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【ライブレポ】2022年33本目 ハルカトミユキ『ハルカトミユキ 10th Anniversary Live "十字路に立つ"』@渋谷PLEASURE PLEASURE 2022.11.19(土)


 こんばんは。シリアスファイターです。


 今回は久しぶりに地元を飛び出し、ハルカトミユキ結成10周年を記念した一夜限りのワンマンライブのレポートです。


 最初に2人のライブを見たのは、幕張メッセでのカウントダウンジャパンだったと記憶しています。


 芯があるのに、今にも儚く消えてしまいそうなシリアスな歌声の持ち主ハルカさんと、ピョンピョンとステージ上を跳ねながら軽快な鍵盤捌きを見せるミユキさんという、一見相反する2人が、恐ろしいほど自分自身と、現実の負の側面に真っ向から向き合った楽曲を、「2人でどこまで表現できるのか」という命題に基づいて、誠実に表現するその姿に、真面目で頭の硬い人間である私は胸を打たれていました。


 近年は2人での表現を模索し続けながら、ペースは決して早くなくとも、様々なタイプの曲を発表してきたハルカトミユキの2人が、とうとう10周年を迎え、それを記念しての一夜限りのワンマンライブ。


 と、いう日にびっくりたまたま東京に行く用事があり、しかも夜は空いているというビッグチャンスが訪れたため、迷わずチケットをポチり。


 最後に2人のライブを見たのは、4年前の渋谷でのバンド編成のワンマンライブ。


 久しぶりに東京で見るライブ、久しぶりに聞ける2人の生の音楽にワクワクしながら、会場へ向かいました。


 この日のライブ会場は300席程度の元映画館を活用したイベントホール。


 様々な年代(と言いつつ30〜50代くらいの人が多かったかな?)のファンでバッチリ埋め尽くされた、暖かみと絶妙な暗さを感じる、程よい規模のライブハウスといった会場の空気に緊張と期待を感じていると、定刻通り会場は暗転。


 ゆっくりと澄み渡るような広がりのあるSEに乗せて、青く輝く照明。


 サポートバンドメンバー3人に続き、白いドレスのような衣装に身を包んだミユキさん、対照的に青と黒でまとめたスレンダーな姿のハルカさんが静かに登場。



 ゆっくりフェードアウトするSE、静寂を切り裂くように響くミユキさん鍵盤の音色、一曲目は「ドライアイス」

 僕らはいつでも少しの間違いで
 蝕まれていく日々を
 どうすることもできずにいた
ドライアイス
 口移しした溜息の味
 僕らの夜に出口はなかった
ドライアイス



 凛としながらも、緊張感が如実に伝わってくるハルカさんの歌とともに、じっくりとうねるように凍てつくバンドのグルーヴ、冷たいのにどこか暖かいような気もする…。

 間違いなくハルカトミユキのライブに来たことを実感する幕開けです。


 シリアスな始まりから、これまたシリアスでグロテスクな「マネキン」



 そんな曲でも、ミユキさんが客席の手拍子を先導してピョンピョンと飛び跳ねながら楽しそうな様は健在で、不思議と嘘つかずに、剥き出しの自分で楽しんでいいという、曲世界観と不思議とリンクしてしまう、ハルカトミユキのライブにおける個人的な魅力が早くも炸裂…!



 3曲目の「ヨーグルトホリック」、ラスサビ辺りから、ハルカさんの緊張も取れてきて、ここ数年で表現力を増しに増した歌声は広がりを増し、バンドサウンドとバチッとハマって、熱がグッと高まるのを感じました。



「デビューアルバムの「シアノタイプ」は、「青写真」という意味。
 どんな青写真を描いてたか、その時見てた姿から、今の姿はどうなってるか、みなさん自身の姿と重ね合わせながら聞いてください。」



 というMCからの「シアノタイプ」

 ああ 少しだけ未来のこと期待してしまうから
 ああ できるだけ気づかれないように笑った
シアノタイプ



 10年前の自分は、今それなりに生きることだけ考えていれば、きっと未来に繋がるだろうと思って、あまり未来の自分を想像しようとしていなかったような気がします。



 期待せずにはいられないけど、期待しちゃいけないような気もする…という絶妙な心境を歌ったこの曲は、当時のフワフワした自分の心境と重なって、今の自分はその時よりしっかり地に足ついてるのかな…と改めて自戒せずにはいられませんでした。


