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「部長、キーボードに親でも殺されました?」仕事ができない人は、なぜタイピング音がうるさいのか――

「カタカタカタ、タターーーーン!!」

皆さんの周りにも、キーボードのタイピング音がうるさい人はいないでしょうか?

オフィスはもちろんのこと、カフェや電車などでもタイピングがうるさい人が近くにいると気になってしまったり、嫌な気持ちになったりしますよね。「キーボードに親でも殺されましたか?」と聞きたくなってしまうくらいの人が、私の周りにも何人かいます。

実は「キーボードのタイピング音がうるさい」という現象には、多くの“ムダ”や“課題”が潜んでいるものです。そして、それにご本人が気づいていないということは非常に問題であり、ビジネスパーソンだとすると『仕事ができない人では?』『生産性が悪いのでは?』と思われてしまいます。

これは、日本にとっても重要な課題です。公益財団法人 日本生産性本部が発表した『労働生産性の国際比較2023』によれば、日本の一人当たり労働生産性は、85,329 ドルで、OECD 加盟 38 カ国中 31 位です。自国の順位だけでみると、1970 年以降で最も低い順位に落ち込んでいる状況なのです。

私自身、「ムダ」を嫌うトヨタの現場で育ちました。トヨタといえば『カイゼン』というキーワードでも有名で、生産性も高いイメージがあるかもしれません。そんな私が、「カタカタカタ、タターーーーン!!」という『キーボードのタイピング音』に潜むムダや課題、さらには改善点に気づきましたので、ここで解説していきたいと思います。

皆さんも自身の「キーボードのタイピング音」を意識して、ともに『仕事ができる人』を目指していきましょう。


第1章 タイピング音がうるさい人は「動きにムダが多い」

●手や指の“ムダな動き”が音となって表れる

タイピング音のうるささとして、ひとつの要素として挙げられるのが「動きのムダ」です。タイピングは指を動かして行うわけですが、うるさい人には動きにムダがある人が多いのです。

私は社会人として一番初めにトヨタの現場で仕事をさせていただきましたが、そこでは「日常的な動き」にとても敏感でした。そもそもトヨタに限らず製造業では『動作経済の原則』というものが当たり前のように浸透していました。

『動作経済の原則』というのは、工場の人たちが動作単位の視点で改善を検討する時に参考にしているものです。もともと作業研究の先駆者として著名なギルブレスさんという方が、ムリ・ムダ・ムラのない職場づくりのための理想的な動作を多くの視点から並べたもので、30項目以上の原則からなっています。

企業などに導入される際には4つの基本動作として抽出した『動作経済の4原則』がよく用いられます。

原則① 仕事をするときには両手を常に同じ業務に充てること
原則② 必要な基本動作の数を最小にすること
原則③ 個々の動作の距離を最短にすること
原則④ 動作を楽にすること

これが動作経済の4原則ですが、工場で仕事をするときにはこれらを守りながら動くことで、効率的に長時間仕事をすることが可能になります。
では、タイピングにあてはめてみるとどうでしょうか。

両手はしっかりとホームポジションの位置になっているか、ムダな動きはないか、動かす指の距離は適切か、キーを押す力に余計な力が掛かっていないか、姿勢に無理はないか――。こういった基本的な原則が守られていないことによって、キーが「タタン!」と大きな音を立てることに繋がってしまうものなのです。

●ムダな動きは身体に負担を掛けている

動作経済の4原則の4つ目は「動作を楽にする」でしたが、これは非常に重要な観点です。キータッチをする際の姿勢に無理があって負荷が掛かっていたりすると、慢性的な肩こりや腰痛などに発展してしまいます。
仮に少しの乱れだったとしても、毎日長時間PCに向かっていると疲労はどんどん蓄積してしまい、身体は悲鳴をあげてしまうのです。

私はトヨタの現場で仕事をさせていただきましたが、自動車の整備をする際に姿勢が少しでも乱れてしまうと、力が入らなかったり身体を痛めてしまうため、姿勢は非常に重要視されていました。先輩から指導されたり、研修などでもしっかりと教え込まれるのです。
しかし、IT業界に移ってみると、パソコンに向き合う姿勢は人それぞれ。誰も姿勢なんて教える人はおらず、腰痛や肩こりは当たり前で「まあ職業病みたいなもんだよね」と諦めている人もたくさんいたのは大きな驚きでした。

