記録 星野源さんのオールナイトニッポンで僕原案のラジオドラマが流れた話「放送編」

※余りにも書きたいことが多すぎるので、身辺雑記の「近況編」、ドラマ内容の「放送編」と分けてお送りします。

近況編→https://note.com/masaomi_hoshida/n/na0fde21e9ac5

時を戻そう。(ぺこぱ風)

『星野源のオールナイトニッポン』で『星野ブロードウェイ』というコーナーが始まったのはコロナ禍に入った四月の頃だった。リスナーからラジオドラマのストーリーを募集し、ラジオのスタッフ陣がそれをもとに脚本を書き、放送前の練習無しでぶっつけ本番で上演するというものだ。

ついに来たと思った。僕は高校時代に放送部でラジオドラマを作っていた。自分の編集した作品が放送部のNコン全国大会で優秀賞を貰ったこともあるので思い入れはひとしおだ。自分の脚本をあの源さん、あのスタッフたちが演じてくれるかもしれないのである。書かない訳がなかった。

どうせ書くなら高校時代でも大学のサークルでも出せないような脚本をやりたい。「源さんの曲をベースにした脚本をやろう!」と決めるまでに時間はかからなかった。以前から「『時よ』のMVの車掌は『ある車掌』の車掌なのではないか説」が自分の頭の中にあり、それをベースに物語を組むことにした。『Crazy Crazy』の歌詞にクレイジーキャッツのメンバーの名前が出てきたり『Continues』の歌詞で細野晴臣さん要素が顔を出すような要領で、セリフの所々に源さんの曲の歌詞を入れる「脚本遊び」を仕掛けた。読み返してみて自分史上最も好き放題した脚本だと思った。期待を込めて送信ボタンを押した。

しかし送ってから数か月、全く読まれる気配は無かった。やはり全国ネットのラジオでの採用は狭き門なのだ。流れるラジオドラマは「花より男子」っぽいものや「警部補・ノガ畑任三郎」などのパロディものばかり。もちろん面白がって聴いてはいたが、こういうものの方が深夜ラジオではウケるのかと自分のドラマに対する諦めの念は週ごとに強まり、いつしか送ったことすら忘れてしまった。




星野源のオールナイトニッポン〜ソロ10周年SP 同時生配信〜 ディレクターズ・カット ↓

https://www.youtube.com/watch?v=bCyRWuVRBSQ

忘れてしまっていたからこそ、「チェリーネーム しげおかしげおさん」と呼ばれた時の心臓の跳ねは尋常ではなかった。「うわあああああっ!!!」と深夜にもかかわらず叫んでしまった。星野源ソロ活動10周年記念特番での採用である。しかもYouTubeライブでの同時生配信で動画付き。こんな光栄なことがあるだろうか。恐れ多いったらありゃあしない。今回自分の原案をもとに脚本にしてくれたのは放送作家の寺ちゃんこと寺坂直毅さん。こんな光栄なことがあるだろうか。恐れ多いったらありゃあしない。(2回目)

源さん「それでは東京都にお住いのしげおかしげおさんが作ってくれた原案をもとに、作家の寺ちゃんが脚本を書きました。星野ブロードウェイ第10回公演『A Conductor』」

開演のブザーが鳴り響く。うわぁまじでやるのかぁ…。両手を口元に当てながら息を漏らした。

ナレーション(CV.宮森さん)「その男は、いつものように仕事を終え、相鉄線に乗って湘南台駅近辺にある自宅に帰っていた。そしていつものように車内で眠っていた。」

よ、読まれてる…読まれてるよ…。湘南台駅は相鉄いずみ野線の終着駅で『時よ』のMVの聖地だ。この駅から物語は始まる。

乗客(CV.源さん)「ン、ンン…?…あっ、ああっ!!あ~しまったぁ、降り損ねたぁまじかぁ~やらかしたぁ……。ん?待てよ?いやおかしい、湘南台は終着駅だったはず。さっきまでと同じ方向に走り始めてるな…」

脚本以上の演技とはこのことを言う(確信)

