読書ノート『民藝四十年』
読書ノート『民藝四十年』著:柳 宗悦 岩波文庫
こんな人におすすめ
お茶碗って味があるって思ったことないですか。
美しさと醜さの違いって言葉で説明できますか。
美の考えを持ちたいって考えたことありませんか。
「使いよく便宜なもの、使ってみて頼りになる真実なもの、共に暮らしてみて落ち着くもの、使えば使うほど親しさの出るもの、それが民藝品の有つ徳性です」(P161.4-5)より
~感想~
この本は章ごとに扱っているテーマがまるで違っている。なので、全体的な本の内容に対して感想を書く、というのは僕には難しい。書こうとすると細かく、長くなってしまう。
でも、この本を通読して、はっきりしたことがある。それは、「民藝」という単語を作った柳宗悦(やなぎ むねよし)の人物像だ。
この人は1889年に生まれ、1961に没している。戦中、戦後を生きた人で、「民藝運動の父」と呼ばれている。
素直に美しさ、醜さを感じる感性を素直な心のまま持ち続け、失われてゆく美をどうにかできないかと動き続けた人、というのが僕の印象だ。
柳宗悦の目を通して、西洋と東洋の美意識の違い、民藝品の美しさ、失われてゆく美とは何か、それらの思いを感じとることができる。
要所、要所で仏教の思想を用いて美の概念が語られている。
僕は、芸術、民藝、工藝。仏教には詳しくないので、読むのに苦労するところがあるが、読みにくさ以上に引き込まれるものがある。
一番学びがあったのは、民藝の美とは美しいものをつくろうとして、得られる美ではなく、日々の日用に耐えられる品、何十回、何千回と同じ作業を繰り返し、同じものを作る、そこにある美が民藝にある、と言っていることだ。
よくわからないが、文を読んでいると説得力がある。
ぜひ、「民藝の趣旨」という章を読んでほしい。
補足
民藝運動とはー1926年に 柳宗悦らによって提唱された生活文化運動。日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱えた。生活に根ざした民藝には、「健全な美」が宿っているとし、新しい美の価値観を提唱した。(民藝協会HPより要約)
HP: https://www.nihon-mingeikyoukai.jp/about/