パソコンに向き合う姿勢や、キーボードへの手の置き方について、正しい形を知ることは非常に重要です。それを知らなければ、ムダの多い動きとなってしまい、タイピング音は大きくなりますし、身体に負担も掛かってしまいます。タイピング音が大きい人は「ムダの多い人」なんだと理解しなければなりません。

第2章 タイピング音がうるさい人は「仕事をやった気になっている」

●エンターキーを大きな音で叩いて結果に繋がるの?

タイピング音のうるさい人の中には、「自分に酔いしれている」タイプの人がいないでしょうか。特にエンターキーをパコーン!と叩く人を見ていると、叩いた後の余韻に浸っている印象を受けます。

しかし、エンターキーを押すときには大きな音なんて要りませんし、大きな動きも要りません。エンターキーが一定量だけ沈み込んで、入力信号がPCに発せられるだけで本来は良いはずです。

こういった、「エンターキー叩いている俺、輝いているぜ」みたいなタイプの人は、「仕事をやった気になっている」傾向があると思います。実際には大した結果は出していないのに、アクションや言動だけが大げさで、やっている感に酔っているだけなのです。

●頑張ることは汗を多くかくことではない

私がいたトヨタの現場では『頑張ることは汗を多くかくことではない』という言葉がありました。たくさん汗を流している人や、長時間作業をしている人を見ると「頑張っているなあ」と思ってしまいがちですが、そうではないのです。

いくら汗をたくさんかこうが、長時間仕事をしようが、結果をださなければ何の意味もありません。だって、社長がたくさん汗をかいて長時間働いても、会社をつぶしてしまったら社員はその会社で働くことすらできなくなります。

ですから、「仕事をやった気になる」というのは非常に危険な思考なのです。エンターキーの大きな音で快感を得るのではなく、できる限り最小の労力で結果を出し、それによって快感を得るようにしなければいけません。

第3章 タイピング音がうるさい人は「視野が狭い」

●周りに負担を与えていることに気が付いていない?

「タイピング音がうるさい」という話をすると「うちの会社にもいます」「同僚がまさに…」と多くの共感をいただきます。割りとタイピング音がうるさい人は世の中に数多くいるわけですが、ということは、ご本人は周りに負担を与えていることに気が付いていないわけですよね。

聞いてみると、近くでタイピング音がうるさい人がいると「我慢をしているけど、イライラします」とか「そっと席を離れます」と周囲の人が何らかの対応をしているケースがほとんどなのです。

これ、同じような話で「クチャラー」があります。食べ物を食べる時に「クチャクチャ」とだらしなく音を出してしまい、本人は気づいていないのですが周りが嫌な思いをするというパターンです。タイピング音のうるささは、ビジネス版のクチャラーともいえるのではないでしょうか。どうでしょうか、ものすごくだらしない印象がありますよね。

●これからの時代、「視野の狭さ」は命取りになる

「自分が周囲に不快な思いをさせているかどうか分かっていない」という視野の狭さは、これからの時代において致命的ともいえるでしょう。これからの時代は予測不能です。様々な分野で変化が起き、何が起きるか分からない時代です。

そんな時代に重要なのは、自分のことを客観的に知り、軸を持つこと。自分をメタ認知して強みや弱みを知ったうえで、世の中にうってでないといけません。そんな時代にもかかわらず、自分が「タイピング音がうるさい」ことすら知らないなんて、自分のことを知らなさすぎでしょう。自己分析以前の問題です。

あなたのタイピングがうるさいことで、周りは気をつかっていないでしょうか、周りに嫌な思いをさせていないでしょうか。まずは立ち止まって考えてみるべきです。その後で、自分の強みや弱みを分析していきましょう。まずはそこからです。

第4章 タイピング音がうるさい人は「ツールの選定をミスしている」

●そのキーボード、合っていないのかも?

