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【備忘録】ステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』(その2)

ステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』で私が特に多くの人が知った方がいい、と思っている箇所を紹介するその2(最終回)です(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。その1はこちら

他にも重要な記載がされている箇所はありますが、あまり長くなるのも何ですので、あとは本書をお読み頂ければと思います。名著です。

MMTは税金が重要である理由を少なくとも4つ挙げている、と説明した。(中略)税金によって政府はあからさまに強制することなく、必要なものを手に入れることができる。もしイギリス政府が国民に対してポンドを使って税金を納めるよう求めるのをやめれば、政府の調達力はたちまち損なわれる。(p55)
税金が重要なのは、政府が支出をまかなうのに必要なためではない。政府支出によってインフレという問題が発生するのを防ぐのに役立つからだ。同じように国債の売り出しが重要なのは、政府の財政支出をまかなうためではない。過剰な準備預金を除去することで、FRBが金利目標を達成するのに役立つからだ。しかし準備預金に利子を支払うことになった今、FRBは金利目標を達成する手段として国債に頼っていない。(p134)
本当に国家債務をなくしたいなら、そんな苦痛をともなわない方法がある。(中略)中央銀行が準備預金と引き換えに国債を買い入れるのだ。(中略)連邦準備銀行でキーボードを操作するだけで実行できる。もう1つの選択肢が、時間をかけて米国債の発行を徐々に減らしていく、というものだ。赤字支出から生まれる準備預金を除去するために国債を売り出すのをやめ、準備預金をそのまま市中にとどめておくのだ。(p135)
社会保障制度という名前自体に、ルーズベルトの構想を理解する手がかりがある。ルーズベルトは1944年の一般教書演説で、自らの壮大な構想を経済的権利という言葉で説明した。そこには「有益で正当な報酬が得られる仕事」に就く権利のほか、十分な収入や住居や医療を享受する権利、そして加齢、失業、事故などの不幸によって経済的苦境に陥らない権利などが含まれていた。(p212)
インフレを引き起こさず目標を達成するのに十分な生産能力を確保するため、必要な投資をしなければならない。そのための行動、たとえばオートメーション、インフラの強化、教育機会の拡充、研究開発、公衆衛生の改善は、すべて未来に向けた賢い投資だ。(p245)
政府の財政赤字を憂える必要はないが、それとは別の、本当に重要な赤字、つまり不足や欠落がある。まっとうな雇用、医療サービス、質の高いインフラ、クリーンな環境、気候変動対策などが足りていないのだ。(p251)
経済運営の主導権を財政当局に移すというのは、民主的に選ばれた議員に、財政赤字を増やすことで経済を支えられるときには財布の紐を緩め、反対に経済が完全雇用という制限速度に到達したときには財布の紐を締める役割を委ねるということだ。それがアバ・P・ラーナーが1940年代に提唱した「機能的財政論」の本質だった。ラーナーは政治家に、財政赤字だけに気をとられ、財政を均衡させることに躍起になるのではなく、完全雇用と経済の均衡を維持するような予算の策定を求めた。(p310)

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