の今後を考えてみよう

佐賀バルーナーズで2シーズンを戦い、今季のB2優勝・B1昇格の原動力となった#7西川貴之。その彼が大阪エヴェッサへと移籍してしまった。

(有料部分なので細かくは言いませんが)少し前に書いた記事で、「ウイング補強が肝」と書いたものの、「ウイングの軸を作らなければ、即ち…」という状況にまで一気に進展してしまった。そこで今回は基本的には全文を無料記事として公開しつつ、佐賀に訪れた緊急事態に対する処方箋をいろいろ考えていきたいと思います。

公開後追記①:佐賀の歴代インサイド陣において、中西良太選手の存在がすっかり抜け落ちたままにしてしまっていました。ご指摘を受けて追記しております。
②:フィーラー選手が残留決定しましたのでその旨も編集しております。

大前提:西川の大黒柱ぶりを思い出そう

今季の西川はB2全体を取っても超優秀なSFだったと言える。日本人(日本出身)選手の中でトップの平均得点(14.6。次点は宇都直輝で10.9PPG)を叩き出しただけでなく、3P成功率、FT成功率なども昨季より大幅アップ。シューター・スコアラーとして復活をアピールできたシーズンとなった。

ポストシーズンでもその得点力が落ちず、佐賀にとっては#25角田太輝ともども理不尽さを見せつつ暴れ回り、B2優勝・B1昇格に最後まで貢献を続けたのだった。

どうやって対処するか

佐賀にとってはサイズもある、当然得点源としてのオプションである、ドライブも割合行ける方ということで、かなり替えが効かない存在を失ったことになる。例えば大型PGである駒沢颯の退団、サイズのある若手ウイングだったトロイ・マーフィーJrの自由交渉選手リスト入りに対して、大枠では同じキャラ付けができてしまう笹倉怜寿と井上宗一郎の補強というトンデモで対処してしまった越谷アルファーズのような手が打てれば良いのだが、現実はそればかりにも行かないはずのところ。

このオフに直面している佐賀のチーム事情も含めて、再編の鍵を探りたい。

佐賀の事情

佐賀はそもそも外国籍PGの#2レイナルド・ガルシアがチームの核でもあったわけで、彼の当たりの強さは3季経ってもB2では確たる止め方が見出せなかった。

そうであるがゆえに外国籍や帰化選手、あるいは日本人ビッグマンを用いたサイズの確保は至上命題であり続け、2020-21シーズンにおいては、このシーズン在籍した中西良太がメインローテの一員として存在感を見せ(シーズン途中からは特別指定で川真田紘也も加わった)、その後はファイパプ月瑠や満原優樹で耐えしのいでいた。また、チームの軸となる外国籍選手がなんだかんだとSF/PFタイプとなることもしばしばで、これまでもマルコス・マタやペリー・エリス、今季もチェイス・フィーラーがそのポジションに座ってきた。が、強度があったかどうかは別問題。

その後のオフシーズンにおいて、ガルシアや満原、フィーラーが残留したほか、主立った首脳陣も宮永雄太HC兼GMを含めて続投が決まっている。そんな状況の中で大幅なスタイル変更は、流石に現実味のある路線ではない、という感じである。

①補強するならば

現状の自由交渉選手リストから考えます

現時点では#22ミカイル・マッキントッシュや#23テレンス・キング、さらにはファイも自由交渉選手リストへと公示している佐賀。ということで外国籍や帰化選手も含めたビッグユニット形成も考えておきたいところ。例えばBリーグの自由交渉選手リストを鑑みて、獲るならこの人、という選手はいくつか思い浮かぶ。ここは一旦予算事情などを一切無視して話を進めるので、その点はご了承いただきたい。

佐土原遼(広島)

すっかりCSで株を上げた感もある佐土原。元々高いウイング適性を持ち、今季序盤に広島が採用していた「軽め・高め」を志向するラインアップの中では、しっかりハマるところを見せていた。恐らくパワー系ドライブを魅力とするSF…というロールを任せるならば、比較的適任ではあると思われる。というかリスト入りしてからまだ抹消されていないのそろそろ不気味じゃないですか?

彼を獲るならば、例えばアレックス・デイビス(青森)など、運動力とポストプレーを確保できるビッグマンも合わせて確保することも必要となってくるだろう。いずれもB1経験、CSまで経験しているだけに、チームにとっては良い影響を出せるはずだ。

アキ・チェンバース(群馬)

先ごろ発表されたワールドカップの日本代表候補にも名を連ねるチェンバース。群馬を退団し、彼もまた来季所属が明かされていない。強力ハンドラーがいる中での5outバスケへの適応ぶりは、群馬でも証明済みと言える部分。ただ、群馬での2シーズンでなかなか出入りの激しいパフォーマンスを見せていたところもあったわけで、欲を言えば安定感をもっと出していきたいところではある。

また、群馬在籍時はハンドラー陣が強力すぎるがゆえにコーナー待機が基本となってしまっていたわけで、西川の穴を埋めるのならば、もっとポジションレスにボールをもらいに行く、決めに行くという動きも求められる。守備貢献の高さは十二分にできているところは見せてきただけに、オフェンスでの役回りについては首脳陣とのコミュニケーション力も問われるところと思われる。

パブロ・アギラール(長崎)