 ここから時計の針は一気に進み、ポップな曲調の新曲「恋に気づくのは」、昨年出たアルバムの一曲目「RAINY」と続きます。


 どちらかといえば陰鬱な雰囲気の曲が多い印象のあった初期から、それでも前を向かないとやっていけないだろ…!というある意味ヤケクソな、それでも確かな強い意志を感じさせる楽曲が増えた近年。


 決して根本が変わったわけではなく、以前にも増して、生きていく決意に溢れた曲に生で触れることで、この10年の確かな歩みを感じさせます。


 ここでバンドメンバーは一旦履け、2人編成の時間に。



「10年やってきて、曲を作ってて辛かったこととかもあったけど、今日曲をやる中で、昇華?されたような気がした。」


 と、ここで初めて話を振られたミユキさんは、感慨深そうに語ります。


「嫌いな曲とかはないけど、作ってて辛いことがあった時もあった。
 時を経て、ライブをやったり、皆さんが聴いてくれた中で、曲が育っていったこともあると思う。
 そんな想いを重ねながら聞いてほしい。」


 ハルカさんのそんなMCから、ファンクラブで投票を募った中から2人が選んだという「宝物」が演奏されたのですが、これが心底良すぎました。


 緊張感たっぷりだったハルカさんの歌は、これでもかと情緒をたっぷりと込めて豊かに響き、それに呼応するようにドラマチックでエモーショナルなミユキさんの鍵盤が重なり合う、まさしく宝物のような6分間。


 一時期、積極的に2人編成でのライブも行っていたハルカトミユキの2人が、確かに培ってきた表現、この2人だからこそ、この2人だけでも成立する音楽が、確かに私の心を動かしていました…!


 ここでバンドメンバーがまた戻り、ニューシングルから新曲の「アイリス」→「その日がきたら」とライブは続きます。


 後者は初期の頃からある曲ですが、あまりライブで聞く機会がなかったような気がしたので、

 ねえ、君は知ってる?
その日がきたら

 のゾクっとする歌い出しで思わずハッとしてしまいました。


 その日がきたらさようなら、もう「奇跡を祈ることはもうしない」…。


 2ndフルアルバムまで時計の針は進み、降り注ぐ祈りのように、どこまでも現実と向き合う決意を感じさせる、雄大だけど決して明るくはないアンサンブルに会場が包まれます。


 まだまだシリアスなロックモードは続きます。

「プラスチック・メトロ」「近眼のゾンビ」「ニュートンの林檎」、最高にヒリヒリした空気感が会場を支配します。


「近眼のゾンビ」は、バンド編成のワンマンでぜひ聞きたいと思っていたので歓喜…!



 イントロのヘヴィーで重厚なベースフレーズを筆頭に、曲が進むにつれ広がりを見せるバンドグルーヴと正反対に、一向に出口の見えない心情と現状がループする歌詞を、爆発寸前の心境で熱く歌い上げるハルカさんの歌唱…。


 ここから出たいのに、出たくないような…高揚感がたまりません…!


 一瞬の静寂から、イントロのハルカさんによるダウンピッキングが炸裂する「ニュートンの林檎」は、この曲でハルカトミユキを知った私にとっては、歴史の始まりを大いに感じる一曲。

 口を揃えて言うのでしょう 上から見下ろすあの人達は
 口を揃えて言うのでしょう ただ重力に負けただけだと
ニュートンの林檎


 やるせなくて、腹立たしくて、お前にこの気持ちが分かるかと問いただすような気持ちをぶつけるような曲は、閉塞感を強く感じつつも、そんな気持ちをどこかで抱えたまま、前を向いて進み続けて、今日またこの曲を、この場で聞きながら拳を上げることができてよかった…!


 ステージを真っ赤に染め上げる照明も素晴らしくかっこよかったです。



 サポートメンバーに話を振りながら、各メンバーが緊張しているかについて、とても朗らかな空気のMCを挟みつつ、
 各メンバー紹介から一転してとってもポップな「インスタントラブ」では、歌詞に登場する「3分間」のフレーズに合わせて3本指を立てたり、合いの手の手拍子を決めたりと、一転して10周年をお祝いする多幸感に溢れる会場。


 ここまで終始凛としていたハルカさんも、時折笑顔を見せながら歌い、とても楽しそう…!

