Cult3.time
pain roomに入ると、まずは前室が現れる。イスひとつ、机ひとつ。明かりは満遍なく照射されるblue。向こう側の扉から先が本室となるが、部屋は処置の段階に合わせていくつも用意されている。間取りは分からない。
しばらくすると、その向こう側からQと、取り巻きの女性官frogが3人入室した。Qは立ったまま、私の方へグッと寄る。部屋の色調が影響したか、Qの顔はいつもより見えづらい。そこで滔々と話されたことは、彼女が常々言う『時間の圧縮』に関する復習と補強だった。つまり、人間は積もった過去を未だに苦しみ、過ぎ去った時間に縛られることで自身の可能性を狭めている点、そしてまだ来ぬ未来の分かれ道を考えては枝葉を伸ばし、許可もなくパラレルの自分を作り出して思考迷路を抜け出せない点を是正し、刻々と打たれる今現在、その中央に時間を集めて圧縮することが必要だとする言説だ。「資格の隔離」(説8章b3〜e1)において、前者は〈雨を返す〉、後者は〈予報を引き戻す〉と解説されているが、それに加え、この部屋で初めてQから聞いたことは、時間を4分の1ずつ織り込んでいく、ということだ。それは心身共に条件を揃え、pain roomへ導かれた者にしか与えられない権利であること、しかしながら万人が望む理想であり、Qとしては、これをいかに広く体得させていくか、処置の汎用化に悩んでいることも明かされた。また、体得の過程、本室で行われるprocessの全てにおいては、常に夢幻と無限を綯い交ぜにすることに集中し、さすれば、圧縮が進んでいくという。
これから始まる72時間が生半可なものでないことは当然だが、それにも増して圧倒的な昂りが身を包んでいる。Qは、初めの処置となるphantom pain担当のfrogを1人残し、「時間の圧縮とは、橋掛かりの滅却、0ノ松の涌現なり」と締めくくって部屋を後にした。その言葉の意味が、これから身体中を駆け巡り、新たなる自分を形成することは間違いない。Qとともに、恵みの放射たらんことを。
今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、