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【備忘録】ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』(その2)

『ミンスキーと<不安定性>の経済学』で私が特に印象に残ったり箇所を抜き出して残しておく記事の「その2」です(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。その1はこちら。

前回は全8章のうちの第3章までの引用でしたが、今回は「第四章 貨幣と銀行業務に対するミンスキーの考え方」、「第五章 貧困と失業に対するミンスキーのアプローチ」、「第六章 ミンスキーと世界金融危機」の紹介です。次の「その3」で終了になります。

ほとんどの人は、銀行は融資が実行できるように預金が入ってくるのをのんびり座って待っていると考えている。しかしミンスキーは、それは「貸金業者」のビジネスであり、銀行のビジネスではないと論じた。(p108)
FRBは、FRBにある銀行の「当座預金」に振り込む準備預金をどこで手に入れるのか。FRBは、紙幣の印刷、あるいは大部分を準備預金口座にキーストロークすることによって、銀行準備を「無」から創造しているのである。
(中略)
「銀行は、顧客の口座に与信する預金をどこで手に入れるのか」と尋ねてもいい。またしても答えは「無」からの創造である。預金は、銀行の貸借対照表に負債として、顧客の貸借対照表に資産として記帳されるのである。
一つの様式があるのだろうか。貨幣は、常に「無」から創造されるということである。現金を除けば、貨幣は貸借対照表への記帳としてのみ存在する。(p110~p111)
過去には、銀行は最終決済のために準備預金を必要とするのだから、銀行は融資を実行する前に超過準備を必要とすると信じている人たちがいたが、われわれは今や、銀行がそのように業務を行っていないことを知っている。そうではなく、銀行は必要になった時に準備預金を手に入れるのであり、銀行は前貸しを行うことによってまず預金を創造し、あとで準備預金を探し求めるのである。
FRBは、その主要な政策変数であるフェデラル・ファンド金利を政策目標としている。金利への圧力(決済のための準備預金に対する超過需要は金利を押し上げ、準備預金の超過供給はそれを目標よりも引き下げる)が存在する場合、FRBは介入する。その介入は、(金利上昇圧力を抑えるために)国債を購入し、あるいは(公開市場操作での売却は準備預金を減らすので、金利下落圧力を抑えるために)国債を売却することによって実施する。(p117)
ミンスキーは早くから、民間部門主導の景気拡大は、予想営業収入に比べて債務返済を増加させるので、民間債務を増加させ、金融の脆弱性を強める傾向があると主張していた。それにひきかえ、政府部門の支出に主導された景気拡大は、安全資産(財政赤字になった際に発行される国債)を供給することで安定性を実際に高めることができる。(p144)
需要刺激策は、経済を完全雇用に近づけるかもしれないが、同時に金融の脆弱性とインフレをもたらすリスクの高い行動を助長するので、その状態を維持することはできない。(p145)
ミンスキーは、消費は総需要の中で最も安定的な構成要素であると主張していた。というのも、家計は所得のうちのかなり大きな割合を安定的に消費に回すからである。消費が、負債ではなく所得で賄われている限り、高消費経済はより安定的である。そのため、ミンスキーの代替案は、分配の最下層で賃金と所得を増やす政策を原動力とした(高投資ではなく)高消費を促進する政策を重視する。
さらに、政府支出、とりわけ賃金に対する支出が、成長を生み出す上で大きな役割を果たすべきである。
(中略)
ミンスキーは、「どうすれば所得分配を改善できるか」(Minsky,1972,p.5)と問い、「まずは完全雇用によってである」と答えた。(p146)
「好況の継続」は一層大きなリスクをとることを促し、金融危機が政府の迅速な介入によって解決されれば、不安定性の増大が助長されることになる。(p160)
新しい金融慣行の(ほとんどではないにしても)多くは、金融機関の経営トップを信じられないほど金持ちにするだけで、社会的な目的には全く貢献しなかった。(p164)

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