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Cult4.wife

 そうですねぇ、ちょうど1年ぐらい前だったと思います。隣町に住む高校の同級生の勧めでお会いしたんです。その同級生っていうのは、ご主人から日常的にモラハラを受けていて、いつも浮かない顔をしてたんですが、急にスッキリしたような表情になった時期があって。どうしたの?って聞いたら、ある人に出会ったおかげだから、私にも会ってみないかって。私も家庭の事、特に夫の事ではずっと悩んできたので。

 思ったよりもずっと若い方でした。その、なんていうか、同級生の言い方だとセラピーの重鎮みたいな言い方だったので、もっとこう、歳を重ねて、化粧厚塗りで、発色の良い服と宝飾で着飾ったみたいな、あと身体も大きくてみたいな、そんな風に思ってたんですが、真逆でした。聞けばまだ30歳にもなっていない、ボーイッシュな髪型の美人さん。白いブラウスを着たお付きの女性、3人いたと思いますけど、彼女達は立ったまま、誰とも視線を合わせませんでした。名前は「救野征子(すくいのせいこ)」。本名か知らないけれど。『救い』だから、キュウちゃんて呼ばれてます、って。透き通った、でもハッキリと耳に残る声でした。名刺ももらいましたよ。今でも持っています。はい、コレ。『ウーマンライツ研究所 代表』って肩書き。いかにも、って感じでしょ。そりゃ疑いましたよ。半信半疑どころじゃない。でも同級生の顔もあるし、まぁ話だけは聞くかって思ったんです。そしたら15分後には泣いてましたよ(笑)。自分より若いのに、包容力っていうんでしょうか。これまで自分がこんなに苦しかったんだっていうことと、夫に対する負の感情がデトックスされるような希望が溢れてきてね。キュウちゃん、冷たくて気持ちのいい手で、私の荒れた手をさすってくれたの。

 あらいざらい話したわ。2時間くらいだったかな。最後に念押しで聞かれました。「息子さん、娘さん、そして貴方。3人の生活水準と未来が保証されるのであれば、ご主人はいなくても平気?」って。2つ返事で答えられました。色々考え込んでたけど、私の中ではとっくに終わってたんだって、気付かされたわ。
 後悔?もちろんしていません。息子と娘はまだ小さくて、最初の頃は主人がいなくて泣いてましたけど、1年も経つといないことが普通になったわ。たまに訊かれるけど、私だって、おおよそのことしか説明できないんです。ホントのところの状況、核心的な部分はわからない。近々説明があるみたいだけど。細かいことは守秘義務があるから、お話しできないのよ。まぁ、あなた、イイ男だから、お金と、ちょっとしたお付き合い次第では考えるわ。ウソよ、ウソ。「清く正しく生きなさい」ってキュウちゃんに言われてるし。
 あなたのことは伝えておくわ。『戦略的プロパガンダ』とかってやつに見合う人、探してるみたいだし。それじゃあ、また。あなたにも、恵みの放射あらんことを。

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、