こちらはビッグマン補強に振り切った部分の話題。B2西地区を戦った宿敵から、守備貢献もできる、それなりの走力を持ったビッグマンであるアギラールという選択肢に注目しておきたい。

元々川崎時代も万能ビッグマン+トランジション整備ということで強みを見せていたのだが、コーナーシューターに据えても戦えるだけの理不尽さは長崎でも健在だった。どうしても軸になるようなセンター不在、というかそもそも構想的にセンターを置きづらい中では、どこにおいても火力を計算できるPFの存在はかなり重宝されるところでもある。

その他の候補選手多数

ここに挙げた以外にも、候補となるような選手は多数いるわけで、ここでズラッと並べておきたい。正直多すぎるぐらいいるのだが、多分もっと候補になり得る選手はいるはず。お眼鏡に適う選手はきっといるだろう。

これの作図だけでまあまあ時間を食ったので見てやってください

②現有戦力の底上げは

過去の昇格組を例に取ると

こうしたことがままならない中では、ウイングの軸を敢えて立てないままシーズンに突入するという手も存在する。近年の昇格組では茨城ロボッツや仙台89ERSなどがここに手を付けているので、彼らの戦いぶりもここで紹介しておきたい、が、ぶっちゃけ昇降格が絡む中ではまあまあ修羅の道なので初期からそれを目指すのはおすすめしたくない。

茨城はそもそも軸としたかった西川の退団がシーズンの初期に発生し、残るSFは遥天翼ただ1人という状況に。本来インサイドを期待された谷口大智が一時的にSFムーブを担当するも、これが常態化はせず。

鶴巻啓太の覚醒や中村功平の復調が見えるまでは、平尾充庸、多嶋朝飛、福澤晃平の3PGを採ることに。中盤以降は鶴巻がウイングの軸となったものの…。

シーズン終盤からはケガ人オンパレードで再び3PGが基本線にならざるを得ず。途中加入のハビエル・ゴメス・デ・リアニョも守備の不安からプレータイムを得られず…という具合だった。最終的にシーズン16勝を挙げて、(降格制度がない中でも)一応最下位戦線から脱することができたものの…という戦いだった。

仙台はPG陣に不安を抱えつつも、2PG+SGの田中成也を基本形とすることを選択。寒竹隼人と加藤寿一のSFコンビが、なかなかファーストオプションとなりきれない時間が続いていった。シーズン中盤になると渡辺翔太と田中が離脱してしまい、こうなると一気に機能不全の気配が忍び寄る。

大概な野戦病院状態の中で、PGとして青木保憲という軸を確保できたことで、まずは落ち着きを図り、シーズン終盤には渡部琉がローテーションに加わった。とは言えなかなか残留確定には至ることができず、残留を決めたあとも、最終盤にガス欠のように連敗を重ねてしまったことは反省材料ではあった。

そうなると佐賀で大事なのは

ガルシアは来季こそ健康でいられるのか
角田の覚醒が続くかどうか
井上諒汰が化けるのか

これらは(特に前2つ)は必須になると考えて良い部分。特にチームの肝でありながら、なぜかちょこちょこといなくなることがあるガルシアが、来季こそ健康体でなくてはチームが回っていかない。そもそも彼がいない前提であれば、本職PGは岸田篤生ただ1人であるという状況でもある。PGが足りなくなるとどうなるか…というと昨季仙台の絵面になることが容易に想像できるだけに、ここは注意深く見ていきたいところ。

2つ目は、プレーオフで「ヒゲのないガルシア」として暴れ回った地元プロスペクトの角田が、B1でも期待値以上の活躍を果たせるか。高望みかもしれないが、彼が平均15得点とかやってしまえるのならば、この辺が杞憂になっていく。だが、歴代B2で暴れ回ったシューターがB1初年度でどうなったか…という場面に立つと、まあまあ厳しい時期が訪れるのもまた事実(大体長谷川技に1回は無力化される)。スコアラーとしての飛んでる加減で言えば、茨城・福澤のような輝きを年に5試合出せれば、その後に向けても期待が持てるというものだろう。

その一方で、どこかここ数シーズンで序列を落としつつあった井上が、もう一化けしてくれないと、ウイングローテーションそのものが破綻の危機を迎えてしまう。ガルシアを含めた2PG+角田が入ったり、あるいは帰化選手が加わることでのビッグユニットが発生したりと、やや立場の不安定なポジションではあったのだが、SF登録の選手としてはかなりのアンダーサイズ(185cm/77kg)とは言え、彼がせめて3&Dを遂行しきれないと、チームがどんどんと手詰まりを迎えてしまう。チームに対して、戦略を選ぶ余地を作るためにも、彼が伸び悩んでいる暇は無いのだ。一歩も引くことなく戦ってほしいところ。少ないチャンスも逃さず仕留め、器用さも発揮するという意味では、仙台・渡部のような出番をどれだけ早い時期に掴めるかが重要になる。

B1で実際に戦うより前に、不安を煽り続けても仕方がない。期待を持たせるだけの結末を、佐賀バルーナーズが用意できるのか、ここから彼らが出してくる回答に注目をしていきたい。

※せっかくなので、お布施ボタン的に有料部分を置いておきます…(この下には何もないです)。お気に召した方は購入していってください。

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