 そのまま続く、アニメタイアップにもなったシングル「17才」でも、ポップに弾けるサウンドが気持ちいい!


 歌詞はもちろん、底抜けに明るいものではなく、悲しみや不安を振り払って何とか前に進もうとする人にそっと寄り添うものなのですが、今思うと、そういうヤケクソでも前に進まなきゃ…!という今の2人のモードに繋がっていく、第一歩のような曲だったのかもしれません。


 そうやって日々を懸命に生きていても、夜には狂いそうで、狂えない自分が顔を出します。


 この流れで聞く「Vanilla」こそ、私の青春そのものの風景でした。


 リアルタイムで聞けていた訳ではありませんが、実家でやり場のない気持ちを抱えていた私そのものだし、聞くたびにあの頃の気持ちが蘇って、胸が締め付けられそうになります…。


 でも最後には、

 許せない 許せない
 許してあげたい あの頃の僕たちを
Vanilla


 あの頃の自分へ、それでも何とか前向いて生きてきたから今日があるんだよ、ありがとうって祈りながら、耳を、心を傾けました。


 ここからまだまだ人生は続きます。


 ゆったりとしたミユキさんのピアノに合わせて、一文一文にありったけの思いを込めて歌われる「LIFE2」。


 どんな状態でも、前を向いて、生きていれば「それでいい」と、そっと背中を押すように、歌が、ピアノが、バンドの音が、一音一音じっくりと染み渡ります。


 最後のMCではホームページで企画されていた、様々な業種の方(一般の方も含む)に10年分の想いを文章にしたものを読んだハルカさんが、


「みんな、この生きてきた10年を肯定したいんだと思いました。
 …久しぶりにこの曲を歌います。」

 との想いを語ったMCから、まさか聞けると思っていなかった「肯定する」へ…!

 今、僕は約束をしよう
 君の全てを受け入れよう
 ひとりで生きる勇気 君に。
肯定する

 ハルカトミユキの2人が、その自分たちの歩みも含めて、私のこれまでの人生も全て肯定しにかかる未来なんて、全く想像していませんでしたが、今目の前に広がる、2人が音楽で躍動する光景を見ることができて、全くもって捨てた人生じゃないと、強く背中を押されてしまいました…!


 ラストは定番の「世界」。


 アウトロのコーラス、会場中の歌声が響くことはまだ難しい状況ですがハルカさんが、


「いつもよりも小さい声で歌ってください!」


 と言うものですから、マスク越しにとびきり感謝を込めて口ずさませていただきました…!


 ここまで19曲、あっという間に駆け抜け一旦終了。


 その後、間も無くしてアンコールへ。


 この後のMCが本当に印象的でした。


ミユキさん
「(ハルカトミユキは)仲悪いとか言われてた時期もあって、実際そう感じるようなこともあった(会場とハルカさん爆笑)けど、今日まで信頼し合ってやってこれてよかった!」

ハルカさん
「普段2人であまり話さないし、特別仲がいいわけでもないし、私生活は何してるかほとんど知らない。
 なんならルーツの音楽も違うのに、好きな音、嫌いな音は似ている。
 ニューシングルのミックスも、最初に完成したものをどう直したいかという意見がピッタリだった、これが10年やれてきた秘訣ですよ!
 ミユキじゃなかったら殴り合いになってた!笑」


 バラバラな2人がバラバラのまま、音楽で確かに共鳴し合って鳴らされる音楽だからこそ、「1人」の人間の心に深く届く表現に繋がってるし、それこそがこの2人の音楽の魅力だと思います。


 ラストは新曲、「十字路に立つ」。


 まだまだ続く2人の旅路。

 最後、また会いましょうって言ってましたよね?

 北海道でも待ってますよ!!!!!!!!!!

セットリスト
1. ドライアイス
2. マネキン
3. ヨーグルトホリック
4. シアノタイプ
5. 恋に気づくのは
6. RAINY
7. 宝物
8. アイリス
9. その日がきたら
10. 奇跡を祈ることはもうしない
11. プラスチック・メトロ
12. 近眼のゾンビ
13. ニュートンの林檎
14. インスタントラブ
15. 17才
16. Vanilla
17. LIFE2
18. 肯定する
19. 世界

アンコール
1. 十字路に立つ

 今回は以上です。

 最後まで読んでくださったそこのあなた、本当にありがとうございました。

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