タイピング音がうるさい人の中には、打ちかたはそれほど悪くないのに、キーボード自体の音が異様に大きいという場合もあります。安いキーボードなどの場合、大きくストロークしないと反応しなかったり、部品が安っぽいので音ばかりがムダに大きかったり。いずれにしてもツールの選定ミスといえるわけです。

「お金が無くて安いものしか使えない」と言う人もいるかも知れませんが、自分の身の回りにお金を掛けないというのは、非常によろしくない考え方です。仕事でパソコンを使い、キーボードに触れるのであれば、キーボードが自分に合ったものなのか、スムーズに入力ができるものなのか、身体への負担はないものなのかを考えて選択するべきです。「とりあえず文字が入力できれば何でもいい」というのは間違っています。

●“自分に合ったツールを選択する”のは仕事の基本

これはキーボードに限った話ではなく、仕事の基本として「仕事で使うツールは最適なものを選択するべき」という話です。美容師が安物のハサミで接客をすべきではないですし、プロゴルファーがクラブに無頓着なはずがありません。プロであれば自分が使うツールには徹底的にこだわるはずです。だって、そのツールによって仕事の結果が変わってきますから。

だから、仕事でパソコンを使う人であればキーボードにこだわるべきであり、大きな音を出してしまうということはムダが発生しているわけですから、キーボードが合っていない。変えるべきだ。という、いたってシンプルな話なのです。

第5章 タイピング音がうるさい人は「人に恵まれていない」

●その音を注意してくれる人はいないのか?

友達のタイピング音がうるさかった場合、あなたはどうしますか? その友達のためを思うと、「うるさいから気をつけたほういい」と忠告してあげないでしょうか。しかし、あまり関係性が深くない人だったら、スルーして距離を置くかもしれません。つまり、タイピング音がうるさいまま年を重ねている人というのは、言いたいことを言い合える友達が周囲にいないということなのです。

もしかすると、タイピング音がうるさいから友達も離れていってしまったのかもしれません。しかし、言いたいことを言い合えるような信頼関係があれば、離れる前に注意してくれたのではないでしょうか。先ほど例に挙げた「クチャラー」もそうです。その音を出すことも問題ですが、その音を出していることを注意してもらえないその人の人間関係にも問題があるのです。

●周囲との理想的なコミュニケーションとは

職場にしても友達関係にしても夫婦関係にしても、「言いたいことを言い合える」というのは非常に重要です。人の性格や価値観は様々ですから、合わないことや気になることもあるでしょう。でもそんな時、自分が感じたことや相手に求めることをしっかり言い合える関係というのはストレスが溜まらずに済みます。逆に、言いたいことを言えずに溜め込んでしまうのは、悶々として健康的ではないのです。

言いたいことを言い合える関係をどれだけ多く築けるかが大事なのですが、自分の立場が上司の場合には、部下に対してオープンマインドでさらけ出すことがカギになります。変にプライドばかり高くてさらけ出すことができないと、「あの人に何か言うとややこしい」と誰も注意してくれなくなってしまいます。そうなるともう、改善すべきところも改善されず、人が離れていくばかりになるのです。タイピング音がうるさいまま何年も経っている人は、自らの人間関係から考え直さなければならないかも知れません。

あとがき まだタイピングで消耗してるの?

さて、タイピング音がうるさい人の特徴について書いてきましたが、どれだけ当てはまっていたでしょうか。ここまで書いてきましたが、実はキーボードをタイピングする機会は減ってきているのをご存じでしょうか。そう、スマホの台頭です。いまや様々なアプリで仕事ができるようになってきており、スマホだけでほとんどの仕事を完結させている人も増えてきています。

ですから、タイピング音がうるさい人は、スマホで代替できるように移行していってもいいかも知れません。そうすることで、周囲からの評価を大逆転させることもできるかも知れないのです。

タイピングでムダな動きをしたり、仕事をやった気になっている場合ではありません。合っていないツールでタイピングをして、人に嫌われている場合ではありません。

スマホだけで仕事ができる時代はすぐそこに来ているのですから、タイピングで消耗せず、新しい波に乗っていくことも考えてみてはいかがでしょうか。

タイピング音がうるさい人が減りますように。
タイピング音でストレスを抱える人が減りますように。

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