やはり源さんはプロなのだ。書いてた時に想像していたよりもずっといい寝過ごしっぷりだ。電車は終着駅のはずの湘南台を出発し、暗闇の中を進んでいく。

車掌(CV.寺ちゃん)「お客様、ご乗車ありがとうございます。」
乗客「うわあ!びっくりしたぁ!」
車掌「私、この列車の車掌でございます。お隣失礼いたします」
乗客「ああ、車掌さん。…いやいやいや、車掌さんなら列車の後ろとかでアナウンスしてなきゃ、こんな座席に座っちゃダメでしょう。仕事中でしょ?」
車掌「はい、仕事中です。窓の外を見るだけのお仕事なんです。」

車掌登場だ。『ある車掌』に出てくるイメージそのまま「窓の外を見ているだけの車掌」だ。柔らかい声の中ににじみ出る怪しさがファンタジーらしさを引き立てる。「これはひょっとしてあの世行きの電車なのか?」と尋ねる乗客。「どこに着くのか分からないのは僕も同じだ」と悠揚たる様子で答える車掌。唐突に車掌は「死んだ後の世界は怖いですか?」と聞く。「よくわからない」と答える乗客。

乗客「働き始めてから、電車を待ってる時よく考えるんです。仕事でも成果出せなくて毎日辛い日々で、ここから一歩進むだけで簡単に死ねるんだよなって。こんな日常にもさよならできるんだって。いやでもやっぱり死ぬのは怖いし、出来れば未来は見たいし。」

毎日辛くて”死”が頭をよぎる、ずいぶん前に書いたのに、今の自分にも通じるものを感じるセリフだ。ぽつぽつと語る源さんの演技が自分の心と重なり合う。

ちなみにここまでで源さんの曲の歌詞は4曲ほど登場している。気づいてもらえただろうか。

車掌「お客様、窓の外をご覧ください。」

いよいよあのシーンだ、と思ったが、BGMが何か違う。こんな禍々しい感じのシーンではなかったような…

乗客「何だこの景色!?漆黒の空、荒れた山だらけ、そして火の海、うわー怖いなぁ。」
車掌「間もなく到着します。地獄~地獄~」
乗客・僕「「地獄!?!?」」

あれ?こんなシーン入れてないぞ…?

はは~んなるほど、寺ちゃんだな?BGMは『地獄でなぜ悪い』に切り替わっていた。ふとYouTubeライブの画面の中に人が増えていることに気が付いた。

二人「キェェェ~~ッキェッキェッキェッキェッキェッwwようこそ地獄へェ!!」
乗客「醜い、とても醜い…!」
ノガゾンビ(CV.野上君(AD→D))「俺は地獄の門番、ノガゾンビだぁ~」
人喰いクマ(CV.くまさん(旧AD))「そして俺は地獄で暮らす人喰いグマだ、ガォォー!!」

なwんwかw出wてwきwた

間違いなくドラマの空気が変わった。先ほどまでの”死”うんぬんは、もはや頭になかった。

乗客「あれ?この人喰いグマどこかで見た気が…。昔一緒に働いていたような…。確かこのクマ最初出会ったとき体重が117キロで、ダイエットして92キロになったんだよなぁ…。ねえ人喰いグマさん、いま何キロなんですか?」
人喰いグマ「今の体重はぁ!!122キロだぁぁ!!!」
乗客「めちゃくちゃリバウンドしてるじゃないか!!!」

まじかよ嘘だろくまさんwww健康に生きててくれよくまさんwww

ノガゾンビ「そんなことはどうでもいいんだ!お前を地獄の住人にしてやろうか?」
乗客「やだよwこんなとこ住みたくないよ!!」

野上君目がイってるよww役への入り込みが完璧すぎないか?動画がつくとやっぱりすごいんだなあ…。

ノガゾンビ「そうだなあ、お前がこの人喰いグマと勝負をして勝ったらここから出してやろう。」
乗客「え?勝負ってなんすか~」
ノガゾンビ「地獄ではおなじみのゲーム『チクビンゴ』だぁ。(中略) 見事一発で当てたら地獄から出してやろう。」
乗客「そんなことで地獄から出れるんですかww。ていうか今は三密っていうし、乳首を触りあうのはダメなんじゃないかな」
人喰いグマ「それならこういうのはどうだ?『ソーシャルチクビンゴ』!」
乗客「ソwソwソーシャルチクビンゴ??(笑)」
人喰いグマ「割り箸を突き刺して乳首の場所を当てるんだ!」

バwカwじゃwなwいwのw(褒)

一応言っておくが「ソーシャルチクビンゴ」なんて原作にはない。そんなはしたない言葉、この純粋な僕が書く訳がない。寺ちゃんマジGood Job。チクビンゴにまで三密を意識する抜かりの無さ、放送人として流石である。

人喰いグマ「それじゃあ勝負だ!一発で当てるんだぞ?行くぞ!」
ノガゾンビ(割り箸を割る)
乗客「ほんとにやるのねw (中略) いくよ?せーのっ、チクビンゴっ」
人喰いグマ「チクビンゴォォォォォォォォォッッ!!!!!」

叫ぶクマ。流れるファンファーレのSE。乗客は見事人喰いグマを撃退した!なんか、すごいものを見たなあ…(笑)

約束通り地獄から脱出できた乗客は再び列車の中へ。

窓の外を見ると先ほどとは打って変わって一面の星空。死んだ人は夜空にきらめく星になるとよく言う。『ある車掌』の「燃やした日々 川になるよ」の部分や、『ここにいないあなたへ』の「潮の路が燃えている」の部分がそんなイメージを感じさせるので、その二曲を思い起こさせるような比喩を散りばめてみた。

車掌「間もなく到着します。天国~天国~」
乗客・僕「「天国!?」」

また知らない場面がきた。

『SUN』が流れ始める。

乗客「小川が流れ、鳥が唄っている…!」

『SUN』のAメロの歌詞。これは寺ちゃんが入れてくれたものだ。

乗客「わぁっ!誰だ!?」
大天使ヒカエル(CV.石井D)「ようこそ、天国へ。ここは光り輝くヒカルの国。私は天国の案内人。大天使ヒカエル。」

ひかるちゃんキタァァァァァ!!!星野源のオールナイトニッポン前ディレクターひかるちゃんこと石井さんがっ、この「星野ブロードウェイ」発起人にして全然役者をやらなかった石井Dが遂に!!てかめっちゃ素敵な声!

ヒカエル「この世界を守る神様がご挨拶をしたいと言っています。ご案内しましょう。」
乗客「神様?神様に会えるんですか?」

何て落ち着く声なんだろうかヒカエル…流石大天使。

それにしても神様がこの後登場とは…あと出てないの誰だ?

白亜の城に到着し、神様が登場したとナレーションが入った。キラキラと神々しいBGMが掛かる。

乗客「あなたが、神様!?」
神(CV.?)「Welcome to heaven. I am God.」

源さん・僕「「誰…!?(笑)」」

柔らかな女性の声だった。英語の発音がSiriレベルでめちゃくちゃお上手だ。さすがは神。この世界を司るだけあってグローバルな方だ。

神「生きているとどんなことも胸が裂けるほど苦しいんです。夜が来て辛くなることだってある。でも生きていると声を上げて飛び上がるほどに嬉しい日々だって来るかもしれないの。Do your best.」

「あ~『フィルム』の歌詞だ~」としんみりさせてからの超発音いいDo your best.は笑ってしまうて…脚本のリズム感が素晴らしすぎるなぁ…

神「Take care of yourself and good luck.」
ヒカエル「それじゃあお元気で。幸運を祈る、と言っています。」
乗客「大天使は通訳なんですか?www」
ヒカエル「(略) またどこかで、笑顔で会いましょう。お元気で。」

なんか「オー!マイキー」のボブ先生&ボブママ感がすごいなこの天国コンビ(笑)

ヒカエルのセリフ「笑顔で会いましょう」は『Hello Song』のラストだ。

再び乗客は列車に戻り、車掌と談笑する。ふと乗客は車窓の下を見る。

ナレーション「下を見れば地面のはず。しかしそこには星空に負けない位のきらめきがあった。今を生きる人たちの灯りが集まって、キラキラと光っていた。」
乗客「(略)星空だけじゃないんだなぁ。光が躍ってる。」

「踊ることは生きること」源さんの曲によく込められているメッセージだ。かつて源さんはコンサート後のインタビューで、「いろんな人がばらばらに踊ってくれていて、その光景に凄く感動した」といったことを言っていた。源さんが見た、会場に集まった何万人もの人がそれぞれ思い思いに踊っている光景。それは空の星から見た地上での人々の営みと通じるものがあるのではないか。そう思ってこのシーンを挿し込んだ。

こうして、地獄と天国、空の上を巡った列車は元の湘南台駅へ帰っていく。

乗客「あぁ~戻ってきた~」
車掌「(略)じゃあ時間なので私はこれで。さようなら。」
ナレーション「車掌は敬礼をして、車内へ戻っていった。」

ここのイメージは完全に『時よ』のMVのラストである。列車の扉がすべて開き、もうすぐ”この人”はこの列車に乗って去ってしまうのだという寂しさが漂うあのカット。

車掌は車両に乗り込み、ドアは閉まり、列車は発車していった。流れだすED『ある車掌』。「さようなら」と呟く乗客。

駅員(CV.銀シャリ橋本さん)「あれ?お客さん?ひょっとしてずっと駅にいた?」
乗客「え?あの、いやー、」
駅員「いやホンマすまんな、一晩中ホームに閉じ込められてたんちゃう??」

まってまってまってwww橋本さん登場www湘南台駅なのに関西弁の駅員さんwww

乗客「いやさっきまで電車乗ってたんで」
駅員「いやいや自分何言ってんの?昨日の終電はもう四時間前に回送されたで?」
乗客「え!?じゃあ今の時間って」
駅員「今4時や。今始発の準備してんねん。」
乗客「嘘だろ…」


車掌「またいつでも、お待ちしていますよ。」


流れる『ある車掌』にしみじみと心を預けながら、面白かったなあと振り返る。原作の数百倍面白い仕上がりになっていた。オチの橋本駅員登場も完璧である。寺ちゃんの脚本力、すごかった。しかも予想外のゲストが次々登場し、まさに10周年記念の星野ブロードウェイにピッタリな内容であった。

ラストのタイトルコールが終わると、画面の前で自然と拍手をしていた。スタジオ中の人たちも、もちろん源さんも満面の笑顔で、泣きそうになってしまった。嬉しすぎる。ひとつ大きなことを終えたあとの満足感が画面中から溢れ出しており、この空間が出来るまでに一手貢献できたのだと思うと、言葉にならない位に嬉しい。

源さん「神様は…これは誰だったんですか?」

そうだった、まだ一つ謎が残っている。あの英語が堪能な神様は一体だれなのか。源さんですら予想がつかないシークレットゲストのようだ。


橋本さん「神様はですね………」


答えを聞いた瞬間「ええええええええええうわああああああああああやべええええええ!!!!!!!!!!!!!!」となった。画面の中の源さんも両手を叩いて仰け反っている。その位のスペシャルなシークレットゲストだった。これについてはこのnoteでは伏せておく。是非YouTubeのアーカイブを視聴して、僕の推しのチャンネルの視聴数に貢献してほしい。


「星野源のオールナイトニッポン〜ソロ10周年SP 同時生配信〜 ディレクターズ・カット」↓

https://www.youtube.com/watch?v=bCyRWuVRBSQ





いやあ…

とてつもない事態になってしまったよ……

https://twitter.com/hoshida3_121/status/1275493157023563776?s=20

今(2020年7月5日現在)見て見たら今回の星野ブロードウェイについてのツイートに1500弱のいいねを貰えていて驚くばかり。よく聞くラジオネームの人もいいねをしてくださって、コメントも「素敵でした!」「よかったです!」みたいな賞賛コメントばかりで口角が上がりっぱなしです。

とてつもない事態になってしまったよ……



いろんな人の力を借りてゆこう 最後の時までブランコは揺れるだろう 押す人がいればね 「ブランコ(House Ver.)」/星野源

『ブランコ(House Ver.)』を流しながら、制作途中になっていたラジオドラマの脚本のファイルをクリックした。大学の課題に追われ、全く手がつかないまま創作意欲が萎えてしまっていたが、今再び欲の炎がちらつきだしている。

”押す人”なんているのだろうか、とずっと思っていた。

それが源さんのオールナイトニッポンが拾い上げてくれて、流してくれて、たくさんの好意に揉まれて、”押す人”は確かにいるんだなと実感できた。

いつかこの「1500いいね」をしてくれた人たちが、いやそれ以上の人たちがもう一度振り返るような作品を世に出したい。

一度押してもらえたのだから、僕は最後の時まで揺れ続けるまでである。

一度いいねをしてくれた、君がいるからね。

決めたあなたの力を借りてゆこう 最後の時までブランコは揺れるだろう 押す人がいる 手を繋ぐなら命が消えてくまで 最後の時までブランコは揺れるだろう 君がいるからね 君がいるからね 「ブランコ(House Ver.)」/星野源


Twitter:https://twitter.com/hoshida3_121

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